第十五話 人形ちゃんの思い

私は西宮拓斗が好きだ。


それが、友達としてか異性として好きなのかと問われたら、きっと私は両方と答えるだろう。


私がいつ彼のことを好きになったのか、正確なことは覚えていない。でも、この一か月ほぼ毎日喋っていたら、いつしか好きになっていった。


彼は、私の外見をあまり見なかった。

過去、私と仲良くしようとした人は、私の財力や私とのつながりや容姿を見て私に関わってきた。

でも、彼は違った。

確かに多少は容姿に惹かれたところもあるのだろうが、基本は私の心を見てくれた。誰にも見向きもされなかった内面を一番気にしてくれた。

それが、ただただうれしかった。


最初は変な人だと思った。

同じクラスで、全く喋らない少年。

初めて喋ったのはゲームセンターで出会ったときが最初。

今思い返すとかなりめちゃくちゃなことを言っていたと思う。

全く絡みのない人にゲームセンターを案内してだなんて。

でも、今はその発言に感謝もしているし恨んでもいる。


あの日から、私は彼のことが少し気になってしまった。

彼のことを知りたいと思ってしまった。

その思いは日に日に強くなっていった。

そして、この人に嫌われたらという恐怖もどんどん心の中で膨らんでいった。


…これをなんていうんだろう。依存?恋心?多分そんな感じの言葉にまとめることができると思う。

とにかく、私は彼に嫌われたくなかった。毎日会って、私のことを嫌ってないか確認したかった。土日の二日間会わないだけでも、気が狂いそうになった。

なんでこうなったかは分かってる。


彼が私にとって初めてできた大切な人だからだ。


だから、私は彼に依存しているんだと思う。

両親にも愛されず、自分の生まれた立場と容姿によって誰からも疎まれ利用される存在だった私が求めた、私を大切にしてくれる人。


でも、だからこそ、あの人の言葉が頭から離れない。

あの人が姉と慕う人物に言われたことが。


「あの子は、いまだに過去に囚われているところが少しあるんだよね、だから君みたいな友人ができたことがほんとにありがたいのさ。たぶん君が彼を救ってくれると勝手に期待してるんだ私は」


この言葉が、頭から離れない。


彼は何を背負ってるんだろう。

彼はなんで、今まで誰ともかかわりがなかったんだろう。

その知らないところに私の嫌われる要因があったらどうしようと、ひたすら不安になる。

もし、その囚われていることを解消したら私はいらない存在になるのかもしれない。そんなことを考えると夜も眠れなくなることがあった。


…ねぇ、こんな私でも彼は愛してくれるのでしょうか。

とうとう始まってしまった夏休み。

私はこの一か月でどんな風になるのだろう。

それが、いまから、なぜか少し楽しみであり、怖いと思ってしまった。

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