第十三話 オタクと人形ちゃんは居酒屋で夕食を食べる

「生二つとオレンジジュースにゆず炭酸、焼き鳥モモタレ塩四つずつ、皮とねぎまは塩で二つずつ、手羽先は四つ、つくね五本!あと、うずらを四つ!」


ラギ姉と直也さんのおごりという発言で始まった居酒屋の飲み会(仮)ここは、某焼き鳥居酒屋チェーン店。

ラギ姉と出会った場所から一番近いということでここになった、深い意味はない。


座っている位置としては、座敷の四人テーブルにアリスと僕が並んで座って、僕の前が直也さんでその隣がラギ姉が座っている。


「さて、二人はどうやってであったのかな?」


と、開始早々好奇心旺盛な目で僕らの関係を聞いてきた。

絶対聞くと思ったから嫌だったんだよな…。


ここは居酒屋。しかも、向かいにいる為、逃げることはできない。

僕は仕方ないとおもい、思いっきりため息をついて、これまでのことを説明し始めた。


「アリスさんとは同じクラスで、それで色々あって仲良くなったんだよ。色々は言いたくない」


「そっかー」


とニヤニヤしながら僕を見てくるラギ姉。


「いや、そんなむすっとしないでくれよ、これでも私は感動してるんだ。あの少年が友人、しかも、美少女の友人を作るなんて思ってもいなかったからさ」


「そうそう、これでも、俺らは心配してたんだからね?友達ちゃんとできるかなって」


「…なんも言えないのは辛いです」


そう言って、僕はシュンっとなった。

だって、実際にこんな美少女の友人ができるとは思ってなかったしなぁ。


「さて、身内ネタはここまでにして柊さんも話しに参加できる話題にしようか」


「そうだね…あ、お互いのこと知らないし自己紹介でもする?」


「それがいいね!」


と、完全にあちらのペースで話を進められる。

僕は口をはさめないし、アリスさんはポカンとしていて、反応ができていない。だれかあいつら止めてくれ。


「それじゃあ、俺から自己紹介しようか、ふつうのIT系企業に勤めてるサラリーマンの鈴木直也って言います。よろしくね」


「は、はい。よろしくおねがいします…」


「じゃあ、次は私だな!私は高校の数学教師をやっている一般人で楽木銀って名前だ。よろしくな」


「は、はい!よろしくおねがいします!…あ、次は私ですね!私は拓斗くんの友人で高校一年生の柊有栖と申しますよろしくお願いします!」


「よろしくね~」

「うん、よろしく」


そこまで自己紹介をした時に頼んだ食べ物が少しずつテーブルに運ばれてきた。


アリスさんは珍しいものを見るかのように目を輝かせて、机に並んだ焼き鳥達を見ている。


「それじゃ、食べ物もきたし乾杯でもして食べ始めようか」


「お、直也いいこと言うね、それじゃあ…」


そういって、あげた時にラギ姉がアリスさんに視線を送ったため、横を見てみるとどうしていいのかわからず困惑しているアリスさんが居た。

僕はアリスさんに近づいてこれからやることの説明をざっくりした。


「アリスさん、飲み物の取手をもって胸あたりまで上げて、ラギ姉が乾杯って言ったら、飲み物を近づけてみんなとコップをぶつければいいよ」


「うん…、わかった…!」


そういって、アリスさんは小さくうなずいて僕の指示した通りの行動を始めた。

僕も飲み物を持ち、乾杯の準備をする。


「それじゃあ─」


そういって、ラギ姉がみんなの目をチラッと見て準備できたのか確認する。

僕と目が合ったとき、少しニコとラギ姉は笑った。多分、よくやったと意味なのだろうと、僕の中でそう解釈する。

こういう気遣いはしっかりできるので、そういうところはすごく尊敬することができる。普段からやればいいのに。


「乾杯!」

「「「乾杯!」」」


そういって、僕らはカーンとコップをぶつけた。


***


「それでねぇ、たーくん昔私の下着みて下品とか照れながら言いやがったんだぜ?なんて返せばいいのかわからなくなるんだろ?」


「(こくこく)」


「やめてくれ…それ以上黒歴史を掘り返さないでくれ…」


「ぐ~…すやぁ…」


なんだこの地獄は。

あれから一時間ほど経過して、時刻は夜七時半過ぎ。

状況は混沌を極めていた。


最初はみんな鶏肉を素直に食っていた。アリスさんも「初めて食べる…!」とか言って目を輝かせて食べてた。それが、どうしてこうなった。


まず、寝てるやつ、直也さんは酒に弱いのと日ごろの疲れで生三本で撃沈。かれこれニ十分くらい爆睡している。ゆすっても起きなかった。次、ラギ姉とアリスさん、この二人は、アリスさんが僕との関係を聞きたいって言って、ラギ姉が元々近所で仲良くなったとそこだけ話せばいいものを、酔った勢いで僕の黒歴史に近いところを「思い出話」として語りだした。それを、もくもくと聞いているアリスさん。いや、ちょっと目を輝かしてる。嫌な予感がする。でも話は聞きたくない。死にたい。


「生一つ!あと手羽先二つ!」


まだ食うのかよ…。

既に机の上にはかなりの量の皿が乗っていた。追加で注文とか化け物か。


それから、ニ十分くらいこんな感じの状況が続いた。僕はラギ姉とアリスさんの話は無視してひたすら焼き鳥をほおばり続けた。


「さて、そろそろいい時間じゃない?」


時計を見ると夜八時を過ぎていた。

確かに、ここからアリスさんの家は歩いて四十分くらいかかるので、このくらいの時間に終わるのがいい感じだろう。

話もひと段落ついたらしく、ラギ姉は直也さんをたたき起こしていた。てか、全力で殴った。うわぁ…。


「うっ、…ここは…?」


「おはよう、直也?」


「銀…?吐きそう…」


「たーくんトイレ連れてったって」


「了解」


そういわれて、重症患者をトイレに連れていく。

自分で殴っといて処理自分でしないのかよって思ったけど、ここ男子と女子のトイレ別だから無理かと察した。

ゲロって元気になった直也さんと戻るともう会計を済ませたらしく、会計前にアリスさんたちは待っていた。

そのあとは、全部げろって元気になった直也さんとラギ姉とラインを交換してその日は解散となった。

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