第24話 5−2
「ご主人さま、その姿似合っておりますね」
「そうかぁ〜? まっ、俺ぐらいになれば何でも似合うとは思うけどなっ」
「そのアーマードスーツは脱着不可能ですけどね」
「おい本当かそれ!?」
「嘘ですよ。ご主人さま」
「まったく、こんな時に嘘をつかないでほしいね」
「リラックスですよ、リラックス」
「もうちょっと優しいリラックスの方法のほうが良いんだけどな……」
ここはシノシェア日本本社社屋外駐車場。社員やゲストなどが車などを止める場所である。
普段なら自動運転の乗用車やトラックなどが止まるこの駐車場であるが、現在は様相が異なっていた。無骨な形で都市に溶け込むような色合いの軍用車両でひしめいていたからだ。
無論、これらの車両は正規軍のものではなく、シノシェア社グループ傘下のPMSCが所有しているものであった。私兵のものとはいえ、その量と種類の多さは、目を見張る物があった。
そんな軍用車両の間に優人とユイリーは立っていた。ユイリーは全身に防弾防光学兵器軍用アーマーを着込み、普段の美しいプロポーションを銀色の鎧で覆っていた。
一方優人の方も、全身にアーマーを装備した状態になっていた。こちらは全身青と白の二色を基調としたアーマーだ。最初は朱と金にしようと優人は主張したがユイリーの、
「某鋼鉄な男とカラーがかぶるじゃないですか。デザインもなんとなく似ていますし、よしたほうがいいですよ」
と言われ、泣く泣く断念したのであった。
優人はそんな自分用のアーマーの手足を何度か動かすと、
「ここについてからラボで大急ぎで作ったにしては上出来じゃないか、この体は。お前の<ビルドクラフター>とここのラボ自動工場の性能は素晴らしいな」
「どういたしまして、ご主人さま」
そう応えてユイリーは微笑った。
それからあたりを見ると優人は少し不思議そうな表情であたりを見た。
「ところで……。 ブリーフィングの時に<カミーラ>を発見し次第、第一部隊を発見空域へ送るって言っていたんだけど、一体……」
その時だった。
近くを飛んでいたスピーカードローンから管制AIの警報が鳴り響いた。
「全社員と作戦オペレータに告ぐ。ターゲットワン<カミーラ>を発見。繰り返す。<カミーラ>を発見。担当オペレータは直ちに第一部隊指揮車前へ集合せよ」
「急ごう」
「ええ」
二人が頷きあうと、歩を急いだ。第一部隊の指揮車は程なく見つかった。そこには、作戦に参加する第一部隊所属のオートマタが揃っていた。皆アーマーを着込んでいる。
「全員揃ったな」第一部隊を指揮するPMSCオペレータが優人たちを見るとうなずいた。
「作戦参加オートマタは飛行デバイスを装備し、上空へ出撃せよ。指定された機体はユイリーのデバイスを懸架して輸送。上空でユイリーの操作で起動させる。情報戦で制圧し、できることなら捕獲して帰還せよ。無理はするな。では、出撃せよ!」
「了解!」
優人はガールズギアが向かう方を見た。その視線の先に、コックピットのない超小型の飛行機という風貌の機体が何機か並んでいた。垂直離着陸式のそれは、オートマタ(ガールズギア・ボーイズギア)の飛行用デバイスで、背中にそれを装着することによって飛行を可能にするのだ。彼はそれを見て、
「俺もあれをつけて飛ぶんですか?」
と指揮官に問うた。しかし、サングラスをつけた指揮官は横に首を振って、
「いいや、君にはアレで空を飛んでもらう」
と、飛行デバイスが駐機している方とは反対側の方を見た。
そこには、巨大な大砲のような車両が駐機していた。
「アレ……、なんですか?」
優人は背中に僅かな悪寒を覚えながら指揮官に質問した。
すると、指揮官はにやりと笑い、応えた。
「あれは、オートマタ高速戦地投入システム、通称<人間大砲>だ。原理は簡単で、アレ自体が電磁式のカタパルトになっている。あのカタパルトの中にオートマタを入れ、カタパルトで射出することによりオートマタの迅速な戦地投入を──」
「ちょっと待ってください!? 俺、そもそも空を飛べるんですけど!? 自力で空飛べるんだからあんな人間大砲なんて必要ないんですけどぉ!?」
「空を飛べるからアレを使うんじゃないか。カタパルトにより空中に射出し、その上でプラズマジェットで推進すれば君の戦地投入はかなり早まるぞ」
「だからといって人間大砲扱いはひどいじゃないですかぁ!? 俺は一足先にとば……」
「おっとそうはいかん」
次の瞬間、優人のそれぞれの腕を、二体のオートマタがガシッ! と力強く掴んだ。そしてそのまま持ち上げると人間大砲……、いや、オートマタ高速戦地投入システムの方へと連行する。
「なにしてんのオイッ! 何持ち上げて、なんで俺連れてかれんの!?」
優人は喚き散らすが二体のオートマタは微塵もせず彼を連行していく。
「俺空飛べるっちゅうに!!」
そう叫ぶ優人の後ろ姿と声が小さくなっていくのを眺めながら、第一部隊指揮官は魔神の笑い袋のように爆笑していた。
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