あの夏の日に…

@daichii

第1話 どんな夜を過ごしたの…

スカートの裾が地面スレスレをそよいでいた。

歩道の端から端へと斜めに移動し歩行がおぼつかない。

長い髪が大きく揺れる。

荷物を持っていない両手がリズムをとるように上下をし、余計に無防備に見えた。

彼女はどんな夜を過ごしここにたどり着いたのだろうか…。


朝の4時がこんなに明るいとは知らなかった。

カーテンの隙間からこぼれる朝日で目が覚めた。

前の晩にテキトーに閉めたツケが、こんな形で回ってくる。

重たい体を起こし、閉めようとしたそのカーテンの隙間から見えたのがさっきの女の子だった。

淡いラベンダーカラーのロングスカートをひらひらさせて歩くその姿は、

左右に揺れ、遠目に見ても危なっかしい。

まだお酒が残ったまま、どこからか歩いてきたのだろうか…。


しばらく目が離せずじっと見ていると、道路沿いのパン屋さんの外玄関の戸を開けた。彼女の姿が内玄関に入っていくところまでは見えなかったが、もうすでに視界にはなかった。

無事に見届けた安心感とともに気づく。

あのいつも手伝っているパン屋さんの娘さんだったのか…。


そして再びベッドに戻った私は、彼女と重なるあの日の由香を思い出していた。



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