第2話 学校

翌日…


「じゃ、お先に行ってきます!」


「行ってくるよ?」


「あぁ!またあとでなー!」


学校へ出発するオレンジとタイリクオオカミ。


「さてと、久しぶりに2人で登校するね?」


「宿題やってあるねー?」


「もちろんさ!」


「あー!タイリクオオカミお姉様ー!オレンジお兄様ー!」


「…だよね。来ると思った」


「おはよう?イタリアオオカミ」


イタリアオオカミ。オレンジとタイリクオオカミを敬っていて、同じ大学に通っている。数少ない怪盗団の協力者でもある。


「朝のニュース見ましたよー!すごい手柄ですね!ちなみに誰が潜入したんですか?」


「僕とプラムが潜入したよ?」


「オレンジさんとプラムさんですか!?まあいつも潜入してますしね!お疲れ様です!今日あたりサファイアの宝石、アヌビスの涙を見せてもらっても…?」


「もちろん!イタリアオオカミになら見せていいよ!」


「ありがとうございますー!」


「ふふっ、元気がいいね?」


「そりゃあそうですよ!怪盗団の活躍が本人から聞けるんですから!それにしても…怪盗団名、公開したんですね?」


「うん、それじゃないと楽しくないから!」


「こんなに危険なことを楽しむなんて…やっぱすごいですー!」


「ふふっ、私たちメスだってみんなの帰りをハラハラして待ってるんだからね?」


「大丈夫!僕たちは何があっても必ず帰ってオオカミ、君の心を奪うから!」


「もうとっくに奪われてるさ…オレンジ、私は君に恋をしたんだ…死ぬまで付き合わせてもらうよ…!」


「私もです!可能な限りの手伝いはしますよ!」


「ありがとね?僕たちの働きは支えてくれるみんながいるからしっかり警察に捕まらないで盗めるからね?」



学校…


やっぱいつもと変わらず校門に数人の教師が立っている。もちろん挨拶のために…だが、その1人がオレンジとタイリクオオカミのいる教室の担任なのだ…


「おっ!おはよう!」


「「おはようございますー!」」

「おはようございます?」


「やっぱいつもと変わらないなー、お前たちは!それにイタリアオオカミが一緒なんて珍しいな?」


「ふふっ、そうかい?」

「そうですかー?」


「そりゃあそうだよ!2人を見てると飽きないよ!フレンズ同士が恋に落ちるなんてストーリー聞かないからな!あれ?フレンズ同士のペアはつがいというのか…?」


「一応僕たちはつがいと言ってます」


「そうかそうか!オレンジ!タイリクオオカミを例の怪盗団に盗まれないようにな!」


「ははっ!気をつけますよ!」


そんなわけないが、オレンジたちにとっては怪盗団の話題が出ると少々ひやっとする。


「…もう怪盗団のオレンジに心は盗まれてるさ…///」


「だよね…でもやっぱ怖いよ…」


「おーっす!」


「ふぁ!?」


「今日は3人か!珍しいな!いつもは10人で堂々と現れて周りの女子たちをキャーキャー言わせてるがな!」


彼は上代 半次郎。珍しい名前っぽいと言われ、いじられ気味の人でもある。オレンジの友達だが、そのオレンジたちが怪盗団だとは知らない。


「あれは…大体カカオがね?」


「まあカカオはカッコ良すぎるからなー、コノハの心をキャッチしたのもわかるわー」


「まあ同居してるからね。わかるよ」


「そういえば怪盗団のニュース見たか?あれ怖いよなー。高価な物が出てきたと思ったらすぐに盗られるんだから」


「そうだねぇ…私たちも見に行こうと思ったらスッと盗られてるからね」


「おっ?リア充発言聞いちゃったぞー!」


「待て!広めるな!」


「やだー!」


「くっそ…!逃げられた…!」


「まあ慣れてるからいいじゃないか…」


「さて、私はそろそろ教室に行きますね!また後で会いましょうー!」


「うん、またねー!」


キャー!来たー!

革命児よー!


「おっと…早い参上で」


この女子からの歓声。カカオしかいない。


「お、おぉ…いつもより増してすごいね…」


「カカオ、この私が嫉妬する前に早く行くのです」ギュ-


「う、うん…?」


「もぉー、コノハちゃんったらー!カカオ君を独り占めしちゃってー!」


「悪いですか?」


「そういうコノハちゃんこそ!カカオ君に何か誓ったの?」


「ふっふっふ…聞いて驚くのです…!」


「…!待って!それを!?」


「カカオとこの私は大学を卒業したらつがいになると2人で誓い合ったのです!」


「「「「「「!?」」」」」」」ザワ…ザワ…


「あっちゃー…言っちゃったかぁ…」


「ほら、カカオ、早く行くのです!」


「わ、わかったよ?」


「おーい、カカオ」


「今はお前たちに構っている暇などないのです早く教室に行くことが先決なのです」


ものすごく早口で喋るアフリカオオコノハズクと連れて行かれるカカオ。メスには勝てないものである。


「…はぁ、僕たちも行くか」


「そうだね?」ギュ-


「…なんで腕組んでるのさ」


「悪い…かい?///」


「はぁ、いいよ?席隣だし」


「あっ!出たリア充!」

「羨ましい…」

「リア充爆発しろー!」

「ヒュ-ヒュ-!」


「…やっぱ慣れたとはいえ恥ずかしいね///」


「そうだね…早く教室、いこっか///」


怪盗団の学校は大変なのである。



朝の会…


「そういえば知ってるか?今度は高価な着物が前に行った場所にたくさん展示されるらしいな?怪盗団が出てくるかどうか、見どころだな!」


「…オオカミ」


「…うん、わかってる」


「…これはいい獲物だ…!」

「いい獲物発見…!」


いじってくる担任の教師はちゃっかりお宝の情報もたまにこぼすため、利用させてもらったりしている。



休み時間…


「…どうした?」


「新しい獲物の情報が来た!」


「おっ?なんだ?」


「着物らしいよ?なんと言っても高い素材を使ってるらしい」


「着物を展示する会か…ちょっと待ってろ、すぐに検索する」


コスモスが学校でも隠さずパソコンを持ち歩いている。だから調べたいときに調べられる。


「…これか?」


「着物展覧会…今までになかった高級着物がこの日、あなたの目で見られる…これだ…!」


「金箔をふんだんに使ってその他の高級素材を勿体ぶらずに使った着物、ねぇ…」


「よさそうじゃないか?」


「そうだね!日にちは…」


「一週間後か…ていうかみんな馬鹿だな」


「え?なんで?」


「俺たちみたいな怪盗団がいるっていうのにわざわざ獲物を差し出してくれるなんてな…!」


「ほんとだよね。流石に上手くいきすぎている時もあって冷や冷やするけどね!」


「とにかく今日、帰ったら早速作戦を立てるぞ。最近忙しいな」


「3連チャンできたら流石にいそがしくなるぞ…!」


「…げっ!授業始まんじゃん!急ご!」







時は進んでお昼…


「確か今日のお弁当は…」


「我々が作ったのです」


今日の弁当はアフリカオオコノハズクとワシミミズクが作った。


「美味しそうだね!」


「みなさーん、ご一緒してもいいですかー?」


そんなときにイタリアオオカミがやってくる。


「怪盗団の協力者なら大歓迎だ!」


「ありがとうございますー!そういえば聞きました?あの着物の件…」


「あぁ、あれね?」


「ちゃんとリサーチ済みだ。…これだ」


「へぇ!すごい綺麗…」


「一応これは盗みに行く予定ではいる」


「そうなんですねぇ…頑張ってくださいね!」


「…そういえばイタリアオオカミ、体育の成績がいいんだって?」


「はい!たまたま得意な種目だったので…」


「へぇ、じゃあさ?イタリアオオカミ」


「はい?」


「怪盗団、入らないか?」


「え?私が怪盗団に…?」


「そうだ」


「ちょっ…なぜ急に」


「思いつきだ!こんなに俺たちを敬っててしかも援助してくれてさらには身体能力も良さそうだ!これはもう…な!」


「…考えさせてください!」


「賢明な判断なのです。怪盗団に入ることはこれからの人生も、理想だった夢も全て消えることになるのです」


「ゆっくり考えて、これからを決めるといいのですよ?」


「ありがとうございますー!あ、でも入っても入らなくても援助は止めないので!」


「ありがとねー!」


「…そうだ、ひとつ聞いておきます!」


「ん?」


「今、一番盗んでみたいものってなんですか?」


「…決まってるよね?」


「あぁ!」

「もちろん!」

「当然だ」

「決まってなきゃな!」


「「「「「…秘密!」」」」」


怪盗団はどうやら援助してくれる者にも秘密は知られたくないらしい。


「…そうですか!」


「ごめんね?これ教えると心配させちゃうもんでさ!」


「秘密なら仕方ないですよ!」


「…ごちそうさま。じゃあ俺は手早く展示会の開催場所、できれば内装も調べておく」


「お願いね!」


「…もうひとつ、聞きたいことがあるんですけど…」


「んー?どうしたのかなー?」


「今日一日、お邪魔してもいいでしょうか…?」


「ん?それは今日はうちに泊まるってことー?」


「さっき怪盗団へのお誘いがあったので様子とかを見てみたくて!」


「あー!それならいいよー!ね!プラムー!」


「あぁ!大歓迎だ!」


「僕たちも歓迎するよ?」


「我々も、歓迎ならいくらでもしてやるのです!」


「ありがとうございます…!じゃあ今日、支度したらそちらの家に向かいますね!」


「あいよー!」


「じゃあ…そろそろ私は教室に戻りますね!」


「うん!また後でね!」


怪盗団は心優しい。ただ心優しい。


「…さてと、写真を元に現場の簡単な見取り図を描いた。アップル、今度下見に行ってきてくれないか?」


「わかった!いつに行けばいいんだ?」


「ちょうどよく予約無しでも入れるからな。入場料は…確か俺が当番だな…俺が渡す。初日に行ってきてもらいたい。どうだ?」


「つまり…何日だ?ハハっ!」


「9日、土曜日からスタート、つまり今日入れて4日後だ」


「4日後ね…わかった!俺が行ってくるよ!」


「すまない」


「俺が偵察係なんだから仕方ないじゃん!」


「そうだな。…みんな、見てくれ」


「ん?」


全員がコスモスのパソコンを見る。


「一応色々見た上での考察だ。多分…この写真からするにここに換気扇がついている。そこから建物内に侵入、通気口の入り口は…おそらくトイレだ。だが上から少しずつ降りていくルートもある」


「下から登っていくルートはないの?」


「あるが…多分警察がうろついている」


「まあそうだよね…怪盗だからこその予告状だから」


「おっ、お前ら何してるんだー?」


とある教師が来た。


「あ、先生」


「俺たちは…今度の土日のどっちかにコノハが行ってみたいと言っていたこの着物展に行こうとしてたんです」


「あぁ!着物展ね!これも怪盗団が来そうだけどねぇ…盗まれる前に行けるといいな!」


「あはは、そうですね…」


実際自分たちが怪盗団だから、目玉が観れるのは確実である。


「それと、サークルの様子はどうだ?オレンジ」


「まぁ…そう見つからないものですよ。怪盗団の情報は」


ちゃっかり怪盗団の情報を集めるサークルを作った怪盗団である。


「でも、少しの情報ならありました」


「おっ?どんな情報だー?」


「前に警察に怪盗団の写真ですが…」


「ん?撮られた?」


「あ、言い間違えなので大丈夫です」


オレンジ、はっきりとおっちょこちょいぶりを見せていく。


「この写真、ほぼ黒いので実際にある服みたいに色をつけてみたんですよ。そうすると…この左の方は真っ黒のコートみたいな服、右の方は西洋劇に出てくるカウボーイ的な服に似てるということがわかったんですよ」


「…確かに。テレビで見た写真もそんな感じだったな…すごい発見じゃないか!」


「えへへっ、ありがとうございます!」


ちなみに黒いコート的な服を着ているのがオレンジ、カウボーイ似の服を着ているのがプラムである。


「この調子で怪盗団を捕まえられるようなサークルにしてくれよー?」


「ふふっ、警察じゃないから無理に決まってますよ!」


「それでも警察の役に立つような情報集めれば世間にすごい貢献できるからなー、頑張れよっ!」


「はい!」


そうやって激励しているのが怪盗団本人たちだとは思わなかっただろう。


「…オレンジ…危ないな…」


「あはっ!ごめんごめん!」


「さて、学校で作戦を立てる時間は終わりにしよう。続きは家でだ」


午後の授業も難なくこなす怪盗団であった…

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