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「まず、この部活の活動内容がはっきりとしていないんだよ。黒部は知っているか? この部活の内容を」
黒部はポケットから何か紙切れを取り出した、よく見るとそれにはFT部概要と書かれていた。
「ん? なんだその紙は?」
「利根センパイ、これは去年文化祭で配っていたじゃないですか」
あぁと、確かそうだっけ?
「何納得した顔してんのよ、あんた文化祭の準備から当日までクラスの方に行っていて企画すらも知らないじゃない」
‟確かそうだっけ?”とはてながつくわけだ。
そうだった。クラスの文化祭は委員会に入っていたわけでもないのに企画の立案、統率、作成から片付けまで中心になってやっていたからこっちに顔を出す暇すらなかったんだった。
「大良はクラスやってたから人員が足りなくってさ、部活にばっかりでてたらクラスに居づらい空気になったんだぜ」
最上すらうなずいている。
クラスどころか学年の人気者がそうなるとはにわかには信じがたいが。
「それは、悪いことをしたと思うよ。だけどそれやって成果があったかどうかといったらこの結果じゃないか」
最上が「フッ」と鼻で笑う。
「悔しいけどそれもそうね、黒部ちゃんだってまだ入部届もらってないから実は帰宅部だし」
「あれ? そうだったっけ?」
「そうです! 不肖、黒部愛花はまだ部活はどこにも所属しておりません!」
「そうだったか、でもそろそろ入部してみない?」
「しません! 多分、どこにも所属はしないと思います」
そんな風に言われると一年生が入りそうな気は全くしなくなる。
「どこも引っ張りだこな人材だと思うんだけどな」
「それでも言えることがあるとしたら、唯一仮入部でいいと私が思ったということは誇ってもいいと思いますよ、利根センパイ」
「あぁ、そりゃどうも」
横目でこっちを見ながら最上が机の端に乗っていたB5サイズのアンケート用紙数枚を手に取った。
「それにしてもこの学校でまともに答えてくれる人なんていないのかしら、このアンケート」
自分たちで探すのを面倒がった先輩たちが考えたのがアンケートをするだったのだが、そもそもこの部ができた時から端にいた部活にまともな答えが返ってくることはなく、一部の生徒たちが愚痴の吐き捨て場にしているかダジャレを書かれるかでこの作戦が成功したことは一度もない。
「そもそも、最近起こった不思議なことは何ですか? なんて聞いてまともに答える方が少ないんじゃないか?」
あきれた様子で見ていた最上が目を見開いた。
「あっ! この話面白いわよ、読んでみてよ荒川君」
「どうしたんだ? ......おぉ、こりゃ面白いな」
「見せてくれたっていいじゃないかよ、珍回答する奴も貴重だし」
アンケート用紙を見てみるとそこには几帳面そうな字でまともな文が書かれていた。
『学年 名前
3年 黒井瞳
最近起こった不思議なこと
私は最近いわゆる幽霊が見えています、見えちゃっています。
幽霊なんて不可思議追及部しかないと思い、相談したいと思いました。』
「......。これ本当じゃない? マジな奴じゃない?」
黒部もアンケートを見ていたが、一瞬顔が曇り、考え込んだような顔をした。
「どうしたんだ? 黒部、なんか気になることでも?」
急に声をかけられて驚いたのか、ぴくっと反応をした。
「はいっ、あぁいえ......何でもないです、うん。この幽霊話私も本当だと思いますよ」
やっぱりおかしい、話し方に変な間ができている。ここはあえてそのままにしてみるのもアリか。
なぜか今日見た夢が思い出した方がいい予感がする。何を見たのだろうか、まったく思い出せそうにもないが。
「そっか、いやぁ黒部も本当だと思うということは期待は本当に大だな」
次に荒川が何かに気づいたらしい。
「この名前どこかで見たことあるなぁって思ったけど、そうだった、委員会に入ってるよ、保健委員だったかな?」
「荒川くんは生徒会の人間だものね、名前を憶えているなんてすごいわね。それじゃあ、明日その人を探して相談に乗ってみましょう」
うーん、荒川がいれば黒井さんは見つかると思うし俺と黒部の必要性なくはないか? 部員候補探しなんてやりたくなんかないけど、どうしたもんか。
「利根と黒部ちゃんは新入生をぱっぱと捕まえてきてちょうだいね、ワックワクとドッキドキが大好きそうな輝いている一年生よっ!」
......。心で思っていたことをいざ言われてみるとこんなにムカッとするもんなんだなぁ、勉強になったと思えばいいのか諦めるのがいいのか。
「カッコいい利根センパイ! 部員探しに関しては絶対的信頼をおいているし頼りにしていますから頑張ってくださいねっ」
「いやっ二人で頑張るんだよ!」
FT部はギリギリ?活動中!! 神奈川県人 @local0
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