第11話 世界征服魔獣

 慎重かつ大胆に現場に急行したわたしとアスカちゃんさんを、待ちうけていたのは、


「ここって工事中のビルですか?」

「そうみたいね」


 帝国通りにある、絶賛改装工事中の大きなオフィスビルだった。


「なんだか静かですね。中に誰もいないのかな?」


「今日は土曜日だから工事の職人さんもお休みよ。じゃあさっそく中に入ってみましょう」


 アスカちゃんさんはそう言うと、ピッキングツール――こほん、名状しがたき棒状のアイテムを取り出した。


 そしてためらう素振りもなく鍵穴をカチャカチャやりだして、入り口の施錠をいとも簡単に解除してみせる。


 取り出してから解錠まで、わずか1分かかるかどうかの鮮やかな手際だった。


「か、かなり手慣れてますね……?」

「そりゃあ錠前破りは正義の味方の必須技能だからね」


 え、あ、はい……?

 ま、まぁアスカちゃんさんがそう言うんなら、いいよね?


 わたしは深く考えるのをやめた。


「あの、勝手に入って大丈夫なんでしょうか?」

「防犯カメラがついてないのは最初に確認済みよ」


「そーいう意味じゃないんですけど……」


 まぁジャス活――ジャスティス活動の一環なんだし、いいよね?


 警察とか公安とも仲良しだって言ってたし。

 つまりアイ・アム・ジャスティス!


 わたしは深く考えるのをやめた。


 そんなこんなで。

 わたしとアスカちゃんさんは、改装中のビルを慎重かつ大胆に進んでいく。


 慎重かつ大胆に――このフレーズって、なんかカッコよくてステキな感じ!


「この先ね……」


 アスカちゃんさんが、大きな会議室みたいな部屋の入り口で立ち止まった。

 わたしのステラ・レーダー(アホ毛)もずばりこの中を指し示している。


 そっと物陰から中を覗いてみると、


「いました……!」

 会議室の奥に魔獣がいたんだ――!


「じゃあ行くわよステラ。落ち着いて、練習通りにね? 困ったときや苦しいときは私の背中を見て」


「はい、アスカちゃんさん!」

 さすがアスカちゃんさん、頼れる大黒柱って感じ!


「ヨシッ!」

「ヨシッ!」


 わたしたちは仕事猫だか現場猫だかのごとく、指差称呼ゆびさししょうこをすると、


「ムーン・メガミック・パワー! ウドンアップ!」


 起動ワード=イグニッション・スペルとともに、まずはアスカちゃんさんが、銀色の月光のようなキラキラに包まれて、アスカムーンに変身する!


 まずは先輩をたてるのは、後輩の役目だからね。


「うどんとノベルのセーラー服美少女女神、アスカムーン! 月見うどんにかわってオシオキよ!」


 アスカムーンが決めゼリフとともに、カッコいいポーズを決めた!


 よーし、じゃあ今度はわたしも変身するよ!


「ほあああぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!! 」


 M・E・Nめん超宇宙コスモスが、わたしの中で猛烈に高まっていき、一つに集束すると「ビビビッ!」と一筋のペガサスのごとき流星となって駆け抜けていく!


 わたしの身体が、ピンク色のM・E・Nめん超宇宙コスモスに包まれるとともに――!


 ジャキーン!

 ジャキジャキジャキーン!


 シャイニング・アイドル・ドレス!

 シャイニング・アイドル・ニーソックス!

 シャイニング・アイドル・ブーツ!

 シャイニング・プリンセスティアラ!


 そして最後に、何物をも打ち砕くシャイニング・バスターライフル!


 戦闘衣クロースがわたしの身体に、次々と銀河蒸着されていく!


 そして現れづるは――、


「銀河の翼に希望のぞみを乗せて、届け平和のラブソング! 銀河系アイドル! シャイニング・プリンセス・ステラ、帝国通りにただいま参上!」


 イグニッション・スペルともに、わたし――シャイニング・プリンセス・ステラは、M・E・Nめん超宇宙コスモスの導くままに、かっこいい登場ポーズをとった!


 わたしたちが変身したことで、魔獣はやっとこさわたしたちの存在に気が付いたみたいだった。


 どうも気配を隠せるからって、のんびり油断してたみたいだね。


 愚かなり!(`・ω´・)ドヤァ


 しかし、


「ヴァッ!! 何者だ、きさまら?」


 魔獣が言葉をしゃべったのだ!


 これにはわたしも驚いたよ!


「気を付けなさい、シャイニング・プリンセス・ステラ! こいつは、とても高度な知性を有した魔獣よ! きっとこいつが、物語から魔獣を解き放っていたのよ!」


「ってことは、こいつが世界征服の黒幕ってことですか!?」


「ヴァッ、ヴァッ、ヴァッ!! どうやらお前らは知り過ぎたみたいだな。世界征服の障害は、すべて排除してやる! 死ねぇっ!!」


「やっぱり! ならここで確実に仕留めるわ、行くわよシャイニング・プリンセス・ステラ!」


「はいっ! じゃあまずは牽制ビームだよ!」

 わたしはVRでのシミュレーション通りに、牽制ビームを撃っていく。


「ヴァッ!!」

 ひょいっ!


「ヴァッ!!」

 ひょいっ!


 しかし魔獣はそれをなんなく交わして見せたのだ。


「くっ、この! この魔獣ってばすごく速いよ!?」

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