第12話 オペレーション・メテオ
ひょいひょいひょいひょいっ!
「このっ! このこのっ!」
わたしは攻撃が全然当たらなくて、露骨に焦った声を出しちゃったんだけど、
「いいえ、それで十分よ。シャイニング・プリンセス・ステラは焦らずに落ちついてそのまま牽制射撃を続けて。今度は私が行くわ!」
「は、はい! このまま牽制射撃を続けます!」
わたしの復唱を確認すると、アスカムーンが前に出た。
そしてウドン=UDON=UNDO=運動による、膨大なウドン運動エネルギーを加速に利用して、魔獣との距離を一気に詰める!
「ヴァッ!?」
それを見た魔獣が、慌ててアスカムーンに対応しようとするんだけど、
「させるもんかー!」
わたしは牽制ビーム攻撃をばんばん撃ちまくって、魔獣に対応するための時間を与えない。
「ナイスステラ! 一気に決めるわ!」
アスカムーンの手にどこからともなく、長年、月の光を浴びたような巨大なウドンがあらわれた。
「喰らいなさい、世界征服を企む悪しき魔獣め! ムーン・ウドン・ウィップ・エスカレーション!」
そして、夏の嵐のごとき猛烈なウドン乱舞が、激しく魔獣を打ちすえる!
「やった!」
午前中に何度も練習したゴールデンコンビの必殺コンビネーションが見事に成功して、わたしは思わず喜びの声をあげた。
だけどその直後、私は目を疑うような光景を目の当たりにしたんだ!
「ヴァッ、ヴァッ、ヴァッ!! 効かぬわ!」
あれだけの攻撃を受けたっていうのに、魔獣はピンピンして笑ってるんだ――!
「くっ、ムーン・ウドン・ウィップ・エスカレーションが効いていないですって!?」
アスカムーンが信じられないって顔をした。
「ヴァッ、ヴァッ、ヴァッ!!」
魔獣は調子に乗った若干ムカつく大きな笑い声をあげると、今度は自分の番だとばかりにアスカムーンに反撃を開始する!
「くっ、ムーン・ウドン・ウィップ・エスカレーションに耐えたからって勝ったと思わないことよ!」
アスカムーンも得意の接近戦でそれをどうにかサバいているけど、
「アスカムーンが、ちょっと押されてるみたい……!?」
わたしはアスカムーンを援護するべく蕎麦ビームを撃とうとして――だけど撃てなかった。
昨日シャイニング・プリンセス・ステラへと覚醒したばかりのわたしの狙撃能力は、まだまだ新兵未満の未熟なひよっこだ。
アスカムーンと魔獣がドッグファイトで激しく動きまわっている超接近戦では、フレンドリー・ファイア――友軍誤射する可能性が高いので、とても狙い撃ったりはできないのだった。
「ううっ、わたしは、なんて足手まといなんだろう……」
わたしは見ているだけしかできない自分を、心から恥じていた。
そんな情けないわたしを叱咤激励するかのように、アスカムーンが戦いながら声をあげた。
「シャイニング・プリンセス・ステラ、ここはオペレーション・メテオよ!」
「オペレーション・メテオ!? む、無理です!」
説明しよう!
オペレーション・メテオとは、午前中にやったVR戦闘シミュレーションの連携の一つなのだ。
他のすべての連携が、シャイニング・プリンセス・ステラが牽制ビームで足止めして、アスカムーンが倒す作戦なのに対して、オペレーション・メテオだけはその逆。
アスカムーンが相手の足を止めて、シャイニング・プリンセス・ステラが
「シャイニング・プリンセス・ステラ、自分の無力について悩むあなたに、今から偉大なる先人の素敵な言葉を、贈ってあげるわ。物語の女神としてね」
「物語の女神……? 誰のことですか? って、あ、アスカムーンのことか!」
いつもウドンうどん言ってるから、そんな設定があったことなんてすっかり忘れてたよ!
そうだった、アスカムーンはうどんの女神じゃなくて、物語の女神なんだった!
「あなたね……」
「てへぺろっ(・ω<)」
「こほん、まぁいいわ。じゃあ今から言うから心して聞きなさい」
「はいっ!」
わたしは背筋を伸ばして傾聴の態勢をとった。
「『無理』っていうのは、嘘吐きの言葉なの。途中で止めてしまうから、無理になるのよ。だからまずは、死ぬまでやってみればいいの」
「ええっ!? ここでまさかの根性論!?」
しかも死ぬまで、ってタチ悪っ!
正義の味方は、どこぞのブラック居酒屋チェーン店なの!?
たしかにワ〇ミの社長さんは政権与党に所属してるから、その発言はこの国における正義なのかもしれないけど!
「違うわよ。どうせ誤射しても死ぬのは私なんだから、ならとっとと撃っちゃいなさいって意味よ」
「うぇぇっ!? 『死ぬまで』ってそういう意味なんですか!? アスカムーンが死ぬまでって意味だったの!?」
「ああ、心配はいらないわ。死んだらちゃんと官房機密費から遺族に特別労災が下りることになってるから」
「軽っ!? 自分の命を犠牲にしてでも魔獣を倒す――って感動シーンなのに、さっきから言動軽すぎません!?」
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