第12話
- 第12章 -
「先生!甲本先生!学年一位取りました!」
先生も目を見開いて驚いていた。
「すごいわねぇ。まさかあなたが取るなんて。人間やればできるもんねぇ」
「ところで先生、舞さんはまだ来てないですか?」
「明日当番でしょ?今日は来てないけど明日なら会えるんじゃない?」
明日なんて、待ちきれない。この想い、一分でも一秒でも早く口にして彼女に伝えたかった。
「まあ、彼女にもお世話になったでしょうから、色々思うところはあるでしょうけど、そう焦らない、焦らない。今日は京都の親戚がお茶を送ってくれたから飲む?」
「もちろんです」
俺ははやる気持ちを抑えながら先生にお茶をご馳走になった。
なんて言って舞に告白しようか。
「好きです」
ではありふれている。じゃあ
「付き合ってください」
か?でもそれでも彼女にも想いを伝えるのには物足りない。いっそのこと、
「一生俺のそばにいてください」
なんてのもいいかもしれない。いや、まだ早いか。なんてたわいのないことをお茶を飲みながら考えていたものだから、思わずニヤニヤした表情を浮かべてしまい。先生は不思議そうな顔で僕のことを見つめていた。
その夜、俺はぼーっとスマホを見ながら舞のことを考えていた。学年一位を取ったことを、ラインで伝えていいのか。否か。この結果をいち早く伝えたい気持ちと、口で直接言ってから告白したい気持ちの両方があった。ああ、舞、早く会いたい。彼女のラインのアイコンの青い朝顔の水彩画をじっと見ながら、舞のことばかり考えていた。
そういえば、もうそろそろ朝顔が咲いでもおかしくない。確か舞に借りた本に七月には咲くとあった。期末考査も終わり、もうあと一週間もすれば湿っぽい季節が終わる。夏が来る。そして甲本先生の青い朝顔も咲くだろう。俺は不意にこんなことを思い出した。
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