第9話

- 第9章 -

「どうしたの、啓介君。急に張り切り出したね」

俺は朝から図書館で黄チャートを広げ、数学に打ち込んでいた。

「先生、次のテストは学年一位とりますから!」

「そんな急に無理でしょ」

「いいえ、俺はやります!やってやりますよ!」

いつもと違う様子に先生は心底驚いていた。

昨日、あの後俺は思うまま泣いた後、舞と約束を交わした。

「先輩、勉強頑張りましょうね」

「勿論だ。ただ、舞、ひとつだけ俺と約束してくれないか?」

「いいですよ?なんですか?」

「俺がもし次のテストで学年一位取れたら、俺の頼みを聞いてくれ」

「頼み、ですか?」

「そうだ、聞いてくれるか?」

「わかりました!私にできることなら!」

俺は、このために、毎日毎日、寝る間も惜しんで勉強した。当然授業もサボらずにちゃんと出席した。

「お前、どうかしたのか?」

「頼む、ここ教えてくれ!」

「まあ、いいけど」

麟太郎に土下座もして、勉強を教えてもらったりした。

そして迎えた期末考査。俺の勉強の成果なのか、比類なきまでに完璧に回答用紙を埋めることができた。あとは、返却を待つだけだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る