第29話 5−7

「<カミーラ>! 助けに来たぞっ!!」

「ええい、いい加減まだそんなことをほざいているのかこのハイブリッド・ヒューマンとやらは!」

「何度でも言うさ! 助けるまではな!」

「フン! お主に救われたくもないわっ! それよりこいつらにやられないように気をつけるんじゃな!」

 優人とカミーラは空中で交差しながら通信回線でそんなことを罵り合う。優人はカミーラから返す刀で重力刃を投げつけられそれを間一髪で交わす。

 戦うべき敵はカミーラだけではなかった。アリステラ社がカミーラSpを破壊するために派遣した量産型カミーラの一機が優人へと突撃してくる。その量産型カミーラは巨大な飛行ユニットに包まれるような形で装備し、両脇に巨大な砲塔のような長いアームを装備している。翼で空を飛ぶというよりは強力なジェットエンジンで強引に空に浮いているといった風情だ。

 量産型カミーラはレーザーを優人に向けて乱射する。

「ちいっ!」

優人はプラズマジェットと体のひねりなどで回避。突進してくる量産型を避ける。量産型カミーラはそのままアームを展開、カミーラSpに向かって突進する。

カミーラSpは重力刃を投擲。そのまま量産型に命中……。したかと思われたが、開いたアームに展開した特殊フィールドによって阻まれる。

{!?}

 カミーラは即座に回避を選択するが間に合わない。そのままフィールドに激突し、包まれ、アームに捕まえられる。そして量産型はそのまま握りつぶそうとする。

「まずい!」

 優人はそう叫ぶと自身を加速させ、量産型のそばへ行くと。

「このっ!」

 アーム基部に向かってプラズマビームを発射した。

じわっ、とビームによりアーム基部が溶ける。それにより戒めが解けたカミーラは重力スタスターを全開。アームを引き剥がすようにして離れた。

 カミーラ量産型は怒りの表情を見せ、後部のマイクロミサイルを優人に向けてゼロ距離に近いこの場所で撃とうとした。その時。

 突然飛行ユニットがぐにゃっと折れ曲がり、寸断された。何が置きたのかわからないというような呆然とした顔で、推力を失ったカミーラ量産型は真っ逆さまに落下していった。

 優人が振り返ると降下していく影があった。人工眼で追うとそれは<エクスセイバー>を装備したユイリーだった。耳元に通信が入る。

「ご注意くださいませ、ご主人さま」

 ユイリーは一旦降下した後また上昇機動に移り、次の敵に向かって迎撃行動を取る。これで残り三機。彼女を追って自分も上昇し始めた優人の耳に、ユイリーとは別の艷やかな声が響く。

「ふん……。お礼だけは言っておく」

「そんなに冷たくしなくてもさぁ」

「まあそれはよい。しかし、我が何をしているか忘れたか? 我は今我の電子戦機能で下界のオートマタを操っているのじゃぞ?」

「それももちろん織り込み済みだ。お前をぎゃふんと言わせてやる」

「ほう、どうやってだ?」

 嘲るような問いに、優人はニヤリと笑い、自信たっぷりな声でこう告げた。

「こうするんだよ1 ……ユイリー、各<サウンドメイカー>をネットワーク接続。戦略出力で稼働開始!!」

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る