34 side:アエーシュマ 後

 私にも、かていきょうしが3人できた。

 とても嬉しかったし、特訓の時間も楽しかった。


 だって、愛されることもあれば、愛せることもあるんだもの。

 どっちもとっても気持ちよくて、本当に幸せな時間。


 ある時、いつも優しいハンクさんが、こんなことを聞いてきた。


「アンリをどう思っている……? 人として、兄としてどうなんだ?」


 あぁ、不敬だわ。

 あぁ、なんて不愉快なのかしら。


 神様であるアンリ様を人だなんて。

 ましてや、兄などと、いくら何でも畏れ多いわ。

 だから、はしたないけれど、少し声を荒げてしまった。



 翌日の夜、アンリ様は凄くウキウキしている様子だった。


「何がいいかなぁ~。やっぱりハンバーガーだし、ハンクをパティにしてバンズの二人で挟むってのは外せないし……」


 アンリ様が紙に色々書いている。

 一体何だろうと見てみると、縦線がいくつも入った紙の一番下に、ハンクさんたちへの罰ゲームを書いているようだ。


「3人一気にミキサーにかけても、問題無く回復するのかな? 合体してケルベロスになったりしないかな……」


 その中にある、一番左に書かれた項目に目が止まった。


”アフラシアデビルの実証実験を兼ねた、シュマの回復魔法特訓”


 うふふ、アンリ様は優しいわ、こんなに楽しそうな罰ゲームを入れてくれるなんて。

 私がその罰ゲームをしたいと言えば、一番左の棒には、横線が一本も入れられなかった。

 ほら、やっぱりアンリ様は優しいわ。




 そして、私の幸せな時間ハッピータイムが始まった。


「がぁぁぁぁあああ!!」


 可愛い鳥さんがみんなをつつくたびに悲鳴が上がる。


「うぅぅぁぁぁぁ!!」


 あぁ、みんな嬉しそう。

 私もとても嬉しいわ。


 でも、もっと、もっと愉しみましょう?

 ぎりぎりまで、深く、深く、愉しみましょう?


「……ぅう………………」


 あぁ、ハンクさんが死んでしまうわ、でも、もうちょっと、もうちょっとだけ。


「…………」


 あぁ、死んでしまうわ、そろそろかしら?


『<回復魔法ヒール>』


 アンリ様に貸してもらっている魔法で、ハンクさんは完治する。


「ハァ……ハァ……」


 うふふ、危なかったわね。

 彼は天使に会えたのかしら?


「みん……な……耐えろ……」


「…………あぁ……」


「ぅぅ……」


 あぁ、駄目だわ。

 みんな、頑張ってるのね。

 これは、駄目だわ。


 私は俯き、笑いを堪える。

 だって、大笑いするのははしたないもの。

 でも、どうしても涎がでちゃうわ。

 あぁ、スカートが汚れちゃうじゃない。


 これは駄目だわ、癖になっちゃう。

 だって、だって、人を愛するのって、こんなに愉しいんだもの。


 あぁ、でも駄目だわ、我慢できない。

 鳥さんだけなんて、ずるいわ。

 私、仲間外れは嫌いだもの。


 どうしても我慢ができなくなり、私は近くにあったナイフを手に取り席を立つ。


「シュマ様……何を……?」


 ハンクさんに近づくと、掠れた声で私に問いかける。

 だから、満面の笑みで答えてあげる。


「うふふ、私も交じりたいの。だって、こんなに愉しいこと、黙って見ているだけなんて、とても無理だわ」


 ハンクさんの顔が歪み、懇願する。


「シュマ様……駄目です……一体なにを……」


 あぁ、心配しているのね?

 でも大丈夫、大丈夫だから安心して?


「うふふ、大丈夫。アンリ様にお願いして、期間を延ばしてもらうわ。実はね、もう5日過ぎているの。だからね、あと10日ぐらいはみんなで愉しみましょう? 私が、たくさん、たくさん、たくさん、たくさんあげるわ。だからね、みんなで?」


 それから、ハンクさん達はあまり頑張らなくなっちゃった。

 でも大丈夫、時間はたっぷりあるんだもの。

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