第23話 5−1

「部隊と作戦の主目的は主に四つに分かれる」

 シノシェアグループのPMSCに所属する元米軍佐官がシノシェア東京本社第一会議室壁面に表示されている地図を見ながら説明した。

「第一部隊は<カミーラ>制圧部隊だ。これは主に空中機動ドローンで構成され、首都上空で電子攻撃を行い、オートマタをゾンビ化させている<カミーラ>を制圧する」

 その言葉にユイリーがうなずいた。

「次に第二部隊は<メーテール>制圧部隊だ。<エラスティス>の情報提供により首都内のアリステラ社日本本社に存在しているHAI<メーテール>を制圧するのが目的だ。これは主に情報戦部隊が担当する」

 今度は<エラスティス>が小さく、コクッ、とうなずいた。

「第三部隊は都内で暴走している<カミーラ>支配下のゾンビオートマタ制圧部隊だ。なお、日本防衛陸軍も防衛出動により各基地を出発し、都内へ向かっている。よって第三部隊はシノシェア日本本社に向かってくる暴走オートマタの進行を停止させるだけでいい。相手の数は多いから無理は禁物だ」

 アヤネが今度はうなずく番だった。

「最後に、第四部隊は第一から第三部隊の支援を担当する支援部隊だ。これには支援部隊の護衛部隊も含まれる。……以上だ。質問は? ……ないな。ブリーフィングはこれで終了する。解散!」

 その言葉に会議室にいた男女が、自分の役割を果たすべく忙しく動き出した。このような訓練は常時行っているらしく、手慣れた動きだった。

 ユイリー、アヤネ、<エラスティス>の三人はそれぞれ所属する部隊の元へ散っていった。それを見て優人も動き出そうとしたときである。

「優人」

 呼び止めたのは猫山美也子であった。可愛らしい猫のような姿をした可憐な少女は、幼馴染を呼び止めると、寂しそうにこう告げた。

「優人……、死なないでね……」

 そう言うと彼女は手を伸ばし、彼の服の袖をつまんで引っ張った。それが彼女にできることの精一杯のことのように。

 それを知ってか知らずか、優人は満面の笑みで、

「だーいじょうぶだよ! 俺さ、必ず帰ってくるって! 俺は、不死身なんだぜ?」

 そう笑い、

「じゃ、行ってくるからな」

 そう言うと、彼女の頭を優しく撫で、それから美也子のそばから離れ、小走りに会議室の出口へと向かっていった。

 美也子は手の形を袖を掴んだ形にしたまま、

「ばか……」

 相違小さくつぶやいて、近くにあった椅子に座り、それから机に突っ伏して、泣いた。


 それに気づいたものは誰もいなかった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る