第3話
歩いても歩いても、何も無い。
あるのは木、木、木。
それだけだ。
足元には草が生えているけれど、食べられるかといえばそれも分からないし、石がゴロゴロもしておらず、落ち葉が積み重なってフッカフカ。
下草はそれ程でもないから、歩きやすいと言えば歩きやすいけれど、水の気配はこれっぽっちもない。
森が濃いので、下まで日光が射さないから、かな?
確かお父さんが、西洋の森と日本の森は違うとか言っていた様な気がするけど、やっぱり聞き流していたからさっぱり分からない。
本当に、お父さんは豆知識として色々教えてくれていたんだなあと、今更ながらに思う。
しかし、本当に薄暗い森だ。
木は大きくて高さもあるし、時折聞こえる鳥や獣の声と虫の声? 以外は特に物音も無く、風もそんなに吹いてはいないっぽいのは良かったと思う。
これで雨でも降ってきたらどうして良いかまるで分からない。
木の下だと、濡れるかなあ。
取り留めなく色々な事が頭を過る。
そしてまた思考は変な方に回りだす。
思ったんだけど、森からどうやって出たら良いんだろう?
これが分からないので、本当に困る。
考えても仕方がないけど、取りあえず人里にさえ出られれば何とかなると思うから、頑張ろう。
そう自分を頑張ってなんとか鼓舞して、先ずは水を探す。
段々足が疲れて来て、獣の声や鳥の声がするたびに身体を震わせ、足が止まる事も多くなった。
幸い、内履きとはいえ靴を履いているのは良かったと言い聞かせて思うようにしながら、ちょっと立ち止まり、息を吐く。
辺りをキョロキョロと見回すと、見覚えのある物を発見!
小走りに向かい、手に取り確認。
うん、やっぱり私の筆箱とノートだ。
どうしてここにあるのかも分からない。
結構歩いたと思うから、着た場所からはかなり離れているはず。
でも、この場所にあるというのは、どういう事?
この森、もしかして、学校から近いのかな……?
そこで思い出す。
学校の近くに、こんな大きな森とか無い。
構内の森にしては広すぎだし、木も大きすぎるし、何か違う気がする。
という事は、ここって一体どこなのよ……?
また浮かんできたそんな疑問に誰も答えてはくれず、息を吐いて、また歩き出す。
持ち物は、音楽の教科書と資料集、ノートに筆箱。
役に立たないスマホは邪魔と言えば邪魔だけど、突然治るかもしれないし、手放さずにおこうかな。
ノートと筆箱効果で、ちょっと元気が回復。
また歩き出した。
獣の声はするけれど、姿は見えない。
鳥の声もするけれど、姿は見えない。
私の目が悪いだけなのか、獣も鳥も人を避けてくれているのか、分からないなあ。
そんな事を考えている私の目に飛び込んできたのは、見たことのない動物、だった。
遠くに、チラッと見えたと、思う。
でも、動物、かな……?
自信が無くなってきた。
私を見て、すぐさま走って行ってしまったから。
距離から考えると、結構大きいんじゃないかな。
大きな足だったけれど、長い訳じゃ無かったと、思う。
ずんぐりしていた様な気が、する。
それに、見た目が、鳥だった。
うん、鳥。
でも、地面を走って行った。
そして、足も中々大きかった、様な……
一羽でもなかったと、思う。
何羽か居た様な気もする。
一羽が走りだしたら、皆一目散に走りだして、あっという間にいなくなってしまった。
それにしても思うのは、見た事のない鳥だという事。
日本に居るとは思えない。
大きな地面を歩く鳥なんて、ダチョウくらいしか知らないけど、ダチョウって、森に居るの?
逃げ出したとか?
なら、近くに人がいるのかな……
丁度良い木の枝がある。
これをあそこにある木に立てかけて、さっきの鳥が居た地点で見比べに行ってみよう。
そうして木と木の枝の高さを見比べてみると、鳥の大きさがおおよそ分かった気がする。
うん、私より大きい。
見た目は、動物園で見たダチョウ?
それよりも、何かで見たドードー鳥、だっけ?
これに似ている気がする。
ダチョウ程足は長くない気がしたし、もっとずんぐりむっくりというか、丸っとしているという感じだった。
あんな鳥、本当に見た事が無い。
それとも、私が無知なだけ?
犬や猫は好きだけど、格別図鑑を見たりする訳でもなかったから、そんなに動物に詳しい訳じゃないし、猫カフェとか猛禽類の居るお店には行った事はあったけれど、どの種類かが分かる程でもない。
だから私が見た事が無いとは思っても、世界のどこかには居るのかもしれない。
でも、そんな鳥が、どうしてここにいるの……?
ここは、一体、どこ?
混乱ばかりが頭を占める。
今それを考えても仕方がないのに、それでも不安は後から後から頭を過る。
首を振って思考を切り替え、何が何でも水を探しに行かなくちゃ。
どこか麻痺している様な感情に助けられながら、一生懸命考える。
さっきの、鳥、鳥だよね?
そういうのがいるんだから、きっと水はあるはず。
さっきの鳥が逃げ出した方に行ってみようかな。
そう思い、重くなる足を動かす事に集中した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます