第22話 〈強敵?〉

□神殿:墓地ダンジョン入口


ん~。相変わらず陰気臭い感じのするダンジョンだな。

トアも戦闘できるだけの広さがあるからいいけどね。

将来的にこのまま大きくなり続けるようだと、一緒に潜れなくなるのでは?

・・・さすがに大丈夫だよね?トアを見ながら今後の成長に不安を覚えていると、急かすように手の甲をなめられた。

「ウォフ」

一声上げるとそのまま先導していく。


・・・あぁ!地図購入するの忘れてるじゃん!

今から買いに行くのも面倒だし、前回の掃討の際に行った、

最初の分岐を右に入った通路に行くか。そこならマップも少々描かれているし、

前回聞いた限りだと基本的に小部屋の中にしか魔物が湧かない様だしね。

他の通路は地図を購入してからだな。


ってトア先に進んでるじゃん!

「トア!最初の分岐右に入って~」

「ウォフ」


慌てて駆け足で追いかけていく。

こんなに戦闘に積極的なのは、ストレスでも溜まっているのだろうか?



最初の分岐を右に曲がり、前回と同じ通路に入る。

「トア。私が知る限りだと、この通路では基本的に魔物は湧かない。通路を進むと扉が見えてくるんだけど、その扉の先に小部屋がある。小部屋の中に魔物は湧くんだ。偶に上位種がいるから気を付けてね。それと通路には稀に罠があるようだから気を付けてね?」

「ウォフ」

この通路のことを軽く説明すると、凡そ理解したようだ。

相変わらず賢い・・・そう、主人である私よりも(ぼそっ


トアの先導に従い道の端を歩いたり、真中を歩いたりしているが、

前回はここら辺に罠なんてなかったはずなんだけど・・・?

罠が新しくできたんだろうか?


それとも、気分で歩く位置を変えてるだけなんだろうか?

まぁいいさ。罠でも私にとっては致命傷になりかねないからね。

罠を見分けることもできないし、アディの後ろをついて行くだけだ。


前回も見た最初の小部屋の扉が見えてきた。

前回も思ったけど、ボロいな。いや、記憶よりもボロい…かな?


「トア、開けるよ?」

「ウォフ」

トアも警戒態勢に入ったようだ。


扉を開ける…重いな。前回はロキュス達が開けてくれたから、

軽そうだと思っていたんだけど、扉が錆びついていて動かしにくい…


トアが体当たりで一気に押し開けた!

体当たりの勢いそのままに部屋の中にいた4体のスケルトンに襲い掛かった。

そこからは一瞬だった。


敵が動くよりも早く爪で一撫でするとそのまま敵を倒してしまったようだ。


・・・私の出番が無い。

眷属より役に立たない主だが、このままでいいのだろうか?

うん。仕方ないね。極振りだし…仕方ない、よね?(震え声

せめて、扉を閉めるのだけは私がやろうか。


「ウォフ」

そんな風に内心混乱していた。その間にトアはすでに奥の扉も開けて、

こちらを振り返り「早く来い」と急かしているようだ。


慌てて追いかける。


・・・私、役に立たなすぎでは?


2番目の部屋はトアが突っ込んでいって終了。最初の部屋の繰り返しだった。

3番目の部屋には上位種がいたようだが、私が〈識別〉をかける間もなく爪で終了


さて、前回は3部屋目の奥の通路まで、上位種が溢れてきてたんだよね。


「トア、とこの扉の先は私も知らないから、今まで以上に注意してね?」

「ウォフ」

軽く扉に体当たりをし、扉が薄く開くと鼻と耳をしきりに動かし、

敵の有無を探っているようだ。どうやら今回は溢れていないらしい。

前回の救援隊の人達がしっかり掃討してくれたのかな?


トアが先導してくれるが、先程までの通路よりも警戒しているようだ。

匂いで罠がわかるのだろうか?所々明確に避ける部分がある。

私はトアの後ろをついて行くだけだ。


それにしても、ロキュス達と来た時より大分ペースが早いかな。

今回は潜り始めてから、まだ30分程だろうか?

前回も帰りは早かったが、行きはもっと時間がかかってたんだけどね。



やっぱりトア優秀過ぎない?

種族値〈5〉の副産物だけはあるってことかな?

…まぁ、本体は大幅に弱体化してるんですけどね!


将来的に同格相手にも火力確保出来たら、極振りはやめようかな?

正直、トアだけ働かせているようで、罪悪感が凄い。


遂についた私にとっての未知の領域。

そう。4番目の部屋。なんか、さっきまでとは空気が違う。

じっとりとした様な、重い空気の層が扉までの間に存在するように感じる。

これ、位階〈3〉以上は確定だよね?

ちらりと隣を見ると、やる気満々のようだ。


・・・うん。足手纏いにならない様に、〈アーツ〉でも撃とうか。


「トア、準備はいい?」

「ウォフ」

軽く返事をすると、今までとは違い大きく後ろに下がり、

一気に加速をしながら扉に体当たりをした!


"ゴォーン"


結構大きな音を響かせながら、扉は小部屋の中に吹っ飛んで行った。

・・・?!!!扉って壊せるものなの!?

そのまま近くにいた位階〈2〉と思われる個体に飛びつき、頭蓋骨を噛み砕いた。


混乱しながらも、慌てて〈エナジー・ボルト〉を構える。

トアに襲い掛かろうとしている一際大きな個体に狙いを定める。


綺麗な白い骨!大きな戦斧!騎士鎧!バイキングヘルム!

・・・何故にバイキングヘルム?いや、騎士鎧が変なのか?


一番装備が整ってるあれがこの部屋のボス的な奴かな?〈識別〉!


スケルトンウォリアー:ホワイト/32 Job:重戦士/33〈4〉


ホワイト?まぁいいや。〈エナジー・ボルト〉消費MP:50で発射!

あれ?発光が強くなってない?大丈夫なんだよね?ね!?


"キィーーン"


・・・貫通しちゃったよ。いや。あれは残光だけかな?

アーツ本体は敵に当たると同時に霧散したようだ。


何せ貫通した先の敵にも光が当たったはずだが、一切ダメージを与えられていなさそうだからね。相変わらずアーツ本体は敵に当たると消滅するのね。


ん~。大分ダメージ稼げたみたいで、騎士鎧は全体的に歪み、アーツの着弾地点には穴が開いている。穴からは骨が見えているが、胸骨が数本折れただけのようだ。

敵は攻撃されたことに反応し、トアから私へと狙いを変更したようだ。


襲い掛かられる前に!間を置かずにもう一度消費MP:50で発射!

鎧の穴を狙ったんだけど、バイキングヘルムを被った頭に当たった。

狙ったところに飛ばないのはDEXせい…なのか?

(そこっ!私の狙いが悪いとか言わない!


次の瞬間、敵は光に分解されて骨を残して消えた。

ふぅ。ワンパン出来なくて焦ったけど、2回当てただけで倒せて良かったよ。

・・・次からMP:100で打ってワンパンした方がいいかな?


気を引き締め直して他の敵を狙おうとした所、トアが残りを全て倒したようだ。

流石トアだね!主人より仕事のできる優秀な眷属なだけあるね。


《レベルアップ:【種族:ヒューマン/17】〈1〉》

《種族レベル上昇によりステータスポイントを〈6〉獲得しました》

《レベルアップ:〈魔力使い/37・薬士/39〉〈1〉》

《Jobレベル上昇によりJPを〈2〉獲得しました》


《レベルアップ:【眷属:ウルフ〈幼体〉/32】〈0〉》

《種族レベル上昇によりステータスポイントを〈6〉獲得しました》

《レベルアップ:【眷属:ウルフ〈幼体〉/33】〈0〉》

《種族レベル上昇によりステータスポイントを〈6〉獲得しました》


経験値効率的に、強敵は瀕死まで削って、トアに止めを刺させるのが正解かな?


ん~?位階〈4〉の敵を瀕死状態にできるのは消費MPでどのくらいだろう?

消費MP:60~90位かな?次の敵で試してみようか。


既にトアが扉の前で待機している。

はい、今行きます。


「トア、大丈夫だった?」

「ウォフ」

軽く問いかけてみたものの、返事はいつも通り。

目立つ所に傷は無く、【王権】から確認してみるが・・・無傷だね。

もしかしなくても、位階〈2~3〉のスケルトンなら数が多くても楽勝ですか?


トアが右前足で扉を薄く押し開ける。やはり敵はいない様だ。

そのまま全開迄押し開けると、そのまま先導してくれる。

しかも私が扉を通り抜けた後に、閉めてくれるサービス付きだ。


・・・って!レベル上がって、器用になった?それとも、賢くなった?

私のやれることが失われていく…本格的に要らない子かな?


「ウォフ」

余計なことを考えて固まっていたら、トアに急かされた。


そのまま無言でトアの後ろをついて行く。

先程迄の通路よりも強く警戒しているようだ。

時々後ろに下がったり、時には軽くジャンプし罠をまたいでいく。

着いて行くだけでも結構大変だね。やっぱり罠解除できる斥候系は必要なのかな?

・・・眷属で罠解除の出来る斥候系作れるかな?



さぁ、『5番目の部屋』だ。

以前見たの事のある魔法耐性を持つ個体は位階〈5〉以上だったよね?

位階〈5〉以上が出るようなら逃走か、これ以上奥へ行くのは控えるべきなのかな?


今回の扉は新品同様の黒光りする総金属製の扉だ。

先程までの扉と違い何故新品同様なのだろうか?


ここら辺の空気は重くない。ということは、位階〈4〉以上はいないのか?


色々気になることが多いが、まぁいい。

トアも先程と同じように助走をつけて一気に扉に飛び掛かる!

が、あれぇ?トアが弾かれた!?扉はビクともしない様だ。

弾かれたトアは大丈夫か!?慌てて【王権】からトアの状態を把握する。

・・・大丈夫そうだ。トアは一気に飛び込めなかったためかどこか不満気だ。

一体何時からそんな戦闘狂になってしまったのだろうか?


それはそれとして、トアの力で開けられないんじゃ、私では無理では?

これギミック系かな?やはり地図は必須だったか。他の道に行くしかない。かな?


そんなことを考えていると、時間差で扉の中心に淡い乳白色の光が灯る。

その光を中心に幾つもの文様が浮かび上がる。これは、魔法陣だろうか?


・・・かなりヤバいのでは?封印されてた系なんでせうか?


魔法陣が完全に扉に浮き上がると、中心から淡い光が巡り始める。

魔法陣に光が完全に巡ると、一際強く輝きその後ゆっくりと自動で開き始めた。


"ゴゴゴゴゴォ"


高まる緊張感。トアも警戒態勢だ。私も〈エナジー・ボルト〉を構えておく。

今回はヤバそうなので思い切ってワンパンも視野に入れたMP:100で用意だ。


扉が完全に開ききると・・・あれぇ?


何もない


どゆこと?敵がいるんじゃないの?文字通り何もない。

壁も、天井も、奥にあるはずの扉さえも。

ただ白い空間が広がっている。バグかな?入ったらデータやられない?


トアを見やると今までに無い程に警戒している。

真正面を見ながら唸っている・・・?

何かいるんだろうか?私には何もない様にしか見えないのだが。

〈識別〉!


※[閲覧権限がありません]


あれ?この状態は何?

[閲覧権限が足りません]ではなく[閲覧権限が]???

閲覧権限は、何処で取得出来るのでしょうか?


以前来た際のロキュスの話しぶりだと、10部屋目までは戦力的にも行けるはずたったんだよね?って事は、これは何かのギミック、かな?

何をしたらいいんだろう……?ヒントは何処ですか~


トアは部屋に入らないまま、警戒感丸出しで部屋の中を睨んでいる。

やはり何かいるのだろうか?・・・もしかして、必要なのは〈鑑定〉?

〈鑑定〉!


スポーン:スケルトン

状態:封印解除率16%

※[閲覧権限が足りません]

※[閲覧権限がありません]


・・・?

何なの?其の如何にもヤバそうな語感は。

しかも、今度は、〈閲覧権限が足りません+ありません〉


これどうしたらいいんだろ?敵が出てくるのを待てばいいのかな?

それとも、今すぐここから逃げたほうがいいのか……?




真白な空間が揺らぐ。




・・・?今部屋の中の空間が、揺らいだ…よね?

トアの警戒がさらに高まる。威嚇なのか薄ら唸り声も聞こえてくる。



揺らぎは空間の中心から波紋のように拡がっていく。


部屋の壁と思われる位置で揺らぎの波紋が跳ね返る。


空間の端に到達した波紋が中心部に収束する。


何時の間にやら真白な空間に部屋の輪郭が浮かび上がる。


波紋の重なった中心では何か『凝ったもの』が発生した。


部屋の輪郭が色づき鮮明になる。


『凝ったもの』は魔石……だろうか?拳大の大きさに収束する。


部屋が明確に真白な空間を塗りつぶす。


『凝ったもの』から急激に人型の骨が発生する。


背骨から始まり、手足、頭蓋骨の順に一気に形作られる。


部屋は急速に老朽化し、『4番目の部屋』までと同じような古ぼけた状態になる。


人型の骨…『スケルトン』それの周りに武具が落ちる。


『スケルトン』の体を虚空から現れた鎖が空間に縫い留めていく。


武具が地面に衝突した音でスケルトンの眼孔に青い炎が灯る。


威圧感はまるでない。なのに、静かな狂気を感じさせる。


眼孔に宿った炎は私に何かを訴えてくる。


現世への。生者への。もしくは…………?




・・・スケルトンの眼孔って炎が灯るの?

今までの個体は何も入ってなかったよね?

やっぱり、位階〈5〉以上なのか?逃げる?逃げちゃいます?

今なら扉を締めれば逃げ切れるのでは!?

しかし!トアは既に臨戦態勢だ!……逃げれませんね。


仕方ない。とりあえず〈識別〉!


※閲覧権限がありません


・・・ふぁ?まだ、見れないの?

それとも、これは魔物では・・な・い?


〈鑑定〉!


スポーン:スケルトン〈変異中〉

状態:封印解除率72%

※[閲覧権限が足りません]

※[閲覧権限がありません]


・・・






NAME:伊舎那イザナ

RACE :ヒューマン《超越種》/17〈6〉

AGE:15 /15〈0〉

※能力制限中:5割減

※土の加護:VIT+35


Job:魔力使い/37〈1〉

Sab:薬士/39〈1〉

残JP〈40〉


HP:45 〈0〉[+175]合計値:220

MP:560〈51〉[+220]合計値:831

SP :80 〈15〉


STR /5   〈〉

VIT /5  〈〉[+35]

AGI /5   〈〉

DEX /12 〈3〉

INT /131 〈9〉

MID /12 〈3〉 

LUC /5 〈〉

残ステータスポイント〈6〉

スキル

Job

魔力系

〈魔力操作/26〉〈術/26〉〈魔力術/24〉

〈属性適正/24〉

〈火属性魔法/9〉〈水属性魔法/4〉〈風属性魔法/14〉〈土属性魔法/4〉

〈光属性魔法/4〉〈闇属性魔法〉 〈無属性魔法〉

生産系

〈調合/15〉〈錬金/11〉

Status

〈器用強化/2〉〈知力強化/2〉〈精神強化〉

Common

〈採取/14〉〈植物知識/2〉〈鑑定/16〉〈識別〉

Unique

『扉』:〈放浪書店〉

『種族』:〈眷属創造〉〈王権〉


称号

〈術〉の入門者/2〈1〉:MPに〈術〉x10の追加補正

〈魔力〉の入門者/1〈1〉:MPに魔力系スキルx10の追加補正

〈火属性〉の入門者/1〈1〉:火属性使用時、消費MP:〈1〉減 

〈水属性〉の入門者/1〈1〉:水属性使用時、消費MP:〈1〉減 

〈風属性〉の入門者/1〈1〉:風属性使用時、消費MP:〈1〉減 

〈土属性〉の入門者/1〈1〉:土属性使用時、消費MP:〈1〉減 

〈光属性〉の入門者/1〈1〉:光属性使用時、消費MP:〈1〉減 

〈闇属性〉の入門者/1〈1〉:光属性使用時、消費MP:〈1〉減 

〈無属性〉の入門者/1〈1〉:光属性使用時、消費MP:〈1〉減 

〈魔法使い/見習い〉/1〈1〉:魔法スキル使用時、消費MP:〈1〉減

〈アドリアーナの弟子〉/1〈1〉:MPに+10補正

※消費MP:〈1〉以下にはならない


〈超越者〉/1〈1〉:〈種族能力・種族スキル〉解放 

 《成長の成約》:必要経験値固定。進化前種族値の必要経験値と等しくなる。

 《始祖の血脈》:眷属最大数増加。眷属〈成長・進化〉解放。

 《無欲の大罪》:自らに全能力値減少補正〈大〉/眷属の能力値上昇補正〈大〉

 《王権の起源》:眷属素材解放。眷属創造解放〈最大数=種族値に依存〉

 《無辺の願望》:眷属の数により、本人+眷属に補正。


眷属

ウルフ〈幼体〉/33〈0〉

HP:348〈174〉

MP:261〈126〉

SP:348 〈174〉


STR /42 〈21〉 

VIT /36 〈18〉 

AGI /42 〈21〉 

DEX /36 〈18〉 

INT /29 〈14〉

MID /29 〈14〉 

LUC /29 〈14〉

残ステータスポイント〈12〉

スキル

肉体特性

〈牙〉〈爪〉

戦闘系

〈警戒〉〈索敵〉〈奇襲〉

称号

〈孤狼奮闘〉:SPに追加補正+回復補正〈敵数x0.01%〉 ※戦闘終了まで効果持続

〈孤狼の誇り〉:単体での出撃時、獲得経験値上昇

〈格上殺し〉:位階が格上の対象との戦闘時、追加補正〈位階差xステータス÷2〉

〈縦横無尽〉:対象を認識中、〈スキル・称号〉効果継続時間延長※最大SP÷10/分

〈幼狼の誇り〉:成長時、進化先に補正

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