第24話 〈帰還〉
さて、休憩は終了だ。
トアは私が立ち上がると、起こす間もなく起き上がり次へ行く構えを見せる。
次の部屋では、イレギュラーな相手が出ないことを祈るか。
・・・もしかして、前回の異常事態以降、今の敵クラスは普通なのか?
他の先導に従い、次の部屋への通路を進むが、何もない。
そう、何もないのだ。今までの通路では罠を避けながらトアが先導していたが、この通路に入ってからは一切罠を警戒していない。
罠が無いなら敵が出るのかと思いきや、敵も出現しない。
・・・更に強い敵が出るフラグじゃないよね?・・・ね!?
次の部屋まであっさりついてしまった。時間にして20分歩いた程度だろうか?
今までの通路よりも少し距離的には長い感じだろうか?
『6番目の部屋』の扉は、『1番目の部屋』と同じくボロボロに朽ちている。
・・・ふぁ?なんでこんなにボロなの?
まさかのここまで来て、敵の弱体化なのか・・・?
トアは特に警戒もせずに、前足で器用に扉を開けた。
次の瞬間・・・中にいた敵を一掃し終えていた。
一瞬で倒されてしまったため〈識別〉が出来なかった。
ちらりと見えた範囲では、どれも位階〈3〉程度だろうか。
先程までの位階〈5〉以上の敵はイレギュラーで間違いないかな。
前回よりも平均位階が上昇しているのかね?
この程度であれば、まだまだ余裕をもって対応できる範囲だが、トア強すぎない?
確かに補正込で能力値:90が2種あるけど、一応格上が相手なんだけど・・?
位階特性で、ダメージ半減されてるとは思えない威力だよね。
・・・まさか、位階〈3〉のスケルトンが弱いだけなのか?
位階〈3〉の討伐報酬は多くないとはいえ、1体:5,000Dだ。
今後の金策の為にも、目標は500万D貯めてDEX補正の指輪の購入!
1,000体も位階〈3〉の敵が残っているだろうか?
・・・位階〈6〉の敵の討伐報酬はいくらだっけ?
4万D!?やっす!さっきの強さが基準だと、全然割に合わないのでは?
うん。さっきの敵は勝手に自爆してくれたから無傷で勝てたけど、自爆してなかったら強敵のはず。あのクラスの敵と連戦はキツイ。
結局雑魚狩りが、一番効率がいいのでは?
・・・雑魚だけだと、トアしか見せ場が無いのが難点だね。
休憩もせずに、つらつらと下らないことを考えながら、次の部屋への通路を進む。
この通路でも罠は見つからない様だ。トアは多少警戒している様子を見せるものの、特に何も避ける様子もなく進んでいく。
もしかして、罠のない状態が正常なのか?
今までの例で考えると、通路に罠があると強敵が湧いている・・・のか?
『7番目の部屋』の扉も先程と同じで、ボロい。
やはり罠と扉の状態によって敵の強さが変わるのか?
トアが単騎で突っ込んでいって、一気に蹴散らした。
位階〈3〉までしか出なかったようだ。
・・・主の仕事が無いんだけど?
やはり眷属の能力値が強すぎる気がする。何か意味があるのだろうか?
『8番目の部屋』へ向かう通路も罠も無く扉はぼろい状態。
中にいたのも位階〈3〉以下のスケルトンだけだ。
あらかじめトアにお願いして、スケルトンを〈識別〉する余裕を持たせてもらったが、個体レベルが多少高いだけで、特に目新しい情報はなかった。
『9番目』『10番目』それぞれの部屋も同じだ。
通路に罠も無いし、敵は位階〈3〉以下しかいない。
しかし、『11番目の部屋』へ向かう通路は罠が多い様子だ。
先程からトアは、罠が設置されていると思われる場所を避けながら進んでいく。
罠の難易度的に、位階〈4~5〉といったところか?
扉が見えてきた。ん~。それなりに古い扉だ。
扉の前でトアに話しかける。
「トア、上位種は私が攻撃したら一気に仕留めてくれると嬉しいかな?」
「ウォフ」
うむ。接近されたらあっさり死んじゃうからね。
トアに合図を出すと、扉を押し開け一気に中に駆け込んでいった。
行きがけの駄賃とばかりに、近くにいた雑魚を2体引き裂き、上位種を挑発しながら、敵の左斜め後ろに回り込んだ。
識別する間もなく、予め用意していた〈エナジー・ボルト:弱〉で上位種を狙う。
敵の意識がトアに向いている隙に、胴体に狙いを定め放つ!
胴体に当たった攻撃は、胸骨を何本かへし折っているから、そこそこ敵のHPを削ったようだ。敵のヘイトが私に向く。その隙を逃さずにトアが後ろから首を咬み千切る。勢いそのまま、反応の遅い他の個体に襲い掛かる。
次の瞬間にはボスを含め6体の敵が光を放つ光景だけが残っていた。
《レベルアップ:【種族:ヒューマン《超越種》/24】〈6〉》
《種族レベル上昇によりステータスポイントを〈6〉獲得しました》
《レベルアップ:〈魔力使い/44・薬士/46〉〈1〉》
《Jobレベル上昇によりJPを〈2〉獲得しました》
《レベルアップ:【眷属:ウルフ〈幼体〉/47】〈0〉》
《種族レベル上昇によりステータスポイントを〈6〉獲得しました》
うむ。レベルが上がったが、トアのレベルの上昇も大分緩やかになって来たね。
私は〈+1〉トアは〈+2〉のレベルの上昇だ。
しかし、あまり私が攻撃しないせいで、全然スキルレベルが上がらぬ。
・・・しばらくの間は、基礎訓練を重点的に行おうかな?
うむ。今後の部屋も余程のイレギュラーが無ければ余裕かな?
次の部屋・・・ログアウトの時間忘れてた。
今から急いで戻れば間に合うか?・・・間に合わせる!
「トア、先導お願い!なるべく早く戻りたいんだ!」
「ウォフ」
私のお願いを聞いて、さっと身をひるがえすと、私を置いて行かないで済む程度に足早で先導してくれる。・・・トアに乗れたら楽なのに。
◇◇◇
おかしい。罠が・・・無い?
気が付いたのは、トアが真っ直ぐ未知の中心を警戒しないで進んでいく姿に、違和を覚えたからだ。さっき通った時は、ここは避けて歩いていたよね?
SPをあまり消費しない速度で走っていくが、今まで通過した部屋では、いまだ敵は、リポップしていない様だ。一度倒すとしばらくリポップしないのだろうか?
まぁ、今回は急いで戻りたいので都合がいいと言えば都合がいいのだけれど、ね。
しかし、行きには通路に罠が存在していたのだが、今は罠が無い様だ。
罠と小部屋はやはり関係があるのだろうか?
部屋を入り口側に抜けトアが扉を閉め直すと、その度に部屋の中で微かに物音がする。先程から気になってはいたけど、もしかして、今リポップしたのか・・・?
気になって扉を開けようとするが、・・・重い。
トアに代わりに開けてもらおうと振り向くと、まるで『やれやれ』とでも言いたげな雰囲気で、扉を開けようとしてくれた・・・・のだが、開かない。
トアは多少不満そうな表情を見せて、開かないことを私に示す。
リポップしたら、一定時間その部屋は開けないのか?
例えば討伐した存在が、何度も扉を閉めることで再戦させないため、とかかな?
・・・何かしら別の理由があるのだろうか?
ん~。リポップの条件は、〈討伐後一定時間の経過+入り口側の扉を閉める事〉だろうか?条件ははっきりとは分からないけれど、今は討伐をし直す意味も無いし、考察も後で行うことにして、さっさと入り口まで戻ろうか。
・・・そうでした。早めに戻ろうなんて言ったのに、足を止めて考察を勝手にし始めていたのは私だけでしたね。トアは関係なかったね。待たせてほんとごめん。
またトアの先導で小走りで進む。
罠もなさそうなので、走りながら前回のことを思い出してみるが、前回は逃走のときに部屋の扉を閉めたけれど、リポップしてなかったような気がするのだけれど?
・・・急いでいたせいで気が付かなかっただけかな?
ぬ・・・?なんか体が若干重くなったか?
簡易ステータスを確認すると、SP最大値が若干削れている。
・・・そういえば!今回は食事してなかったね!ダンジョン直行でしたね!
入り口まで、SP持つかな?持たなかったら適当に休憩せねば。
HPは装飾品で増加してるけど、・・・敵から攻撃受けてないから評価できないネ!今後も移動の機会が多い様だし、SP増加系の装飾品ほしいね・・・特にDEXとか。
通路を小走りで走り抜けるが、全然罠無いね。
通路区間当たり、5分もかかってないよね?
あれ?もう少し滞在していてもログアウト予定時間まで余裕あった・・・?
・・・急ぐ必要なかったのか?
トアに急ぐ必要がないことを知られたら、笑われるかな?いや、呆れられるかな?
まぁ、いいさ!早めに出たら依頼報告して、軽食でもいいから空腹度回復せねば。
ん~。暇だね。小走りで全部走り抜けるだけ。
扉の開閉はトアがやってくれるし、楽過ぎて暇だね。
・・・あれ?もしかして今回も私は、何もしてなくない?
既に、主の威厳(笑)って状態かな?手遅れか?・・・手遅れだな。
トアに反抗されたらどうしよう・・・?
◇◇◇
順調に入り口まで戻ってきたわけだけれど、依頼報告をしておかねば!
・・・時間的に報告の後に、食事するくらいの余裕はありそうかな?
早々に依頼を報告して、現在ギルドで品質値/7の串焼きを食べてます。
依頼の報酬はこんな感じ。
位階〈2〉26体:26,000D
位階〈3〉9体 :45,000D
位階〈4〉1体:10,000D
位階〈6〉1体:40,000D
総額:121,000D
・・・敵の強さの割に、少なく感じる不思議。
ん~。ソロでこの報酬は、比較的効率はいいのだろうか?
生産職の方が大分稼ぎやすいのだけれど、バランスは問題ないのだろうか?
ちなみに、串焼きに使われている肉は、兎のもも肉でした。美味しかったです。
これで今日の予定はクリア!・・・?
・・・あれ?最初の目的だと、掲示板覗こうとしてたはずなんだけど?
まぁいいさ。アディには、次会ったときに骨を渡しておかないと。
今回はここまででログアウト♪
◇
NAME:
RACE :ヒューマン《超越種》/24〈6〉
AGE:15 /15〈0〉
※能力制限中:5割減
※土の加護:VIT+35
Job:魔力使い/44〈1〉
Sab:薬士/46〈1〉
残JP〈54〉
HP:45 〈0〉 [+175]合計値:220
MP:760〈68〉 [+220]合計値:1,048
SP :80 〈20〉
STR /5 〈〉
VIT /5 〈〉[+35]
AGI /5 〈〉
DEX /12 〈4〉
INT /181 〈12〉+44
MID /12 〈4〉
LUC /5 〈〉
残ステータスポイント〈6〉
スキル
Job
魔力系
〈魔力操作/34〉〈術/34〉〈魔力術/30〉
〈属性適正/27〉
〈火属性魔法/12〉〈水属性魔法/7〉〈風属性魔法/17〉〈土属性魔法/7〉
〈光属性魔法/7〉〈闇属性魔法/3〉〈無属性魔法/3〉
生産系
〈調合/15〉〈錬金/11〉
Status
〈器用強化/2〉〈知力強化/2〉〈精神強化〉
Common
〈採取/14〉〈植物知識/2〉〈鑑定/16〉〈識別/3〉
Unique
『扉』:〈放浪書店〉
『種族』:〈眷属創造〉〈王権〉
称号
〈術〉の入門者/2〈1〉:MPに〈術〉x10の追加補正
〈魔力〉の入門者/1〈1〉:MPに魔力系スキルx10の追加補正
〈火属性〉の入門者/1〈1〉:火属性使用時、消費MP:〈1〉減
〈水属性〉の入門者/1〈1〉:水属性使用時、消費MP:〈1〉減
〈風属性〉の入門者/1〈1〉:風属性使用時、消費MP:〈1〉減
〈土属性〉の入門者/1〈1〉:土属性使用時、消費MP:〈1〉減
〈光属性〉の入門者/1〈1〉:光属性使用時、消費MP:〈1〉減
〈闇属性〉の入門者/1〈1〉:光属性使用時、消費MP:〈1〉減
〈無属性〉の入門者/1〈1〉:光属性使用時、消費MP:〈1〉減
〈魔法使い/見習い〉/1〈1〉:魔法スキル使用時、消費MP:〈1〉減
〈アドリアーナの弟子〉/1〈1〉:MPに+10補正
※消費MP:〈1〉以下にはならない
〈超越者〉/1〈1〉:〈種族能力・種族スキル〉解放
《成長の成約》:必要経験値固定。進化前種族値の必要経験値と等しくなる。
《始祖の血脈》:眷属最大数増加。眷属〈成長・進化〉解放。
《無欲の大罪》:自らに全能力値減少補正〈大〉/眷属の能力値上昇補正〈大〉
《王権の起源》:眷属素材解放。眷属創造解放〈最大数=種族値に依存〉
《無辺の願望》:眷属の数により、本人+眷属に補正。
眷属
ウルフ〈幼体〉/47〈0〉
HP :510〈255〉
MP:297〈144〉
SP :510〈255〉
STR /60 〈30〉
VIT /54 〈27〉
AGI /60 〈30〉
DEX /54 〈27〉
INT /33 〈16〉
MID /33 〈16〉
LUC /33 〈16〉
残ステータスポイント〈12〉
スキル
肉体特性
〈牙〉〈爪〉
戦闘系
〈警戒〉〈索敵〉〈奇襲〉
称号
〈孤狼奮闘〉:SPに追加補正+回復補正〈敵数x0.01%〉 ※戦闘終了まで効果持続
〈孤狼の誇り〉:単体での出撃時、獲得経験値上昇
〈格上殺し〉:位階が格上の対象との戦闘時、追加補正〈位階差xステータス÷2〉
〈縦横無尽〉:対象を認識中、〈スキル・称号〉効果継続時間延長※最大SP÷10/分
〈幼狼の誇り〉:成長時、進化先に補正
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