第10話 警察の訪問

放課後…


「さてと、僕はコスモスのために新しいパソコンを作るからね?」


「頼む」


「じゃあ私たちはご飯を…」


「待って、今日は僕に作らせて?」


「えー?なんでー?」


「ふふっ、言ったでしょ?新しい包丁をもらったってさ!」


「あぁ!なら今日のご飯はオレンジに任せて我々は別のことをするのです!」


「ふふ…何を作ろうかな?」


オレンジが食材を見ようとした時…


ピンポ-ン


「およ?見に行ってくれると助かるな?」


「じゃあ私が行ってくるね?」


「おっと、僕たちは急いで隠さないとね?」


念のため、いつも急いで怪盗に関係するものは隠している。



「はーい、出ますよー」


ガチャッ


タイリクオオカミが玄関を開けると…


「あ、突然すみません、私はこういうものですけど…」


「警察…」


警察が来た。


「別に怪しんできたわけではありません。ただ…SNSでみたホラー探偵ギロギロというものが気になって…」


「あぁ!ギロギロ…がどうかしたのかい?」


「いや、今怪盗団のことで騒がしいじゃないですか?そこで…彼が提案して、作者を訪問したんですけど、あなたでよろしいですか?」


「あぁ、作者のタイリクオオカミだ。よろしく」


「…早速なんですけど、お話に興味があるんです。見せてもらっても?」


「あー…大体は今いる学校に寄付しちゃってるからね…なら今描いている原稿でも見るかい?」


「おぉ!最新刊ですか!?」


「そうだね?ちょっと待っててね…?」



「えっと…これなんだけどね、絵は完成してるんだけど、色がね…?」


「これはどういうお話で?」


「推理をしているところなんだけどね…?考えるのが疲れるよ」


「ちなみにどんな推理で?あ、どんな事件かは見たので」


「あー、あの新刊見たなら、警察目線からどこに事件の解決につながるものが見つかると思うかい?」


「えっと…」


警察の2人がスマホを見ながら考える。


「やっぱ定石はもう処理していると思いますけどそれじゃ物語は成立しませんからね…」


「今回の事件は殺人、御用人を殺した犯人が5人の中にいる。そして現場にはまだ血の匂いは残っていて、現場の物置から毒薬が見つかったっていうのが現状簡単に整理した感じだよ?」


「となると…まだ犯人が凶器を持っているとか?」


「いや、それはない」


「うん、間違ってるよ?」


「そうですか…」


「ヒント、欲しいかな?」


「…悔しいが一応」


「普段は絶対そんなところ見ない場所、そして眩しいよ?」


「…!ランタン…!?」


「そう。事件が起きた部屋には明かりをつける場所なんてない。そしてランタンを持っているのは1人しかいない…つまり、彼が犯人ってことさ!」


「なるほど!スッキリしました!」


「あ、どんな凶器を使ったか、教えてほしいかい?ネタバレにもなるけど…」


「…知りたいです!」


「…凶器は裁縫に使う長い針だね」


「なんでそんなものが?」


「そこで関連付けてくるのが、毒薬ってところさ。あれは前回に説明した通り、猛毒だ」


「…猛毒は体に回ればすぐに死ぬ可能性が高い。なるほど…面白い」


「まあざっくり言えば針に毒を塗っていたということだね?」


「なるほど…ありがとうございます!」


「いやいや、警察のみんなにも噂が回ってくるような漫画になって嬉しいよ」


「すごいですね。こんな面白い漫画を描けるのが。漫画家になりたいんですか?」


「そうだね…夢だね。そうだ、今の時間は…」


タイリクオオカミが時計を見たときにはもう6時。


「…もうこんな時間か。ちょっと待っててね…?」


何かするつもりである。



「オレンジー」


「ん?」


「ご飯、もう2人分いける?」


「…なんで?」


「警察の人が2人来てるからね」


「…わかった!」


すんなり了承するオレンジ。



「お待たせ?」


「何をしてたんですか?」


「もうこんな時間でお腹すいたでしょ?だから2人にも食べていってほしいなっていうことだけど…」


「…どうします?」


「…いいのか?」


「もちろん!ここはシェアハウスでみんな大学生で仲がいいからうるさいけどそれでも構わないなら振る舞わせてもらうよ?」


「…ならお言葉に甘える」


「ありがとうございます!」


「…じゃあついてきて?ここは私を含めて11人が住んでいるシェアハウスでね?昔から仲がいいフレンズ同士が住んでるんだよ?」



「さ、ここがリビング」


「「「「「「こんばんわー!」」」」」」」


「おぉ…威勢がいい」


「でしょ?おーい、できた?」


「待って!さっき完成したばっかだから今盛り付ける!」


「…広いですね。大学生が集まった家じゃないみたい」


「みんなの身内からお金を何とかしてもらってみんなで暮らし始めた夢のような家だからね」


「…あ、あなたは」


「あの時の!久しぶりですね!」


「大丈夫ですよ?疑わなくて」


「さて、みんなー、できたよー」


「おっ!今日の夕飯はー?」


「サバの味噌煮!新しい包丁はかなり使いやすかった!」


「…サバの味噌煮…すごいですね」


「大学生が作ったようなものには見えない…」


「こう見えても将来料理人を目指してましてね!」


「なるほど…どうりで」


「おーい!カカオと博士ー!ご飯だよー!」


アァァァァァァ!?


「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」


「…だ、大丈夫ー?」


「あー、大丈夫ー!問題ないー!少し服に穴が空いただけだから!」


「それ少しどころの怪我じゃないだろ…」


はんだごてを使ってパソコンの基盤を作ったりするカカオはしょっちゅう火傷したり服に穴が空いたりする。1ヶ月に一回は2階から悲鳴が聞こえる。


「…あー、ごめんねー?あ、来客か…お騒がせして申し訳ございませんでした…」


「まあこの姿から分かる通り、警察だ」


「どのような御用件で?」


「彼女が描くホラー探偵ギロギロのことについて聞きに来たんです!」


「あー、すごいからねぇ…ま、夕飯もご馳走することだし、ゆっくりしていってくださいね?」


「火傷は大丈夫?」


「大丈夫!…コノハちゃん、あとで縫ってくれると助かるな…?」


「もちろんなのです!」


「さ…みんな集まったことだし、食べますか!」


「「「「「「いただきます!」」」」」」」

「「いただきます」」


今日の夕飯はご飯、サバの味噌煮、キャロットラペ、そしてジャガイモとベーコンのチーズ焼き。種類こそ少ないけど量が半端ない。


「そういえばこの部屋ってリビングですよね?」


「はい、そうですけど?」


「じゃああれって…模擬刀なんですか?」


リビングに一つ、刀が飾ってある。解説しておくとあれはオレンジの所有物であり、大切なものの一つである。ちなみに真剣。


「あー、あれはれっきとした真剣ですよ?昔、抜刀術をやってましてね…あれは元々僕のものじゃないんですけど、友達が抜刀術をやってたんですけど、病気でできなくなって、同じ刀だからこれを使って大会に出てほしいって言われたんですよ」


「え、なにそれ俺たちも初耳」


「あー、じゃあ解説するよ!なんでその刀を使って大会に出てほしかったか、あの友達は特に言ってなかったけど、昔、同じ地に立って戦おうっていう約束があったんだよね?でも病気でそれができなくなった」


「じゃあ約束守れてないじゃん」


「だから、この刀をくれたんだよ。その時に言ってはないけどこう言ってるように聞こえたんだよ。「この刀を俺の形見として、戦い続けてほしい」って。部屋から出る時にこう言われたんだよね?それで確信が持てた!「今度からはライバル同士じゃなくて、味方同士だ」ってね!」


「…いい話だね…」


「そして、僕は大会で優勝したことで約束を果たしたんだよね?その時にはもうその友達が病気で死んじゃう直前だったから、大会が終わった後に急いで病院に向かったんだよ。トロフィーと賞状を見せて、一緒に泣き合ったよ…その友達とのお別れがこの時だったんだよ…」


「ん?死ぬ直前だろ?死ぬ姿は見なかったのか?」


「それについては、「お前を悲しませたくない。お別れは、笑顔…だろ?」っていって、病室から離れたんだよ…」


「…そのときの写真があれってことか…」


「この前お墓に行ったのもその友達のお墓?」


「そう!…さ、ご飯を食べる手が止まってるよ?早く食べないと冷めちゃうよ!」


「おっ、そうだな!」


「さ、食べよう」



食事を終えて…


「色々とありがとうございました!」


「いやいや、来客には誰であってもおもてなしをする。私たちの信念さ…」


「…いい心だな。…じゃあ、失礼させてもらう」

「お邪魔しましたー!」



警察がいなくなって一安心する怪盗団。


「…ふぅ、怖かったー…」


「さ、私たちが洗い物しておくからみんなはお風呂に入ってていいよ?」


「おっけー!じゃあお先ッ!」


「待てカカオ!俺が先だ!」


いつものお風呂争奪戦が始まった。


「俺はミミちゃんと一緒に入る約束があるし…ね」


「ですね。1ヶ月ぶりなので楽しみなのです」


「…オレンジ、どうするんだい?」


「え?」


「お風呂、一緒に入るかい?」


「昨日一緒に入ったばっかだよね?」


「そうだね…でも、好きだからこそ、また一緒に入りたい気持ちがあるんだよ?」


「そうだね…じゃあ今日も一緒にお風呂、入ろうか!」


ヒヤヒヤした1日を過ごす怪盗団であった。

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