第7話 兵は詭道
「ダメだ~ ! このお姉さん、武士道とは死ぬことと見つけちゃってるよ~ ! 」
『彼女がいる世界はこの地球と同じ時間ではありません。私の能力で時空を超えてつながっていますので。よってこちらでしばらく作戦を立ててから、彼女に指示を出しましょう。マルガリータの感覚では一秒も過ぎていないはずです。先ほど言ったようにシミュレーションゲームのように考えてください』
そんな詩にかまうことなく、リングは音声を発する。
「作戦か……。ゲームだったら戦場のマップとか相手の軍勢とかが見れるんだろうけど……」
『見れますよ』
その音声とともに、テレビ画面は山道を映す航空写真となり、その
「うわ~ ! 本当にゲームの画面みたい~ ! 」
「……偵察衛星みたいなもんだな。こんな剣とか弓で戦うような世界でこれだけ敵の動きが丸見えだったら確かに有利だ。『軍神の加護』って言うだけのことはあるな……」
夕夏が難しい顔で腕を組んだ。
『赤い凸マークが敵の軍勢です。凸マークの上に表示されている数字が兵数ですね。 5 部隊で兵数は合計 15000 弱です。ほとんどが歩兵です』
「え~ ! こっちは 1000 人しかいないのに~ ! 絶対無理だよ~ ! 今から戦国時代にタイムスリップして関ケ原で石田三成に勝たせる方がまだ可能性があるよ~ ! 」
「いや、それも無理だろ…… ! 」
「大丈夫だよ~。ずっと小早川秀明の傍にいて、裏切りそうになったら刺せばいいんだよ~ ! 」
「恐いこと言うな ! 」
「え~ ? 裏切るなって釘を刺すだけだよ~」
きょとんとする詩に、何とも言えない表情の夕夏。
状況はこれ以上なく非日常的なのに、二人はいつも通りのやり取りだった。
『別にこの 15000 の兵を全て倒す必要はありませんよ。今回の勝利条件は敵の大将を倒すことです。そうすれば魔族の軍勢は総崩れとなりますから』
「……どういうことだ ? 」
『低級な魔族は兵隊として機能するほどの知能を持ち合わせていないのです。それを上級魔族が無理やりに支配して駒のように動かしているから、軍隊として成り立っているのです。今回の歩兵は全て低級魔族ですから、大将の上級魔族を倒せば、自然と軍は瓦解するというわけです』
「……将棋のプロに将棋で挑んで王将を取りにいくよりも、相手のプロ棋士を
「夕夏ちゃんの言ってることの方がよっぽど怖いんだけど~」
詩は大げさに肩をすくめて、怖がっている風に装う。
そんな詩を見て、夕夏は苦笑した。
『ともかく、まずは打って出るか、籠城するかを決めてください。そして打って出るならどこに布陣するかを決めてください』
「どうしよう~ ? まともにぶつかっても勝てるわけないよ~。籠城する~ ? 」
詩が不安そうな顔で夕夏を見つめる。
「ダメだ。籠城してたって相手の大将を討てる気がしない……かといってまともに当たってもダメなら……奇襲しかないな」
「兵は
「……そんなことを思いつくのはこの世界でも上位 1 %に入る悪人だけだよ。むしろ詩がそんなことをやってたら付き合いを考え直すぞ……」
スマホで検索したばかりの「兵法」知識を披露する詩をじっとりとした目で夕夏は睨む。
「とにかく奇襲するならどこかに隠れてなきゃ~。リングさん、敵の大将の位置と奇襲にいい場所ってある~ ? 」
『敵大将の位置は把握しています。奇襲場所は……少々お待ちください……。見つけました。ただし急斜面の上から駆け下りて奇襲をかけることになりますので、鎧を脱がなくてはなりませんし、兵数も 100 人以上だと気づかれる可能性があります。ここに布陣しますか ? 』
テレビ画面はほとんど V 字に見える谷を映していた。
「……こんな狭い道なら……横から当たれば大将を囲んで護る兵も少ないはずだな.
。よし、ここにしよう」
「そうだね~。後は連れて行く精鋭 100 人を選ばないと~。リングさん、兵士の強さは見れるの~ ? 」
『兵士一人一人のステータスまでは見ることはできませんが、それほど差異はありません。その代わり副官のステータスは見れますよ。今回の場合は先ほどマルガリータと会話していたベニャトとロドリゴの二人ですね』
「あの嫌味そうなオッサンと熱血っぽい青年か……」
そして画面は二人のステータスを映し出す。
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