仕様です。
「戦闘か。得意分野だ」
フィールドに移動してシュバルを顕現させて試験内容を説明した。案の定このバイコーンは血の気の多い性格だったらしく大いに活躍してくれている。次々と向かってくる攻撃を躱しながら突進していく。危険なので外から見守って指示を出しているだけなのだが目で追うのが大変だ。最初は文字通り見守ろうと思ったが放っておくと強い魔獣に勝負を仕掛けていくので戦う敵を指示する。
やはりというか拘りが強くあまりにも自分より弱い魔獣だと戦ってくれないので一苦労だが既に敵を三体、いや丁度四体目を倒したところだ。
「上から降ってくるのが邪魔だな」
「というか狡いよね」
フィールドは横の制限はあるが縦、つまり高さの制限がない。だから空を飛べる魔物が有利なのだ。勿論上空でも戦闘は起こっているが、何人かの賢い生徒はその様な地の利を活かす。事実開幕早々上から一斉攻撃された。急いで防御壁で覆ったが間に合わなかった生徒が脱落した。とはいえエリーの属性は闇。反属性の光の攻撃には弱いからもしかしたらシュバルも何らかの怪我はしているのかもしれない。
「一掃するか」
シュバルの中心に魔力が広がって、切っ先を空に向けた光り輝く純白の楔が次々と出現し、その一つ一つに強い魔力が込められているのを感じる。狙われていない今が大きな魔法を使う好機だと思ったのだろう。魔法に込める強さに比例してチャージには時間がかかる。やがて幾つにも増えた楔が一斉に空に勢いよく打ち出されていく。
下から攻撃されるのは不意打ちだったのか、空高く飛んでいた闇の魔獣が次々と地面に落ちて戦闘不能になって消えていく。光の魔獣もダメージを負ったのか大きく旋回して体勢を立て直している。
そのありえない光景を茫然と眺めているとホイッスルが鳴る。どうやら今ので予選が終了したらしい。
小休止で戻ってきたシュバルを連れて、急いで人気のない木の陰に隠れる。大声にならないように声を荒げる。
「どうして闇の魔獣なのに光属性の魔法が使えるの!?」
さっきの放ったのは間違いなく光の魔法だ。魔力光の色が光属性のそれだったし、闇属性の召喚獣に大きなダメージを与えていた。反対に光属性の召喚獣は身体がよろめく程のダメージしか受けていなかった。闇属性の魔獣は本来なら闇属性の魔法しか使えないはず。光の魔法が使えるのはおかしいのだ。
「そういう仕様だ。」
「えええ。」
いや幾らなんでもその答えはないだろう。
「ちなみに闇の魔法は使えない」
「ええええぇぇぇ!!」
「これも仕様だ。私は特別仕様なんだ」
「闇属性なのよね?」
「……そうだ」
つまり変異体ということだろうか。そんなのってない。
というかだ。昨日今日で契約した魔獣が変異体(暫定)だということが先生に知れたら大変に面倒な事になるのではないだろうか。先生に相談するのは自分でこの子の事を調べてからでも遅くない。
「エリーまだ納得してないけど話は後!後半の試合ではエリーが代わりに攻撃魔法を使うからシュバルは魔法を使わないで」
鞄に常備している闇属性用の魔力増強薬のフタを抜き、瓶を一気に傾けて試験に戻った。
意気込んだのは良かったが人間と魔獣の魔力の壁は厚く二戦目で降参することとなった。まあ点数はそれなりに稼いだから良しとする。ちなみに優勝は予選から猛威を振るいまくったバジリスクだ。能力もさることながらまず身体の大きさがずるい。
魔力をたくさん使ったらお腹が空いた。早く昼御飯を食べたい。
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