第7話 2−4
一方その頃。
「ふえ〜ん! 優人―! 早く来てぇ〜!!」
猫山美也子は自動運転高級セダンの後部座席で絶叫していた。
高級セダンはカミーラに操られたゾンビ化オートマタ群に取り囲まれ、絶体絶命の危機に追い詰められていたのだ。
一応、周りにはオートマタ輸送用走行ドローンから下車した優人の家付きメイドガールズギアたちが得物を振るい、ゾンビたちを追い払っていたが、相手の数が多すぎて対処しきれない。
ゾンビたちとの格闘でメイド達の服もところどころ破け、保湿力を持った人工肌が顕になり、やけに色っぽい姿になっている。
当の彼女らにとっては、気にしていられない状態であったが。
その激戦の様子を車内から眺めていた美也子であったが、
「もう、ダメかも……」
と悲観的な青ざめた顔になり、ときおり揺れる車のシートで震えていた。
「ねえ! 車動かしましょうよ! 強引に突破しちゃえば……」
「駄目です。敵ドローンが取り囲んでおり、突破しようとしたところを狙われる可能性があります。現時点ではこのまま待機するほうが安全です」
「でも……」
前部座席に乗っている優人の家のメイドオートマタの一人の返事に、美也子は納得できない表情で応えた。
このままじゃ、やられちゃうんじゃないかしら。
そう、思ったときである!
突然甲高い射撃音がしたその直後、幾重にも取り囲んだゾンビオートマタ達の一角が、一斉に倒れた。何体かのゾンビがそれに気が付き振り向いた直後、彼らが大きななにかに薙ぎ払われて、空中へとチリのように舞い上がる。
美也子は最初それが、戻ってきた優人やユイリーだと思った。
しかしそのゾンビオートマタが次々と薙ぎ払われ、代わりにそこに現れたのは、装甲を身につけ、武器を手にしたガールズギアだった。
何体もの銃や剣や盾などを装備した、青と白に統一されたカラーリングのガールズギアたちは優人の高級セダンの周りを囲むと、まだ活動しているゾンビたちに向かって射撃をしたり、武器を奮ったりする。
美也子があの子達、どこかで見たことあるような……、と首を傾げたときであった。
「あー、ミャーコ=サン、大丈夫ですか?」
車に備え付けられたカーステレオのスピーカーから人間によく似た、しかし人工的な少女の声が聞こえた。
その、突然言われた自分のあだ名に腹がたち、
「ミャーコっていうなぁ!」
と叫んだミャーコであったが、その後すぐ、
「あ、あなた誰?」
とキョトンとした顔で問う。
その問いにわからないかなあ、というような声色で、
「わたしですよ。ア・ヤ・ネ。
と笑いを含んだ声で車の外にいるガールズギアの一体が答えた。
同時に、後部座席前のホログラフィックスクリーンに少女の顔が表示される。
間違いない。優人が所有しているオートマタ意識OSの一人、アヤネのアバターだ。
「あ、アヤネ。でもなんであなたが」
「聞いてなかったんですか、マスターが自分の家からaスポーツ用のガールズギア躯体を持ってくるようにって言ったこと。わたし達は躯体に人格OSを接続して操作しているんです。それでもってマスターの応援に来たんですよ」
「あー、あ……。ありがと……」
そう彼女から説明されて、美也子は緊張から一気に解き放たれ、体から力が抜けるとシートに一気にへたりこんだ。あまりにも力が抜けすぎて、小便を漏らしそうになったが、そこはさすがに我慢する。
「さあ、今のうちにここから離れましょう。優人様たちはあとで追いつくはずです」
前部座席のメイドガールズギアがそういうなり、水素エンジンと電気モーターの駆動音が車内に響き、車内が一つ揺れたかと思うと一気に動き出した。
そして景色が急激に回る。Uターンをしているのだ。前方では優人たちが戦闘を行っているので、別のルートへ逃げようというのだ。
美也子はシートに深々と身をあずけると顔を天井に向け、ふぅぅ〜、と深々と息を吐き出した。
そして、一言呟いた。
くそっ、こうなったらとことん付き合ってやるんだから。
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