第12話 〈救援〉

「おまたせ~。応援連れてきたよ~」

エミリオが部屋に入ってきて早々、ロキュスに報告した。


エミリオに続いて入ってきたのは、全員白いローブを着た5人の人達だ。

フードを被っているため、こちらからは相手の顔が見えない。


所属を示すシンボルだろうか?

全員ローブの右肩に金で刺繍された模様が描かれている。



「応援感謝する。俺はこの臨時PTのリーダーでロキュスという」

ロキュスが軽く頭を下げる。


「初めまして。私達は『クラン:白光の集い』に所属する『PT:浄天の杖』です。

エミリオさんの応援要請を受け、私達が受けさせてもらいました。

私はPTリーダーのアンジェラです。どうぞお見知りおきを」


先頭の女性がフードを取りながら一礼した。

オレンジの髪をローブの中にしまい、蒼い瞳は強い意志を感じさせる。

特に種族特徴が見えない。ヒューマンのようだ。


「あ…あぁ、今回の敵については聞いているか?」

ロキュスは気圧された様に無意識のうちに、半歩後ろに下がっている。


「はい。伺っています。スケルトンの魔法耐性が高かったため、

位階〈5〉以上の可能性有。でしたよね?」

小首を傾けながら聞き返す。


「そうだ。そちらの戦力での討伐は可能と考えていいのだろうか?」


「えぇ.不死種ならば例え位階〈10〉であっても私達ならば討伐が可能です」

当たり前のことを語る様に、滔々と語る。


・・・不死者限定とはいえ、位階〈10〉が相手でも大丈夫ってすごくない?


「あ~、不勉強で申し訳ないんだが、あなた達なら不死者の討伐が可能な根拠を

教えてもらえないだろうか?」

ロキュスでもその根拠を知らない様だ。


「私達は全員不死者に対する特効を持っています。

また、不死者からのダメージを大幅に減衰する装備でそろえていますから、

位階〈10〉までならば、何とかなります。竜変種等の例外でなければ、ですが。」

ローブをまくり、中に装備している鎧を見せてきた。


「なるほど、ところで、Jobのレベルを伺ってもいいだろうか?」

ロキュスが訝しげに聞いた。


「構いません。私は〈ハイ・ヒューマン/9〉位階〈4〉の〈聖騎士/7〉です。

他の者達は、凡そ〈騎士/20〉前後なのですが、

聖職者を経由していますので、不死者相手ならば何も問題ありません」


「聖騎士!?そうか。なら問題なさそうだな」

ロキュスはレベルよりもJobに驚いたようだ。


聖騎士って強いんだろうか…?

種族レベルから考えると強いはずだとは思うんだけど…

〈ハイ・ヒューマン〉の位階は〈2〉だろうか?

エルフたちと同格ってことなのかな?


「なぁ、聖騎士ってどうやってなるんだ?」

今までずっと黙っていたケントが話に割り込んできた。


「まずは敵の確認及び殲滅が最優先です」

まるでケントに一切の興味がないかのように、奥の通路に続く扉に向かう。

他の人達はケントに一瞥もくれず、アンジェラさんの後をついて行く。


無視された形のケントは苛立ちを感じているようだ。

怒鳴りださないだけましかな?


「それでは敵の確認を行うため、奥の通路に向かいます。よろしいですね?」

扉の前でロキュスに確認を取っているが、ポーズだけの様にも感じる。


「あぁ、構わない。それで、俺達はどう動いたらいい?」

ロキュスが私達を一通り見渡し、今後の動きを確認した。


「いりません。あなた達がいると、結果的に私達の連携が乱れます。

なのであなた達はギルドに帰還して結構です」

やはりこちらに興味がない様だ。


「な!?そりゃないだろ!経験値を独り占めする気かよ!」

私達が足手まとい宣言され軽くうなだれていると、

ケントが空気を読まずに噛み付いた。


「トラップがあるのはこの部屋と、次の部屋のみであっていますか?」

扉を開ける前に、簡易トラップを蹴り壊しながらロキュスに確認する。

ケントはいないものとして扱うようだ。


「あぁ、そのとおりだ。その先の小部屋の通路に上位種なんかが犇めいていた」

ロキュスもケントを無視して話を進める。


「わかりました。情報提供感謝します。私達はある程度奥まで掃討後帰還します。

あなた方は先にギルドに帰還し報告をしてください。」

そう言い残すと軽く一礼し、さっさと奥に駆けて行ってしまった。



「おい!戦うんじゃなかったのかよ!?」

ケントがロキュスにつかみかかった。

ロキュスは面倒そうにため息を吐いているだけで、抵抗しない様だ。


「まぁまぁ、ギルドでは最奥の方の掃討されていない期間が相当だって話でね?

最悪位階〈10〉付近が出現してるかもって話だから、俺達には足手まといになるようなら、おとなしく帰ってこいってギルドからも言われてるんだよね」

エミリオがケントを引き剥がしながらギルドからの報告をする。


「はぁ!?俺が足手まといだっていうのかよ!」

今度はエミリオに食って掛かる。


「足手まといだろうね。荷物持ちにも呼ばれなかったってことは、そう言うことだろうね。まぁ足手まといを庇ってられないって判断だろうし、仕方ないよね」

やれやりといった手振りで肩をすくめる


「そうだろうな。まぁ、大人しく帰ってさっさとギルドに報告するぞ。

ケントも駄々こねてないでさっさと行くぞ」

ロキュスは"さっ"と剣を取り上げると、

その怪力でケントを引っ張りながら歩いていく。



ロキュスの後ろをついて行く。

ケントが、なんか色々喚いているけど、全員スルーである。




神殿を出ると、ロキュスが気を緩めた様に声を出す。


「あ゛~。無事戻って来たな~。」

片手で伸びをしている。


「そうだね~。撤退遅れてたら、確実に死んでたかもね?」

エミリオが追従する。

エルダも無言で頷いている。


「聖騎士の人達大丈夫でしょうか?」


「余裕だろうね!位階〈11〉以上がいたらわからないけど、

そこまではいなさそうだったからね」

私の肩をたたきながら、軽い言葉で励ましてくれた。


「とりあえずギルドで報告だ」

ロキュスに促され、ギルドへ向かう。

・・・ケントの口がいつの間にか布でふさがれていた。

周囲の人が二度見してくるの恥ずかしんだが…。


「ははは。異邦人は人の家に無断で侵入したりで、よく連行されてるから、

きっとそのたぐいだと思ってくれるさ」

エミリオが、周囲の反応を見た私に言ってきた。


"ははは"じゃないんだが…?

ってかそんなに連行される異邦人多いのか…

異邦人犯罪者多過ぎ…?


そんな雑談をしているとギルドに付いた。

「おし、受付に行くぞ!」

ロキュスが気合いを入れて先導する。

…が、エミリオとエルダが立ち止まったので、私も立ち止まる。


「うん。面倒ごとはリーダーに任せて、食事でもして待ってようか」

いい笑顔で爽やかに酒場に向かう。エルダも無言で追従する。


・・・この二人、なかなかいい性格をしてるんじゃなかろうか?

まぁ、ついて行くんですけどね?面倒は任せましたよ!リーダー!


私達が追従してないことに気づかないまま、

ロキュスは受付の人に案内され2階に上がっていった。



「いや~。それにしても、今回の経験値は意外とおいしかったね!

最後逃げただけなのに、それなりに経験値貰えてレベル上がったよ!」

2階に連こ…もとい案内されたロキュスを後目に酒場で早速酒を頼むエミリオ


「私も、2つ上がりました。エルダはどうでした?」

私もレベルが上がったことを報告しながら、

テーブルに身体を倒しているエルダに話しかける。


「私も、1つ」

エルダが小さな声で返事をする。


ちょうど注文したものが届いた。

私はジュース。エミリオはエール。エルダはシドラ。

そして全員の前に、兎肉の串焼き。


「うん。総合してなかなかいい依頼だったね!」

配られた串焼きを齧りながら、エミリオが満足げに今回の依頼を振り返る。


エルダは無言でシドラを飲み干し、お代わりを注文している。

・・・スパークリングワインの類だよね?

そんな飲み方で大丈夫なのかな…?


そんな感じでロキュスが戻ってくるまでの1時間酒を飲んで時間をつぶしていた。



2階から降りてきたゲッソリとした表情のロキュスが、

私達を見つけると額に青筋を浮かべながら詰め寄ってきた。

凄い迫力だ・・・エミリオも口に含んでいたエールでむせて慌てている。


「ウォイィィ!お前ら!なんでついてこなかったんだよ!」


「げほっ、こほっ、ふぅ。まぁまぁ、エールでも飲んで落ち着いて!」

慌ててエールを差し出すエミリオ。

ロキュスは反射的に受け取ると、一気飲みした!


「あぁ!うまい!って、そうじゃなくて。何故来なかったのか聞いてるんだが?」

飲み干した後ふと我に返り、"ギロッ"と私達を睨みつけた。


「あはは。リーダー一人いれば十分だと思ってね」

爽やかな笑顔で堂々と答えるエミリオ

無言で頷くエルダと私。


「ほう?・・・本音は?」

視線の威圧感が増した。


「面倒だったので」(`・ω・´)

エミリオはキメ顔で言い切った。

「同じく」

酒を飲みながら追従するエルダ。

無言で頷く私。


たっぷり10秒ほどだろうか?

私達を見渡したロキュスは諦めたように大きくため息を吐いた。

"( ´ー`)フゥー..."

「そうか」

そう一言告げると、酒の注文をし始めた。


「まぁいい。確かに俺がいれば十分ではあったからな」

苦虫をか噛んだような表情で吐き捨てた。

「とりあえず報告だ。エミリオの簡易トラップは2個とも経費として認められた。

次に、俺たち全体の報酬の上乗せだ。『浄天の杖』が戻り次第、敵の危険度によって報酬が支払われるそうだ。これでひとまずは依頼終了だ。

報酬は各自のギルド口座に入金されるから確認しておけ。追加報酬も同じだ」

疲れた様に一息で語ると届けられたエールを一気飲みする。


「それと、ケントだが・・・」

言われてみればケントがいない。


「あのバカ!口塞いでた布取ったら、イリックさんに暴言吐いたんで、

訓練場に連行されてった」

処置無しとばかりに片手で額を抑え、頭を振っている。


「あ~ご愁傷様」

エミリオの笑顔が引き攣る

・・・エルダは我関せずでシドラを飲みながら、串焼きを食べている。

その酒、何杯目ですか・・・?


「話としてはそれくらいだな。後良かったら、フレンド登録しておかないか?」


「おっけー」

言うが早いか、エミリオは自身のギルドカードをさっさと渡していた。

私とエルダも差し出し、全員でフレンド登録をした。


「おし!まぁこの依頼はこれで終了なわけだが、また機会があったら組もうぜ!」


そんな感じで雑談にふけり、

1時間後・・・私以外全員酔いつぶれていた。


店員さんが来て手早く仮眠室に放り込んでいった。

仕方ないので自分の分の会計を済ませ、アディの工房に戻る。


外に出ると朝の活気が溢れていた。

ん~なんだかんだで、探索より、酒場にいた時間の方が長かったのでは…?

探索の方が長かった・・・はず!



◇◇◇



魔法ギルドに戻ってきた。


今日は珍しく左側の受付に人がいた。

受付の人の性別は…どっちだろう?

大きいローブを被って寝ているせいで、

性別の判断が出来ない。


起こさない様にいつもの部屋に行こうと、

カウンターの横を歩いた瞬間、体が動かなくなった。

足も腕も体も頭も空間に固定されたかのように、一切動かなくなったのだ。

声も出せないまま、混乱しているとすぐ後ろから女性の声が聞こえた。


「誰?」

・・・話せないのだが・・・?


「もう一度だけ聞く。誰?・・・あ、これで声だせるようになったはず」

謎の女性はこちらが声を出せないことを忘れていたようだ。


「あ~。うん。私はイザナ。アディの弟子です」

声が出せるようになったので、簡単に自己紹介していく。


「・・・嘘。異邦人があのぼっちのアディの弟子に成れる筈がない!」

・・・ここまで強く断言されるってアディ。貴女は今まで何をしてきたんですか?


「本当です。工房に仮眠室も貰ってます!」

次の瞬間、首に冷たい金属の…刃物だろうか?

そんな感じの何かが触れているので、慌てて言葉を重ねる。

「嘘だと思うならアディに直接確認を取ってください!」


「・・・ふ~ん。ならこのままなら連れてく。」

疑いながらも、弟子である可能性を認めてくれたようだ。


身体が少し宙に浮くとそのままの姿勢で工房のまで連れていかれた。


◇◇◇


宙に浮いたまま固定された私を見て、


「おぉ?愉快な姿勢で何をやっているのだ?」

アディは心底不思議そうな顔で、さも私が望んでやっているかのような口ぶりだ。

・・・何をやっているように見えますかね?


「このイザナはアディの弟子ってホント?」

謎の女性がアディに聞く。


「そうだぞ?つい先日弟子にしたばかりだがね?」

アディ…


「・・・そう。てっきり異邦人だったから、

押し入り強盗を行おうとしているのかと・・・」

マジか…異邦人やらかし過ぎでは…?


「イザナもごめんね?」

次の瞬間、身体が解放され動くようになった。


「あ~、うん。まぁ実害がなかったし、もういいですよ」

実際異邦人というだけで、ここまで警戒されるとは…


「そう。何かあったら一度だけ手助けしてあげる。アディも悪かったわね?」

そう言い残して、謎の女性改め、ローブの女性は工房を出ていった。




「ふむ。誰だ・・・?イザナは知っているか?」


・・・?

「私は知らないけど?、アディの知らない人?」


「ローブを目深にかぶっていたから、てっきりただの不審者かと…」


「受付の左側で寝てた人だと思う」


「はて?・・・あぁ受付は3席あったな。そういえば」

3席あったこと自体忘れていたようだ。

・・・ボケた?


「む?普段は受付に誰もいないからな。私がボケたわけではないぞ?」

私の表情に気が付き、反論してくる。

「一番左の席ということは、複合Jobが専門か…?」


「そんな区別があるの?」


「あぁ。左が複合、真中が特化、私が普段いる右が派生だ。

それぞれの専門家を受付に配置するわけだが、

魔法ギルドに来るものが少ないから、普段は誰も受付にいないのさ」

それって・・・サボりでは?


「まぁいいさ!複合の誰かというのが分かれば十分だ!

きっといつか思い出すさ!・・・多分

言い忘れていたね?イザナお帰り」

結局考えを放棄したようだ。


「ただいま」

軽く一礼して返した。




NAME:伊舎那イザナ

RACE :ヒューマン/14〈1〉

AGE:15 /15〈0〉


Job:魔力使い/13〈1〉

Sab:薬士/10〈1〉

残JP〈14〉


HP:45 〈0〉

MP:199〈28〉[+190]合計値:417

SP : 90 〈10〉


STR:(筋力) 5 〈〉

VIT:(頑強) 5 〈〉

AGI :(敏捷)   5 〈〉

DEX:(器用 ) 14〈2〉

INT:(知力) 31〈6〉

MID:(精神) 15〈2〉

LUC:(幸運) 5 〈〉

残ステータスポイント〈9〉

スキル

Job

魔力系

〈魔力操作/12〉〈術/12〉〈魔力術/10〉

〈属性適正/10〉

〈火属性魔法/8〉〈風属性魔法/4〉

生産系

〈調合/2〉〈錬金〉

Status

〈器用強化〉〈知力強化〉〈精神強化〉

Common

〈採取〉〈植物知識/2〉〈鑑定〉〈識別〉

称号

〈術〉の入門者/1〈1〉:MPに〈術〉x10の追加補正

〈魔力〉の入門者/1〈1〉:MPに魔力系スキルx10の追加補正

〈火属性〉の入門者/1〈1〉:火属性使用時、消費MP:〈1〉減 

〈風属性〉の入門者/1〈1〉:風属性使用時、消費MP:〈1〉減 

〈魔法使い/見習い〉/1〈1〉:魔法スキル使用時、消費MP:〈1〉減

〈アドリアーナの弟子〉/1〈1〉:MPに+10補正

※消費MP:〈1〉以下にはならない

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