第27話 魔獣キング
そうこう言ってるうちに、1か所に集まっていた50体近い魔獣たちは、巨大な1体の魔獣――魔獣キングになっていた。
恐竜のティラノサウルスみたいな姿で、2階建ての家みたいなビッグサイズ。
そんなまっ黒な巨竜が、近くにいたアスカムーンに襲いかかる。
アスカムーンの退路を確保するべく、わたしは魔獣キングの巨体めがけてシャイニング・バスターライフルを撃ちまくった。
乱射モードから、威力を元に戻した普通の蕎麦ビームだ。
だけど――、
「全然ちっとも効いてないんですけど!?」
「すごい防御力ね……まるで日本一硬いと言われる、山梨県は富士吉田市の『吉田のうどん』のような圧倒的な防御力だわ」
「例えの意味が全くわからないんですけど!? なんですか『吉田のうどん』って、そんなコアな例えは、わたしみたいな一般人には通じませんよ!?」
「『吉田のうどん』は、2007年に農林水産省が各地のふるさとの味の中から厳選した、『農山漁村の郷土料理百選』の1つよ」
「『農山漁村の郷土料理百選』!? そんなものが!?」
つまり日本国が認めたうどんってこと?
うどんキング!?
「あなたの大好きな『越前おろしそば』と同じよ、ちゃんと知っておきなさい」
「は、はぁ……って、今はそれどころじゃないですよ!」
「あなたの方から聞いてきたんでしょ?」
「聞いたって言うか、思わず突っ込んじゃったって言うか……だからそーじゃなくて、これが魔獣キング……! ものすごいオーラで肌がピリピリしてきます」
わたしは強引に話を戻した。
うどん狂いしたときのアスカムーンは、時々大局を見失ってしまうから。
「私もよ。今度こそばらばらに戦っていてはやられてしまうわ。ラー・メンマ! 共闘しましょう!」
うどんから正気に戻ったアスカムーンが再び、ラー・メンマと共に戦うことを呼びかけたんだけど、
「ふふん、100年に1体現れると言う魔獣キング……相手にとって不足はないアル!」
ラー・メンマはそれでも聞く耳を持ってくれないのだ――!
「だめよ! いくらあなたが強くても、魔獣キングには勝てないわ! だから――」
「黙ってそこで見ているよろし! はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ――!!」
ラー・メンマが気合を入れるとともに、紅蓮の
「うわっ、すごい!」
あまりの熱量に、火傷しちゃいそうだよ!?
「行くアルネ! 偉大なる太陽神ラーメンよ、我に力を――! ラー・エルム・ラー・カイラム・ラー・ディッシュ・ラー・メン! アチョーーーーー!!」
太陽神ラーメンの猛々しいまでの炎がラー・メンマをおおい、そこから猛烈なパンチの連打が解き放たれる!
1秒間に100発の猛烈な連打は、言うなればそう、灼熱のラーメン百裂拳!
「アータタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタ! お前はもう、死んだアル」
圧倒的な破壊の力によって、魔獣キングは粉々に粉砕――、
「――なんだとアル!?」
――されていなかった。
そして次の瞬間、ラー・メンマの身体が吹き飛ばされていた。
魔獣キングが強烈なパンチを繰り出してきたのだ――!
ラー・メンマは20メートルくらい殴り飛ばされて、そのまま地面に落ちると転がって止まった。
そして地面に転がったまま、ピクリとも動かなくなった。
「ラー・メンマ!」
凄惨な敗北シーンを見せられて、思わずわたしは悲鳴のような声をあげた。
そしてアスカムーンはというと、
「……実は私、前から思ってたのよね」
「な、何をですか?」
「『お前はもう死んだアル』って死亡フラグだなって。こういうセリフを言った時って、だいたい相手は死んでないのよね。『お約束』っていうのかしら」
「あのアスカムーン……アニメやゲームじゃないんですから……割と大変なシーンですよ、今」
あまりに冷淡過ぎるアスカムーンに、わたしが若干引いていると、
「いいえシャイニング・プリンセス・ステラ。私たちが相手にしているのはただの魔獣じゃないの。物語から抜け出した魔獣なのよ。つまり『お約束』というものに最も左右されやすい存在と言えるわ」
「あ、たしかに……! 物語の魔獣なら、物語的な『お約束』に左右されても、ぜんぜん不思議じゃないかもです――!」
さすがはアスカムーン、見事すぎる論理だった。
まったく、ファクト&エヴィデンスのうどん一新教徒には、論理的思考では全くかなわないや!
でもそれはそれとして――、
「ラー・メンマ! すぐに助けにいくからね!」
言うや否や、わたしは倒れているラー・メンマに駆け寄った。
魔獣キングがラー・メンマに止めを刺そうと近寄ろうとしていたのを、
「させるもんか! 充填率120%! 最終セーフティ
怒りの蕎麦・荷電粒子砲をぶっ放して牽制する。
魔獣キングが何事かと足を止めた隙に、わたしはラー・メンマのもとにたどり着くと、そっとその身体を抱き起こした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます