第十四話 オタクと人形ちゃんのテスト明け終業式

あの日から月日は流れ終業式。

無事テストは終了し、結果は8位とまあまあの好成績だった。ちなみにアリスさんは不動の1位でしたが。

うちの高校は、三者面談がない。いや、ないわけではないのだが、三年の一学期末に一回あるだけで、それ以外はないという感じの珍しい高校だ。そのため、特に何もなく学校生活は過ぎていった。


あれから変わったことと言えば、毎日アリスさんが僕にラインをするようになったことと、空き教室に行かず教室で弁当を食べるようになったのが大きい変化だろうか。


僕が直也さんをトイレに連れて行ってるとき、ラギ姉に何か言われたらしく、アリスさんは毎日夜七時頃に僕にラインを送ってくるようになった。別にうっとうしいとかそんなことはなく、普通にうれしいのだが、最近はネタをひねり出してる感が強くなってきたため、そこまでして毎日ラインしたいのかと苦笑いをすることがある今日この頃。

あと、空き教室を使わなくなったことなのだが、勉強会で僕らの関係がはっきりしたため、別に空き教室使わなくてもよくね?となったのと、隈原と日比野さんが一緒にご飯食べようって言いだしたため、教室でご飯を食べるようになった。

いつも通り弁当を食べているだけなのだが、時々一緒に弁当食べるようになった目の前のカップルが甘ったるいものを見るように僕らのことを見るのはなぜだろう。

そういえば、最近の大きい変化で隈原と日比野さんとラインを交換するという大イベントがあった。

最近爆速で僕のラインの欄にガンガン名前を追加されてるな。ボッチはどこに行った。一か月前は両親のラインしか持ってなかったんだぞ、それが七人になった。うれしすぎる。


そんなこんながあった。

まぁ、そんなことは置いておいて今の状況から誰れか助けて下さい。


「アリスさんそろそろ離れてくれませんかね?」


「…いや」


「はぁ…」


状況としては、使っていた空き教室の掃除を先生に、この終業式の日にお願いされて一緒に掃除した。なんで終業式の日にと思ったが先生も言い出すタイミングがなかったのも確かで、まぁ、仕方ないと思い僕らは掃除を始めた。

ここまではよかった。

僕らは、最初はもくもくと掃除をやっていたのだが、いつからか自然と夏休みの予定について話し始めた。

お互い予定がガラガラで苦笑いを浮かべるような状況が出来上がったが、まぁ、そんなことは置いておいて、掃除が一区切りついた時、僕はアリスさんにいきなり抱き着かれた。正面から。ガッツリと。

そうして、どうしていいのかわからず、とりあえず頭に手を置いて撫でていたら時間は過ぎていき─。


今に至ると。


かれこれ十分以上抱き着かれている。夏はじめの薄いカッターシャツ越しに感じる彼女の少し高めの体温とか、女の子特有の柔らかさとかいい匂いとかその他もろもろで僕の理性はガツガツ崩されそうになった。辛い。


「……夏休み…友人に会えないのは辛い…」


と、アリスさんが小さく本音を漏らした。

あー、そういえば、中学の頃は夏休みは習い事とかで基本みんなどっかで遊ぶようなことはなかったとか言ってたことを思い出した。

まったく、お互いの予定スカスカなのにそんなことを気にしてたのか苦笑いをする。


「そっか…なら、友人らしく遊ぶか?夏休み」


「え、いいの?」


「いや、お互い予定スッカスカだったじゃん、断る理由なくね?」


「…そうだね」


と、お互いの予定を思い出し苦笑いをする。


「さて、そろそろ帰るか」


「ん…そうだね、拓斗くんに抱き着いたから少し汗かいた」


「なんでだよ」


「ほら、この部屋暑いじゃん」


「そりゃ、七月の終わりだからなぁ…」


クスクスと笑いながら箒をかたずけて、僕らは教室を出た。


こうして、僕たちの夏休みが始まった。



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