第30話

あれから特に問題は起きずに、魔物に追い掛け回されたれていた異邦人とも出会わず、無事に森を出ることが出来た。

何せ悲鳴が聞こえてきたら、私は適当な木の陰に隠れていたからね!

むしろ、隠れていない状態のトアを見て回れ右して逃げていったのには笑えたね。


追いかけ回されていた人は、あれからどうするつもりなのだろうか?

最後は結局死に戻りする事になるのではなかろうか?

どうせ死に戻りするなら適当に敵を間引きながら逃げればいいのに。

MPが無くなってしまったのだろうか?・・・私が考える事でも無いな。


まぁ、森から無事に出られたし、草原なら適当に走れば逃げ切れる程度の魔物しかいないから、多少気を抜いて行動することが出来るね。

尤も、今日はもう街に帰る予定なのだけれどね。


◇◇◇


うん。簡易ステータスを表示しながら適当に走ってみたけれど、一定の速度以下で走る分にはSPの消費が0になるようだ。そのおかげで走り続けても肉体的な疲労は一切ない・・・精神的な疲労はそれなりにあったが。まぁ、なんていうか戦闘もせず走っているだけだと、マラソンでもやっている気分になる。


ん~、SPの数値は変化していないだけで実際は微量減少しているのだろうか?

もしかして魔法なんかでも、微量MPを消費し続ける分には実質消費MP0

で運用できるのでは!?これって、割とすごい情報じゃない!?


・・・後日知ったことだが、消費MP0の魔法は総じて〈生活魔法〉と呼ぶそうだ。アディにどや顔で予想した内容を説明したら、鼻で笑われながら教えられた。



街に帰るまでの時間が、予想より大分早まったのは嬉しい誤算だ。

今後は長距離移動の時はSPが減少しない程度の速度で走ることにしよう。


・・・街中でのダッシュは迷惑防止法条例違反で捕まり次第軽度の罰金刑が下されるそうだ。異邦人の場合ログアウトで逃げ切った際は、再度ログインの時は牢獄から始まり、一定時間の拘束と重度の罰金刑へと罰が重くなるらしい。

後に掲示板の住人達が大勢ログアウトで逃げ切ったせいで、街の税収が一時爆発的に増えたとかなんとか。



それにしても、草原の敵が少ないように感じるんだが、気のせいだろうか?

もしかして、トアが森から出て狩りをしたのだろうか?


先程の追い掛けられている異邦人は、草原からトレインしていたのだろうか?

・・・まさかね・・・・・・大暴走スタンピードの引き金になったりしないよね?


トアは普段よりも警戒しているようだが、私が知覚できる範囲にはゴブリンしか見えないし、何かしらの大きな魔力反応も感じない。

・・・今更だが、走りながらでも〈魔力感知〉が出来るようになっていたのは自分でも驚きだ。〈魔力感知〉を行う際、今までは集中しながら出なければできなかったはずなのだが、〈魔力操作〉が上昇したことが影響しているのだろうか?


眼を閉じない状態で〈魔力感知〉を行うと、地面が微妙に魔力を発しているのがよくわかる。ゴブリンは体の各所から動くたびに魔力がこぼれている。トアの場合は魔力の流れが非常に滑らかで、走りながらでも殆ど魔力がこぼれていない。


ふむ?私自身を同じように見てみると、ゴブリンよりはマシだが、やはり動くたびに魔力が各所からこぼれている。・・・主よりトアの方が優秀なようだ。


トアを見ながら自分の魔力がこぼれないよう意識して走ってみるが中々に難しい。

む~??トアは〈魔力操作〉を持っていなかったはずだよね?ならば、行動しながら魔力がこぼれないのは、〈魔力操作〉に頼らない技術なのだろうか?


〈魔力操作〉に意識を向け過ぎたせいで、偶に転んでトアに呆れられている。

む~。やはり難しい。転ぶたびに近くにいたゴブリンが、私を指差して笑ってくるのが腹立つ。誰だそんな行動を教えたのは!・・・まぁ苛立ち紛れに〈エナジーボルト〉で処すのですけれど、ね?


偶に転ぶせいで進行速度が大分落ち込んでしまっている気がする。

・・・街に戻ってから練習するべきだろうか?


・・・

・・・・

・・・・・


・・・あれ?今更だが、なんで走りながら〈魔力操作〉を練習していたのだろうか?最初はゆっくり動きながら練習すればいいのでは?

うん。練習は街に戻ってからにしよう。


・・・決してゴブリンに嘲笑されながら練習するのが嫌だからという理由ではないんだよ?ホントウダヨ?(´・ω・`)


〈魔力操作〉の練習をやめて走り始めると、先程と同じように走っているはずなのだが、私の走る速度が若干速くなった気がする。・・・気のせいだろうか?


それにしてもトアは未だに警戒しているが、一体何を警戒しているのだろうか?

・・・主が間抜けなのを知られないように、警戒しているとか言われたら泣ける。

まさか違うよね?魔物を警戒しているんだよね?


( ´Д`)=3 フゥ―眷属が優秀過ぎるせいで、こんな悩みを持つとは思わなかったよ。

贅沢な悩みだよね~・・・なんてね!もしかしなくても、こんな思考をしているから主としてダメなのでは?・・・まさかね!


下らないことを考えながら走っていたら、遂に街の門が見えてきた。

・・・ん~???見間違いだろうか?

南門から出たはずなのに、今見えている門は街壁の形からして、西門では?

あれ?何時からマップを見ないで走っていたのだろうか?


何時から(´・ω・`)?

さぁ(´・ω・`)?


・・・素で地図を読み間違えた阿呆がいるとか本当ですか~!?

何故だろう。自分で自分を煽ったつもりが、滅茶苦茶に腹が立つのは。


え?ホントに?自分で言うのもなんだが、今まで行ったことのある範囲しかマップに表示されていなかったにもかかわらず、まさかのマップを読み違えた、のか?


マップを読み違えたのは、転んだのが悪い。ということでは駄目だろうか?

・・・ダメですよね。


まぁ、西門からでも入れるだろうから問題はない・・・と思いたい。

なんか馬車が並んでいるのだが、入るまで結構時間がかかるのだろうか?

・・・時間がかかりそうなら、南門から入り直そうか。


「止まれ!そこで止まれ!次は確実に仕留めるぞ!?」

馬車が並んでいる付近まで走って近づいて行ったら弓で攻撃された。

・・・何故?慌ててそこで止まるが、トアは既に狩りの姿勢に入っている。

「トア、まって、動かないで」

・・・トアに横眼で睨まれた。怖い


「あ「黙れ!そこの従魔も決して動かすなよ!?」

話掛けようとしたら怒られたのだが・・・?

どうしたらいいのだろうか?


「貴様、誰の指図で私達を襲おうとした!?」

・・・え?

「答えろ!」

「馬車が並んでいたので、最後尾に並ぼうと思ったのですが・・・?」

全身鎧で顔が見えないが、声からして男性だと思われる。


「ふざけるなぁ!!そんな虚言が通ると思っているのかぁ!」

「いや、ほんとに並ぼうと思っただけなのですが・・・?」

・・・何故ここまで怒られているのだろうか?


「貴様の様な冒険者見習いの格好をした貴族がいるかぁ!!!」

・・・ふぁ?何故貴族?

「私は貴族じゃないですよ!?冒険者です!」

「そんなの格好を見ればわかるわ!!馬鹿にしているのか!!」

えぇ~、なんて答えればいいのさ?


そんなやり取りをしていたら、門から衛兵さんが10人程近づいてきた。

「失礼、拘束する。抵抗は無駄だ。大人しく捕まれ」

あれ?なんで?なんで私が捕まるの?

跪かせる様に膝に蹴り上げ、頭を押さえ両手を後ろに回された。


ガチャン


ふぇ?手錠まで?

・・・〈魔力感知〉が使えなくなったのだが、スキルが阻害されているのか?


「ちっ。誰の指図で動いたのか徹底的に調べ上げろ。いいな!」

「はっ!それでは失礼いたします」


全身鎧の人はそのまま馬車の方へ戻って行ったが、私は衛兵さんに引っ張られながら門の脇の詰め所に連れていかれ、外の見える部屋で取り調べの為に座らされた。


外素見てみると、トアは・・・あれ?威嚇状態のせいで、衛兵さん完全武装状態で殺そうとしてない?不味い!このまま戦闘になったら、多分トアが死ぬかも。


私の正面にいた衛兵の男性が私に詰め寄ってきた。

「従魔を早く大人しくさせろ!」

「トア!威嚇しないで大人しくしてて!」

私の方を向いてから、フイっと拒絶してきた。

えぇ~・・・言うこと聞いてくれないの!?こんな時に反抗期!?


「ちっ!大人しくさせることが出来ないのならば殺処分するぞ!」

「待ってください!トア!お願い!大人しくしてて!」

渋々威嚇状態を収めてくれた。


「まぁいいでしょう。それで?何故先程の馬車を襲おうとした?」

「馬車が並んでいたので、門をくぐる順番待ちだと思い、その後ろに並ぼうとしただけです」

「は?あなた冒険者ですよね??」

「え?貴族用通路?」

「はぁ~。そこからですか。とりあえず身分証を出してください」

手からギルドカードを出そうとするが、何故か出せない。


「あの~・・・ギルドカードが出ないんですが、どうすればいいのでしょう?」

「は?・・・あぁ。魔封じの手枷を付けてましたね。一時的に外すが、怪しい動きをしない様に。いいですね?」

念押しされた後手枷が外された。その瞬間〈魔力感知〉出来るようになった。

魔封じの手枷と外された代わりに手首を体の前で別の手枷で縛られた。

【魔封じの手枷】これがスキルが使えなくなった原因なのか。


ギルドカードでろっ!

っポロン

手の甲から何時もよりも心なしか勢いよくカードが飛び出た。

・・・なんで今日に限って、手の甲から出たのだろうか?


「おぉ~、出ました」

「確認します」

ギルドカードを机の上から拾い、よく店の会計の際に見る水晶に翳して、何かしら照会しているようだ。・・・会計を初めとして、何でそんなに多機能なの?


「確認が取れました。功罪及び称号にも不審なものはありませんでした。しかし、あ~・・・なるほど、冒険者の初心者ですね。しかも異邦人です」

カードを確認した人の発言で室内の緊張が緩む。


「なるほど。この世界では常識だから知っているものとばかり思っていたのだが、異邦人はまだギルドから説明を受けていないのか」

なんか勝手に納得された。行動が非常識だったのかな?


「功罪でも問題が無いようだし、悪意が無いのは分かった。とりあえず簡単に説明すると、・・・・・・・」

そう言って衛兵のおじさんが説明をしてくれた内容をまとめると、こんな感じ。


1:箱馬車に紋章が描かれていたら貴族だから近づかない様に!

2:冒険者の街の出入りはなるべく同じ門を使うこと!

3:抑々通行人は馬車とは通路が違うから、馬車の後ろに並ばない様に!


なるほど?つまり、私の行動は不審に過ぎたわけだ。


「今回は厳重注意だけで済ませておく。以後気を付けるように!特に、貴族がらみで問題を起こした場合には、拷問が前提になることが多い。近づかない様に!それと、衛兵に拘束されるときは抵抗しないようにね。無罪なら猶更だよ。いいね?」

「了解!」

良かった。抵抗しないで本当に良かった( ´ー`)フゥー...


「とりあえず今回の顛末は先程の貴族に報告しておく。以後気を付けるように!」

そう言い残して、私の手枷を外して街に入れてくれた。




NAME:伊舎那イザナ

RACE :ヒューマン《超越種》/26〈6〉

AGE:15 /15〈0〉

※能力制限中:5割減

※土の加護:VIT+35


Job:魔力使い/46〈1〉

Sab:薬士/48〈1〉

残JP〈58〉


HP:45 〈0〉 [+175]合計値:220

MP:760〈68〉 [+220]合計値:1,048

SP :80 〈20〉


STR /5   〈〉

VIT /5  〈〉[+35]

AGI /5   〈〉

DEX /12 〈4〉

INT /181 〈12〉+44

MID /12 〈4〉 

LUC /5 〈〉

残ステータスポイント〈18〉

スキル

Job

魔力系

〈魔力操作/39〉〈術/34〉〈魔力術/30〉

〈属性適正/27〉

〈火属性魔法/12〉〈水属性魔法/7〉〈風属性魔法/17〉〈土属性魔法/7〉

〈光属性魔法/7〉〈闇属性魔法/3〉〈無属性魔法/3〉

生産系

〈調合/15〉〈錬金/11〉

Status

〈器用強化/2〉〈知力強化/2〉〈精神強化〉

Common

〈採取/14〉〈植物知識/2〉〈鑑定/16〉〈識別/3〉

Unique

『扉』:〈放浪書店〉

『種族』:〈眷属創造〉〈王権〉


称号

〈術〉の入門者/2〈1〉:MPに〈術〉x10の追加補正

〈魔力〉の入門者/1〈1〉:MPに魔力系スキルx10の追加補正

〈火属性〉の入門者/1〈1〉:火属性使用時、消費MP:〈1〉減 

〈水属性〉の入門者/1〈1〉:水属性使用時、消費MP:〈1〉減 

〈風属性〉の入門者/1〈1〉:風属性使用時、消費MP:〈1〉減 

〈土属性〉の入門者/1〈1〉:土属性使用時、消費MP:〈1〉減 

〈光属性〉の入門者/1〈1〉:光属性使用時、消費MP:〈1〉減 

〈闇属性〉の入門者/1〈1〉:光属性使用時、消費MP:〈1〉減 

〈無属性〉の入門者/1〈1〉:光属性使用時、消費MP:〈1〉減 

〈魔法使い/見習い〉/1〈1〉:魔法スキル使用時、消費MP:〈1〉減

〈アドリアーナの弟子〉/1〈1〉:MPに+10補正

※消費MP:〈1〉以下にはならない


〈超越者〉/1〈1〉:〈種族能力・種族スキル〉解放 

 《成長の成約》:必要経験値固定。進化前種族値の必要経験値と等しくなる。

 《始祖の血脈》:眷属最大数増加。眷属〈成長・進化〉解放。

 《無欲の大罪》:自らに全能力値減少補正〈大〉/眷属の能力値上昇補正〈大〉

 《王権の起源》:眷属素材解放。眷属創造解放〈最大数=種族値に依存〉

 《無辺の願望》:眷属の数により、本人+眷属に補正。


眷属

ウルフ〈幼体〉/51〈0〉

HP :510〈255〉

MP:297〈144〉

SP :510〈255〉


STR /60 〈30〉 

VIT /54 〈27〉 

AGI /60 〈30〉 

DEX /54 〈27〉 

INT /33 〈16〉

MID /33 〈16〉 

LUC /33 〈16〉

残ステータスポイント〈36〉

スキル

肉体特性

〈牙〉〈爪〉

戦闘系

〈警戒〉〈索敵〉〈奇襲〉

称号

〈孤狼奮闘〉:SPに追加補正+回復補正〈敵数x0.01%〉 ※戦闘終了まで効果持続

〈孤狼の誇り〉:単体での出撃時、獲得経験値上昇

〈格上殺し〉:位階が格上の対象との戦闘時、追加補正〈位階差xステータス÷2〉

〈縦横無尽〉:対象を認識中、〈スキル・称号〉効果継続時間延長※最大SP÷10/分

〈幼狼の誇り〉:成長時、進化先に補正














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