第十一話 オタクと人形ちゃんは勉強会に参加する

とうとう迎えてしまった、勉強会当日。

クラスの大半というかほぼ全員が参加して、机を寄せ合って各自勉強を教えあっている。


そんな中、僕はどうしているのかというと、カップル委員長組とアリスさんと僕の四人で机を寄せ合って教えあいをしていた。


どうしてこうなった。


いや、最初はアリスさんと二人で勉強をしていた。だけれど、途中から彼らが混ざってきたのだ。僕の目の前に座っているのは、僕を勉強会に誘った張本人隈原大樹だ。そしてその隣に座っているのは隈原大樹の彼女の日比野水香だ。日比野水香は学校では陸上部の期待の新人と言われていて、足が凄く速いらしい。それ以外の情報はあまりしらない。

容姿は普通に美人といった感じで、出るところは出て、へっこむところはへっこんでるその姿は、モデルのようだと言われている。


さてそんなことは置いておいて、今更だが、このクラスは頭のいい人が固められたクラスで、みんな入試の時にそこそこテストの点は取っている。

みんな得意な教科をしっかりと理解してダメなところが被ってない同士で集まって教えあってることが多い。

隈原大樹は数学、日比野水香は国語、僕は理科社会、アリスさんは英語といった感じで分担して教えあっている。


「アリスさんアリスさん、ここの化学式間違ってるよ」


「え?」


「ショ糖の化学式はC12H22O11だよ?C6H12O6はブドウ糖とか果糖」


「あっ、ほんとだありがとう」


チラッと横に座っているアリスさんの問題集を見ると間違えてたので指摘する。

直し終わり、問題を最後まで解いた彼女は僕の問題集をじっと見始めて、一通り見終わったら少しムスッとした顔をした。


「むぅ、間違いがひとつも無い…」


「まぁ、現代社会は得意だからね、流石にこの範囲は間違えないと思うよ?」


「ふつーに頭良くてなんかムカつく」


「え?酷くない?」


と、かなり理不尽なことを言われた。


「お互いの間違いを指摘し合うって友達っぽくてやってみたかったのに…むぅ…」


そう言われて、多分この勉強会に誘ったのも友達っぽい行動をする為に誘ったんだろうなと理解した。

にしても、こういう所が可愛いよな。そんなことを思いつつ頭に手を置きポンポンとする。


「次やる教科は苦手な英語だし、綴りとか間違えてたら教えて欲しいな」


そう言うと、「ん」と短く返して気持ちよさそうに目を細めた。

ちなみに、この頭撫でる行為は、昼休みに1度撫でた時に好評で僕は髪ざわりが好きで彼女は撫でられるのが好きな感じだったので、時々するようになっていた。

勉強に戻る為に問題集に向き合うと、目の前のイケメンと美女が苦笑いをしていた為、僕は何を苦笑いしてるんだろうと思ったけど直ぐに真剣な表情に戻った為、見間違えかなと思い、問題集に集中し始めた。


それから、問題集をせっせと解いてお互いに教えあって時間は過ぎていった。


「ふぅ、そろそろ終わりにしようか」


隈原さんにそんなことをいわれ、時計を見ると午後五時半を指していた。

どうやら、僕らは一時間もぶっ通しで勉強していたらしい。

僕は固まった体をほぐすように背中を伸ばした。


周りを見渡すと、隈原さんの声が聞こえたのか、みんな、体を伸ばしたりし始めた。


「にしても、やっぱり西宮君頭いいね」


「そうか?」


隈原さんにそんなことを言われてポカンとする。

人に何かを教えるのは慣れているが、まさかそんなことを言われるとは思ってもいなくて、ちょっとびっくりした。


「いつも、予習とか復習とかしてるのかい?」


「え?」


「…え?予習復習とかやらない人?」


「うん、そうだけど?こうやってテスト前に勉強したのだって二年ぶりくらいだし」


「まじか…」


そういうと、隈原さんは頭を抱えた。

別に、テスト内容は試験範囲からしか出ないって言われてるし、授業しっかり聞いていればある程度のテストの点は取れると思うのだが。

そんなことを思っていると、横に座っていたアリスさんに思いっきり殴られた。


「痛っ…おい、なんで殴った」


「人の努力も知らないで」


「えぇ…」


何が何だかと困惑していると、日比野さんが苦笑いしながら教えてくれた。


「いや、確かに殴りたくなる気持ちはわかるよ。いいかい。西宮君、基本はそれじゃテストの点数が取れないから、みんな予習復習するんだよ、だから、学校の授業だけでテストの点数が取れる人はうらやましいというか、嫉妬するんだよ」


「あー」


そこまで言われて、なんとなく理解する。

確かに、必死にやって結果を出してる人からしたら、僕のような存在は嫉妬の対象になるだろうな。

まぁ、そう言われても主席入学のやつに殴られるのは少し違うと思うが。


「まぁ、確かに理解はできた。だけど、アリスさんや、あなたが僕を殴るのはちょっとおかしいんじゃないですかね?」


「…私は努力家だから殴る権利はあると思う」


「僕より優秀で何言ってやがる」


「それとこれは別」


むむむとお互いにらみ合う。

そんな僕たちを見ていた、クラスの人が予想外のことを聞いてきた。


「そいえば、西宮さんと柊さんて付き合ってるの?今見た感じだとめちゃくちゃ仲いいけど」


「「え?」」


その発言をきっかけに、周りの人も気になっていたのか、気になる、私も、俺もと次々と聞いてきた。


「残念ながら、みんなの思ってるような関係ではないよ。ただの友人さ」


「(こくこく)」


僕たちが特に慌てた様子もなく返すと、男子は「ほっ」として女子は「えー」といった感じの反応を示した。

そんな僕たちを見ていた隈原さんたちは苦笑いをして、それにしては距離が近すぎるような気がすると言ったが、僕らはガン無視した。


「はいはい、みんなそろそろ帰るよ。この教室一応六時までしか借りれなかったから」


騒ぎがひと段落ついたころ、日比野さんがパンパンと手をたたきながら、そろそろ帰るように言った。

外を見ると日は落ち、少し薄暗くなっていた。確かにこれ以上遅くなると真っ暗になって、色々危ないな。

その発言を境にみんなぽつぽつと帰宅を始めた。

僕とアリスさんもさっさと片付けて、帰宅の準備をした。


「それじゃ、僕たちはそろそろ帰るよ」


「あぁ、二人とも今日はありがとうね。いい勉強ができた。またこういうことに誘っていいかな?」


「僕はいいよ」


「私も」


「うん、二人ともありがとう。それじゃあ、また明日」


「またな」


「またね」


そういって、僕たちは帰路についた。

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