第13話 〈魔典〉
□魔法ギルド:アドリアーナの工房
アディにダンジョンでの経緯を語り、聖騎士が出てきたところまで話した。
「ふ~ん。ロキュスだっけ?いい判断だったね」
「そうなの?直に撤退したから?」
「いや?直接的な攻撃をせず、妨害に徹したことさ。
もし攻撃してたら、確実に仕留めるまで追いかけてきてたと思うよ?
妨害だけだったから、そこまで興味を引かなかったんだろうね」
感心したようにロキュスの判断をほめている。
興味を引かなかったからって…
「スケルトンなのに思考があるかのような物言いだね?」
「スケルトン?あぁ、位階が上がればどんな魔物でも、
多少なりとも知性が芽生えるのさ。本能を上回る例は少ないがね?」
「へ~、位階〈10〉でどれくらいの知性って言われてるの?」
「そうだね、凡そ人と変わらないという説がある。
だが、本能が知性を大幅に上回ることが多い。
そのせいで知性を生かしきれない例が多々見受けられる。
尤も一部には例外がある。私の召喚士しかり、従魔士しかり、
一部Jobは魔物の知性上昇効果があるスキルを持っていることがある」
少し自慢げな表情でドヤッてきた。
「なるほど…今回のは位階幾つくらいだったんだろう?」
「直接見てないからわからないけど、君の魔法で傷が作れなかったということは、最低でも位階〈5〉武装に魔力が含まれているようなら位階〈6〉だろうか?」
「位階〈7〉以上ってことはないの?」
「無いだろうね。もしそこまで位階が高かったら、
まず君達を逃がすという可能性自体ありえない。
第一そこまで行ったら、普通に災厄に数えられることが多いよ?」
「ん?でもさっき言った聖騎士の人達は、
位階〈10〉でも倒せるって話してたよ?」
「それは完全に相性差だね。一部の特殊進化をしている相手だと、
厳しいだろうね。特に浄化に耐性を持つ相手だったら、確実に死ぬね。
ここら辺ではそんなの存在しないけどね」
"ははは"なんて軽く笑ってるけど、そんな倒しにくい奴までいるのか…
「そうなんだ・・・」
魔物の進化って弱点に耐性持つ者もあらわれるのか…
「まぁ、そんなわけで今回に限れば心配いらないよ」
アディが安心させるように微笑んできた。
「ありがと。所でアディは何をしてたの?」
少し照れを感じ、話をそらした。
「ん?ただ本を読んでいただけだから気にしなくていいよ」
調合台の上に置いた何冊か重なった本の山を指差して言った。
「アディ、さっきの受付の話で、複合、特化、派生って話があったけど、
それぞれどんな内容か聞いてもいい?」
「構わないさ。まずは特化から話そうか。
例えば〈魔法使い<魔法士<魔法師〉って感じで〈昇格〉が出来るんだけど、
〈転職〉の際に〈属性魔法〉のレベルが一定以上だと、
その属性に特化したJobが候補に発生するんだ。
〈魔法使い―〈火属性〉魔法使い<〈火属性〉魔法士<〈火属性〉魔法師〉
って感じでね?それが通常特化と呼ばれるものだね」
「次に派生について話そうか。
前にも言ったと思うけど、私は召喚士系に特化してる。
この召喚士が派生に分類されるね。
条件を満たすと〈昇格〉の際、候補が発生するのさ
〈魔法使い<召喚士<召喚師〉こんな風にね?これが派生と呼ばれるものだね」
「最後に複合。これはほんとに面倒だけど、
例えば有名どころだと〈魔法剣士〉というJobがある。
これは、〈剣士/20〉+〈魔法士/20〉を満たした状態で〈転職〉候補に発生する」
「〈聖騎士〉だともっと面倒だ。最初に〈騎士〉に派生させる必要がある。
騎士の条件が〈剣使い/20〉+〈盾使い/20〉+〈治癒使い/20〉
条件を満たすと〈転職〉の際に〈騎士〉が候補に発生する。
〈転職〉の条件は、指定のJobを〈統合〉する必要があるんだ。
〈統合〉っていうのは簡単に言うとレベルリセットだね。
今まであった補正が消滅する。もちろん上げ直す事は可能だけど、非常に手間だ」
「〈聖騎士〉は〈騎士/20〉+〈神職者/20〉なんだけど、
〈神職者〉自体、〈治癒使い/50〉+〈所属:神殿〉で派生するんだよね。
ここまで聞けばわかると思うけど、複合ってすっごい手間がかかるんだよね…
確かにJob制限数を圧迫しないってメリットはあるけど、
所持Job全てで、4次職を目指すなら非常に遠回りになる…」
うへぇー。聞いてるだけで疲れてきた…
「〈聖騎士〉が強いのに納得ですよ…」
「まぁ、4次職以上はなるのが難しいから、
複合によってJobを強化していくのも、間違いではないのさ」
「アディは4次職持ってますか?」
「私が持っている4次職は〈召喚修士/27〉だね。
それ以外は完全に条件のためのギリギリの水準さ」
苦笑しながら教えてくれた。
「アディでも4次職は1個しか持ってないの?」
レベル590だよ?もっと在ってよさそうじゃない?
「そうだよ。だから複合Jobだと、
特化や、派生に成長速度で勝てないって言われるのさ。
尤も、複合の方が役に立つことも多いけどね?」
「職業取得制限って種族レベルの10分の1でしたよね?」
「あぁ。そこまで取得している奴がどれほどいるだろうね?
私の持ってるJobの数は戦闘職だけだと5個だけだよ」
「・・・職業取得制限って何のためにあるんでしょうか?」
「さぁねぇ?もしかしたら1次職を全て取得していけば、制限にかかるかもね?」
悪戯そうに"ニヤニヤ"笑っている
「あ~。後、種族で〈ハイ・ヒューマン〉って〈聖騎士〉の人が言ってたんだけど、単純に上位種ってことでいいの?」
「そうだね。〈ハイ・ヒューマン〉は〈ヒューマン〉の上位種だ。
進化の前提条件は、〈種族/100〉以上であることだよ。
上位種に進化するには特定条件を満たさないと、進化候補が発生しないんだ。
ちなみに〈ハイ・ヒューマン〉の条件は、〈3次職〉以上を所持していることだ。他にも、上位種に進化しないで、種族の位階のみ上昇させることもできる。
基本的には上位種の条件を達成する人がそう多くないからね。
大体の人は位階上昇のみ行ってる人が大多数だ」
「ちなみにアディはレベル590だったよね??種族進化してないの?」
「私は〈ハイ・ヒューマン/95〉位階〈7〉だね」
・・・590はどこ行ったんだろ?って位階〈7〉⁉
「不思議そうだね?アイテムボックスは種族の総合レベルなんだ。
私はヒューマンの状態で2回、位階上昇を行った。これで200
その上で、上位種に進化したんだ。上位種の位階は種族値分追加される代わりに、レベルの上昇が半減するんだ。そして、上位種でも位階上昇を行った。これで100
しかし、アイテムボックスでは、〈種族値〉x〈レベル〉の合計なのさ。
〈ヒューマン/200〉+〈ハイ・ヒューマン/195〉=〈ヒューマン/590〉
ちなみに位階は[基礎値]〈1〉+〈種族値〉x〈位階上昇回数〉の合計だね。
私の場合はこれだね。[基礎値]〈1〉+〈1〉x2+〈2〉[進化分]+〈2〉=7」
「・・・位階〈7〉ってどのくらい強いのでしょうか?」
「う~ん。レベルアップごとに貰えるステータスポイントが、
〈位階〉依存なんだよね。だから結構強くなりやすい、かな?」
「種族値って何ですか・・・?」
「種族値っていうのは、基本となる種族を〈1〉とした際に、
どれだけ上位に進化したかの指標になるものだね。
上位種への進化ごとに現在の種族値〈+1〉が基本だね。
まぁ、中には例外もあるけどね?
だから私のレベルアップごとのステータスポイントは〈+7〉だね!」
強い…
[位階]〈7〉x[現在レベル]〈95〉=〈665〉
現時点のレベルだけ見ても、〈665〉だ。
上位種に進化しないと、いつまでも追いつけないんだが…
「あれ?エルフとか、獣人は位階〈2〉なんですよね?」
「そうだよ?ただし、〈種族値〉〈1〉なんだけどね?」
「エルフや、獣人はあまり見ないんですけど、上位種っているんですか?」
「いるよ?・・・!〈ヒューマン/20〉で種族変化が出来るんだ。
種族変化で条件を満たしている種族に系統を変化させることが出来るんだ」
・・・あれ?
もしかして、イリックさんの言ってた珍しくないって、
種族変化で成れるからでは?
「あの~、もしかして獣人やエルフって珍しくないんですか?」
「ふむ?純血種といわれるのは多少珍しいかもしれないけど、
変化する人もそれなりにいるからね。さほど珍しくないと思うよ?」
「その割には街で見かけないんですが?」
そう。意外と見かけないのだ。精々ロキュスが熊獣人だったくらいだ。
「ん~。時間帯か場所の問題じゃないかな?
それぞれ特性に合った時間や場所なんかがあるんだ。
基本的に自分に合った環境で働いていると思うよ?」
・・・マジか。見掛けなかったのはただの偶然か。
「話は変わるけど、レベル上がってJPとか獲得したでしょう?
忘れないうちに振ったほうがいいよ?」
あ・・・そうでした。
「了解。欲しかったの取得しときます!」
「私は自室で実験してるからね~(@^^)/~~~」
よく考えてね?と、苦笑しながら部屋に戻っていった。
◇◇◇
スキル何取ろう?
Jobスキル取得一覧
〈水属性魔法〉3P New
〈土属性魔法〉3P New
〈光属性魔法〉3P New
〈闇属性魔法〉3P New
〈無属性魔法〉3P New
ん~。最終的には全部取る予定だし、上からとって行こうかな。
『〈水属性魔法〉3Pを取得しますか?Yes/No』
Yes!
『〈水属性魔法〉を取得しました』
《称号:【〈水属性〉の入門者】を獲得しました》
消費JPが増加したが次の属性もとる。
『〈土属性魔法〉4Pを取得しますか?Yes/No』
Yes!
『〈土属性魔法〉を取得しました』
《称号:【〈土属性〉の入門者】を獲得しました》
更にとる。スキル取得楽しく感じてきた。
『〈光属性魔法〉5Pを取得しますか?Yes/No』
Yes!
『〈光属性魔法〉を取得しました』
《称号:【〈光属性〉の入門者】を獲得しました》
さらに~
『〈闇属性魔法〉6Pを取得しますか?Yes/No』
Yes!
『JP不足により〈闇属性魔法〉を取得できませんでした』
・・・あら。
JP尽きてしまったか…。
ステータスは・・・
DEX[+2] /INT[+6] / MID[+1]
でいいかな?
うん。良い感じ。
時間あるけど、外で雑魚狩りかダンジョンかな?
ギルド行って、ダンジョンがダメそうならフィールド行こうか。
◇◇◇
工房を出て魔法ギルド受付の横を通るが、
・・・寝てる?また?何故?
「こんにちわ」
ローブの女性は頭だけこちらを向く。
「あぁ。イザナさん。もう用事終わったの?」
「え、えぇ。ところで貴女の名前教えてくれませんか?」
「いいよ。私はエルヴィオーラ。ヴィオラでいいわ。
Jobは複合を先行してるから、困ったら聞きに来て。多分力になれると思うから」
小さく手を振りながらまた眠る体制になった。
・・・この人何で受付にいるんだろう?別な人のほうがいい気がする。
気を取り直して!
ギルドを出ると、今朝とは違い初日に見た学者や魔法使い風の人が闊歩している。
杖を持ってる人も意外といるようだ。
◇
・・・ん?
あれは魔導書か何かか?
なんでこんな場所に魔力の籠った本を売っている店が?
前に見たときはなかったような気がするんだけど…?
冒険者ギルドに向かう途中、訓練場があるはずの場所になぜか扉が増えている。
扉の奥には、魔力の籠った本が何冊か展示されているようだ。
興味本位で入ってみることにした。
"チリーン"
扉を開くと澄んだ音が響く。
外から見える位置に魔力の籠った本が展示されていたが、
店の中を見渡すとガラスケースの中に数冊入ってるのみだった。
並べてあるわけでも無いのかな?ところどころ空きが目立つ。
店の中は伽藍と何もない本棚がいくつも並ぶ。
途中にカウンターが有り、そこで白髪の片眼鏡をかけたおじさんが本を読んでいる
服装はコタルディというのだったか?中世後期に見られた服装だ。
厳しめの目つきで睨むように本を速読していく。
邪魔をしない様にガラスケースの中にある本を〈鑑定〉してみる。
神導書:〈火天〉
〈火天〉の秘跡:媒体/魔典
対象の〈――〉が記録されている
獲得候補:〈――/火天〉
※条件を満たしていません
※〈鑑定〉レベルが足りません
《レベルアップ:〈鑑定/2〉》
・・・?火天?何それ。
基礎6属性と何が違うのですか!
鑑定レベルが足りませんとか始めてみたんだが?
魔導書とかじゃないの?何〈神導書〉って!
色々混乱したが、付いている値段を見てビックリ。
〈―時価―〉
はい。値段がついていませんでした。
〈時価〉って何さ!
まさかと思い、他の本も確認してみた。
神導書:〈水天〉
〈水天〉の秘跡:媒体/魔典
対象の〈――〉が記録されている
獲得候補:〈――/水天〉
※条件を満たしていません
※〈鑑定〉レベルが足りません
《レベルアップ:〈鑑定/3〉》
・・・見える範囲変わってない。
神導書:〈風天〉
〈風天〉の秘跡:媒体/魔典
対象の〈――〉が記録されている
獲得候補:〈――/風天〉
※条件を満たしていません
※〈鑑定〉レベルが足りません
《レベルアップ:〈鑑定/4〉》
これも。他のも一通り確認したが、内容は凡そ同じだった。
ん?よく見ると、<媒体/本>じゃない!魔典って何さ!
そんな感じで本を見て歩いたが、空きだと思っていた場所にも
〈―時価―〉の値札があった。
・・・もしかして私に見えてないだけ?
アディの話に出てきたのは、
〈魔導書・魔術書・魔法書〉
この3種類だったはず。
もしかしてここ、隠しエリアか何かなのか?
◇◇◇
NAME:
RACE :ヒューマン/14〈1〉
AGE:15 /15〈0〉
Job:魔力使い/13〈1〉
Sab:薬士/10〈1〉
残JP〈2〉
HP:45 〈0〉
MP:228〈28〉[+120][+90][+10]合計値:476
SP :100 〈10〉
STR:(筋力) 5 〈〉
VIT:(頑強) 5 〈〉
AGI :(敏捷) 5 〈〉
DEX:(器用 ) 16〈2〉+2
INT:(知力) 37〈6〉+6
MID:(精神) 16〈2〉+1
LUC:(幸運) 5 〈〉
残ステータスポイント〈0〉
スキル
Job
魔力系
〈魔力操作/12〉〈術/12〉〈魔力術/10〉
〈属性適正/10〉
〈火属性魔法/8〉〈水属性魔法〉〈風属性魔法/4〉〈土属性魔法〉
〈光属性魔法〉
生産系
〈調合/2〉〈錬金〉
Status
〈器用強化〉〈知力強化〉〈精神強化〉
Common
〈採取〉〈植物知識/2〉〈鑑定/4〉〈識別〉
称号
〈術〉の入門者/1〈1〉:MPに〈術〉x10の追加補正
〈魔力〉の入門者/1〈1〉:MPに魔力系スキルx10の追加補正
〈火属性〉の入門者/1〈1〉:火属性使用時、消費MP:〈1〉減
〈水属性〉の入門者/1〈1〉:水属性使用時、消費MP:〈1〉減
〈風属性〉の入門者/1〈1〉:風属性使用時、消費MP:〈1〉減
〈土属性〉の入門者/1〈1〉:土属性使用時、消費MP:〈1〉減
〈光属性〉の入門者/1〈1〉:光属性使用時、消費MP:〈1〉減
〈魔法使い/見習い〉/1〈1〉:魔法スキル使用時、消費MP:〈1〉減
〈アドリアーナの弟子〉/1〈1〉:MPに+10補正
※消費MP:〈1〉以下にはならない
〈水属性魔法〉
〈スペル〉:ウォーター…水属性魔法の基本技能
〈パッシブ〉:水属性攻撃力上昇:10%
〈土属性魔法〉
〈スペル〉:ソイル…土属性魔法の基本技能
〈パッシブ〉:土属性攻撃力上昇:10%
〈光属性魔法〉
〈スペル〉:ライト…光属性魔法の基本技能
〈パッシブ〉:光属性攻撃力上昇:10%
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