オタクとの距離を詰めたい人形ちゃん
第四話 オタクは人形ちゃんの視線から逃げたい
「つまりは、この方式を使えばとけるという─」
授業中。
…じー。
視線を感じる。
クラスの人形ちゃんこと、柊有栖とゲームセンターで遊んで連絡先を交換した翌日。
僕は、ずっと柊さんに見られ続けていた。
ちなみに、僕の席は窓側の一番前で、柊さんの席はその一つとなりの列の前から4つ目だ。
柊さんが誰かに興味を示すことなんて、この二か月で初めてのことで、僕は現在噂の中心人物となっている。まぁ、基本的に僕が悪い感じの噂が大半だが。
はぁ、どうしてこうなった。と、昨日の帰りの事を授業そっちのけで思い出していた。
そう、あれは、ゲームセンターで遊んだ後、帰る方向が同じということで、二人並んで帰っていた時のこと。
「ねぇねぇ」
「ん?どうかした?」
「学校でもおしゃべりしたいんだけど、ダメかな…?」
「は?」
現在の時刻は17時、6月の空はまだ少し明るく、街頭はギリギリついてないような時間だ。
さて、そんな時間のことはどうでもよくて、隣の美少女が爆弾発言を投下してきた。
「だめ…かな…?」
「うん、ダメだね」
ウルウルした目と上目遣いのコンボで僕を堕とそうとしてきたが、素直に拒絶した。いや、だって面倒事多そうじゃん。ぱっと考えるだけでも複数個思い浮かぶ。
一瞬で拒絶されるとは思ってなかった柊さんは、ポカンと虚を突かれたような顔をしたと思ったら、真顔でクッソ不機嫌そうな雰囲気を出し始めた。
「…なんで?」
そう、一言。
死ぬほど怖かった。
柊さんの声は、言葉が凍っていると感じられるほど、あまりにも冷たい、心の底から恐怖を感じるような声だった。
「い、いや、面倒事じゃん…?」
「…面倒事って?」
「柊さんは美少女、俺は冴えない陰キャ、その二人が喋ってるのは違和感があるの、一般的に見て」
「…ボッチのあなたが一般を語るのはおかしいと思う」
「柊さんに告白した人たちや、今後告白しようとしてる人から嫉妬で殺されそうになると思うので、マジで学校で喋るのはマジで勘弁してください」
「ふぅん…」
てか、あまりにも声が怖すぎて、焦って返事したから気付かなかったが、こいつさらっと僕のことディスったよな?ボッチって言ったよな?
くそう、言い返したいのに視線による圧が凄いのと、なんも反論できる要素がねぇから言い返せねぇ…!
「…ん、わかった。じゃあ喋らないことにする」
「おう、そうしてくれるとありがたい」
そう言って、柊さんの視線が和らいだ。
そして、その後は特に喋ることはなく、帰路が分岐する場所まで無言で歩いた。
回想終了。
そして、翌日には僕とは喋らないが、すべての会話を無視して僕のことを見続ける柊さんが居ましたとさ。なんもめでたしではないし、むしろ悪化してました。
だって、昼休みも、ご飯を食べてる姿をじっと飯食いながら見てくるんですよ?怖いです。
はぁ、早く帰りたい。
そんなことを思った、6限の数学の授業中だった。
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