第11話 〈逃走〉
今までの小部屋と扉の大きさが違う…
「あぁ、確実に上位種がいるな」
ロキュスが面倒そうな顔をして言った。
「うん扉のサイズからして、位階〈2〉だね」
エミリオは少し楽しそうだ。
「エルダは治癒を適時飛ばしてくれ」
ロキュスがエルダに向き直り指示をした。
「わかった」
小さくうなずくエルダ。
「ケントとエミリオは上位種を牽制。
イザナは俺が合図したら敵を薙ぎ払え」
「「「了解」」」
全員気合を入れなおし、扉を開け一気に突入した。
「『かかって来いヤァ!』」
ロキュスがスキルの乗った挑発を行う。
敵の数は6体。武装個体は1体だ。
剣で武装しているスケルトンが、ロキュスとの距離を一気に詰める。
他のスケルトンより早い!
・・・ホブゴブリンよりだいぶ弱い?
〈識別〉!
スケルトンウォリアー/11〈2〉Job:剣士/29〈2〉
「敵スケルトンウォリアー11、Job29です!」
「わかった!もう少し敵視取ったら合図出すぞ!」
〈ファイア・ボール〉用意完了!
消費MP:10で行ってみようか!
エルダはロキュスが上位種から攻撃されるたびに回復を飛ばす。
一回の回復量を下げて、敵視をとらないようにしているんだろうか?
・・・もしかしてスキル上げだったりして?
「おし!全員下がれ!イザナ撃て!」
発射!
敵が気付いた!でも当たる方が早い!
"ドォーン"
爆炎で視界が一時的に遮られる。
「エミリオ、ケント警戒しろ!!」
《只今の戦闘勝利で経験値を取得しました》
《レベルアップ:【種族:ヒューマン/13】〈1〉》
《種族レベル上昇によりステータスポイントを〈1〉獲得しました》
《レベルアップ:〈魔力使い/12・薬士/9〉〈1〉》
《Jobレベル上昇によりJPを〈2〉獲得しました》
《レベルアップ:〈魔力操作/11〉》
《レベルアップ:〈術/11〉》
《レベルアップ:〈魔力術/9〉》
《レベルアップ:〈属性適正/9〉》
《レベルアップ:〈火属性魔法/8〉》
・・・視界が戻った。
敵は倒せたようだ。強さの割に経験値高いのかな?
「おし!お疲れ!10分程休憩いれるぞ」
疲れてはいないが、MP回復のため座って楽な姿勢をとる。
「おぉ!さっきレベル上がったばかりなのに、今回も上がったぜ!」
ケントが大はしゃぎだ。
その様子を見てエミリオが苦笑しながら理由を教えてくれた。
「スケルトンの上位種は強さの割に経験値いいからね。
ドロップが魔石くらいしかないのが難点だけどね?」
「だが、スケルトンは位階が上がるごとに爆発的に強くなる。
ゴブリンなんかのイメージでいると、死ぬぞ?」
ロキュスが真剣な表情でケントを諭す。
「でも、進化個体でもあんま変わんなかったぞ?」
疑問そうに聞き返した。
「進化するごとに、能力制限が解放されるって噂も有る。
噂だと通常のスケルトンは、本来の1割程度の能力値だって話だ。
実際進化個体は他の魔物の進化と比べても伸びが高い。
ま、おかげで位階が低いうちは狙いどこってわけだ!」
ニヤリと笑いながらロキュスは話を締めくくった。
「ほーん?まぁいいや。経験値効率がいいし、どんどん倒そうぜ!」
ケントは話された内容にあまり興味がない様だ。
「ん~。この経路だといくつ部屋がある?」
ロキュスがエミリオに聞く。
「ん~地図を見た感じまだまだあるけど、後4~5個くらいで戻り始めないと、
探索時間が5時間を超えてしまうね。」
ギルドで支給されたと思わしき地図を見せながら説明してくれた。
「そうか。とりあえず4部屋クリアしたら時間を見て戻るか考えよう。
それでいいな?」
「僕はおっけーだよ」
エミリオが返事をする。その隣でエルダが無言で首肯する。
「私も!大丈夫です」
「もう少し行ってもよくね?」
ケントはまだレベルを上げたいようだ。
「時間を見て決めるさ」
ロキュスが締めくくり、立ち上がった。
休憩は終了のようだ。急いで立ち上がり、軽くほこりを払う。
外では汚れなかったのに、ダンジョン内だと汚れるのか・・・
ローブの裾を見てそんなことを感じた。
「よし、次の部屋目指すぞ!問題ないな?」
全員首肯で答えた。
奥の扉を開けると・・・
スケルトンが通路を埋め尽くしていた。
「はぁ!?なんで通路にスケルトンたちがいるんだよ!?」
ケントが絶叫した。
見た感じ、手前は普通のスケルトンが多く、まばらに上位種がいるようだ。
「まずい!奥の部屋全然間引かれてなかったらしいから、
進化個体が溢れてきたんだ!何回か進化してる奴がいるかも!」
エミリオが叫ぶ。
「全員部屋の中に戻れ!入口は俺が引き受ける!
敵が溜まったら、イザナ!お前の判断で魔法を使え!」
ロキュスが手早く指示を出した。
「了解!風属性魔法で攻撃します!」
こんなに数がいるんじゃ、爆炎で視界遮られたら不味いよね…
前回使用した際、MP:20で範囲が20m程まで拡張したんだから、
〈ウィンド・カッター〉MP:20で展開!
これで道幅と同じくらいの範囲に攻撃できるはず!
「〈ウィンド・カッター〉撃ちます!避けてください!」
ダメージは入らないが、ノックバックが発生するため、ロキュスに声をかけた。
ロキュスが体をずらした瞬間!
通路にいたのが流れ込んでくる!
〈ウィンド・カッター〉発射!
"ヴゥーン"
低い唸り声のような音をあげて、
〈ウィンド・カッター〉が飛んで行った。
見える範囲の敵は、腰骨のあたりで切断されていき、次々消えていく。
撃った次の瞬間には、新たに〈ウィンド・カッター〉を展開。
「次、撃ちます!」
「次撃ったら少し様子を見るぞ!」
「了解!」
〈ウィンド・カッター〉発射!
2回目の攻撃で凡そ部屋のすぐ外にいた魔物は討伐できたようです。
「よし!もう一度俺が壁になる!エミリオ照明弾で奥を強く照らせ!」
「おっけー。いくよ!」
ロキュスとエミリオが息の合った連携をとる。
"ヒューー" "パッ"
奥が一瞬強く照らされた。奥の方の敵は上位種が多いようだ。
しかもなんか、魔法効いてなかった感じでしょうか?
「位階〈5〉以上の可能性が高い!撤退するぞ!」
魔法が効いてないと思われる個体を見たロキュスが叫んだ。
「おっけー!妨害矢射るよ!〈戦技・ハウリングアロー〉!」
戦技…スペルの代わりに物理職が持ってる専門技能!
撃たれた矢は残響を残しながら敵に飛ぶ。
残響は矢を追いかけるように空間に波紋を残す。
「妨害矢撃ったから少し時間が稼げるはず!
今までの通路は、トラップなかったの確認済みだよ!」
エミリオが始めてみるような焦燥を見せる。
「全力で引くぞ!イザナ、エルダは先行しろ!
次の部屋に入ったら、もう一度足が速い奴を魔法で攻撃!
そのあと妨害矢でもう一度足止め!行けるな?」
「任せて!」
エミリオがウィンクを飛ばしながら余裕を見せる。
「俺は!?何をしたらいい!?」
ケントが叫ぶ。
「今は撤退だ!入口付近では敵が大幅に弱体する。
そこで上位種と戦う!それまで他のメンツのカバーだ!」
ロキュスが殿を務めながら、返事をする。
「わかった!」
ケントも不満げな表情ではあるものの、納得したようだ。
走る・・・AGI全然振ってないから、私が一番遅い・・・
「あちゃ~。敵の一部が追い付いてきた!もう一回妨害矢撃つよ!」
エミリオが後ろを振り返り敵が近づいてくるのを確認した。
やっぱ私の足が遅いせいだな・・・
「私異邦人だから、死んでも大丈夫です!皆さん、私を置いて逃げてください!」
「馬鹿野郎!何のためのPTだと思ってるんだ!
足が遅いってだけで置いていくかよ!
そんなこと言ってないで速く走れ!」
ロキュスに怒鳴られた。
「了解!なら!逃げ撃ちします!」
これなら経験があるし、少しは役に立つはず!
「敵の足止めは僕がやるから、イザナは早く走ることだけ考えてて!」
エミリオにも強く言われてしまった。
「はい…」
少し落ち込む…
「上位種と戦う時頼りにしてるぜ!」
ロキュスに慰められた…
「大丈夫。人には役割がある。私も今は役に立たない。」
かなり辛そうに息を乱して、走りながらエルダが励ましてくれた。
「ありがと!」
小部屋が見えてきた。
「小部屋に入ったら一度扉を閉める。
小休憩したら、小部屋の中に簡易トラップを仕掛けて、
もう一度、次の部屋まで走るぞ!」
◇
小部屋に駆け込み急いで扉を閉めた。
《只今の戦闘で経験値を取得しました》
《レベルアップ:【種族:ヒューマン/14】〈1〉》
《種族レベル上昇によりステータスポイントを〈1〉獲得しました》
《レベルアップ:〈魔力使い/13・薬士/10〉〈1〉》
《Jobレベル上昇によりJPを〈2〉獲得しました》
《【薬士/10】到達によりステータスポイントを〈1〉獲得します》
《レベルアップ:〈魔力操作/12〉》
《レベルアップ:〈術/12〉》
《レベルアップ:〈魔力術/10〉》
《レベルアップ:〈属性適正/10〉》
《レベルアップ:〈風属性魔法/3〉》
《レベルアップ:〈風属性魔法/4〉》
戦闘勝利じゃないんだ…逃げたからかな?
でも、経験値美味しいです><
「ふぅ~。エミリオ。トラップの方お願いできるか?」
「大丈夫さ!ただ、あとで経費で落としてくれないかな?」
「いくらだ?」
「簡易トラップだから3000Dあれば十分」
「わかった。ギルドに請求しよう」
「トラップ仕掛けるより、ここで戦った方がよくね?」
ケントが逃げるのに飽きてきたのか、戦闘意欲を見せる。
「無理だな。魔法に対する抵抗を持つ個体は基本的に位階〈5〉以上の個体だ。
どうあがいても今の俺たちじゃダメージを入れる事すらできない。
入り口付近なら神殿の加護により、不死種に対する特効が付与される。
そこまでまともな戦闘はお預けだ!」
ロキュスは苦笑して暴走しそうなケントを諫めた。
「よし、小休憩終わりだ。もう一走るぞ!」
小部屋を出てから扉を締め、再び走り出した。
黙々と走りづける中、ケントがぼやき始めた。
「トラップ張ったせいで、敵追っかけてこれて無いじゃん?
このままだと敵こなさそうじゃん。どうすんの?」
「敵が来ないなら来ないでいいのさ。とりあえず、この後の予定だ。
入口に一番近い部屋に行ったら、エミリオにギルドまで応援を求めてもらう。
エミリオが応援を呼んでくるまで残りのメンツで部屋を死守する。いいな?」
ロキュスが走りながら少し気楽そうに今後の予定を語る。
「はぁ?なんで他に人を呼ぶのさ!経験値分散するだろ!?」
ケントが怒り混じりに吐き捨てた。
「最悪、位階〈6〉以上や、希少種なんかだと俺たちじゃ時間稼ぎにもならん。
位階〈5〉までなら倒せるかもしれんが、それだって安全に倒せるわけじゃない」
諦観を見せながらケントに答えた。
「入り口付近なら特効が付くんだろ?なら、それで余裕じゃないのかよ?」
経験値を諦めきれないのか更に食って掛かる。
「無理だな。単純に耐性を減衰させるだけで、能力値が0になるわけじゃない。
一撃でも掠れば、俺でもキツイ。攻撃力が圧倒的すぎるんだよ」
この中で一番守備力とHPが高いロキュスでもキツイって…
能力減衰してそれなら本来だったらもっと強いってことだよね?
普通にやばくない…?
全然倒せるイメージ湧かないんだけど…?
「ふぅー。まだ敵は追いかけてきてない様だね。次の部屋まであと少しだ!」
エミリオが後ろを振り返り、敵の有無を確認してくれたようだ。
小部屋までの距離は後僅かだ。
◇
( ´Д`)=3 フゥ―
部屋に駆け込み息を整える。
「うん。二人とも大丈夫か…?」
ロキュスが私とエルダの様子を見てドンびいてる。
仕方ないじゃないか!あんまりSP無いんだから!
ちなみに現在の残SPは驚異の〈2〉である。
幸い空腹値はまだ7割がた残っている。
「エミリオ、疲れているところ悪いが、
この部屋の入り口に簡易トラップを設置してくれ。
その後、なるべく早く応援を呼んできてくれ」
ロキュスが申し訳なさそうに、エミリオに話しかけた。
「おっけー。トラップ設置したら早々に行ってくるよ!」
エミリオは余裕そうに返事をした。
物理職体力有りすぎない・・・?
先程からケントは不機嫌そうに黙り込んでいる。
ロキュス達とも視線を合わせないようにしているようだ。
戦闘が出来ないのがそんなに不満なんだろうか・・・?
しばらくすると、エミリオが扉の前から戻ってきた。
「設置終わったから応援呼んでくるね~」
軽く手を振りながら高速で走って行った。
さっきまでは、やっぱり合わせてくれてたんだね。
ロキュスは武具の軽い点検を行っている。
点検が終えると、エルダに近づいて何か渡そうとしている。
しかしエルダは拒否しているようだ。
・・・あれは、ポーション?
「あの~どうしたんですか?」
「ん?あぁ、エルダのSPが5分の1を切ったから、
ポーションで回復するよう促しているんだが……」
「いや!おいしくないもの!」
「このありさまでなぁ?」
左手で頭を掻きながら困ったように苦笑している。
「わかる!おいしくないよね!」
「うん!」
エルダが珍しく全力で首肯してきた。
「イザナもそっち側かぁ~」
天を仰いでため息をついているのを横目に、エルダに同意した。
だって!ポーションは、不味いじゃん!
「あ~でも、このポーションそこまで効果高くないから、
味もだいぶマシだぞ?いつ敵が来るかもわからないんだから、
しっかりSP回復させておかないとまずいだろう?」
おっしゃる通りです。でも、不味いんです!
「私達物理系じゃないから、SPなくても何とかなる!」
エルダが自信満々に言い切った。
「今残SPいくつよ?」
「私は〈2〉です」
「フッ。〈1〉!」
「悪いこと言わないから、余裕のあるうちに飲んどけ?な?」
額に青筋を浮かべたロキュスが怖い・・・
「わかりました・・・」
ロキュスが一本渡してくれた。
仕方なく、本当に仕方なく、"グイッ"と飲み干した。
・・・? ・・・あれ? そんなに不味くない?(美味しくも無いけど
意外と、『レモンティー』に苦味をプラスしたような味でした。
「意外といける・・・なんで!?前飲んだのすっごい不味かったのに!」
「ん?SPポーションの一番安い市販品だぞ?
大体の奴は、それくらいの味だ。
味が不味いのは、濃縮した奴とかだな。」
・・・なるほど。
慌てて初心者ポーションを出して、〈鑑定〉してみた。
ポーション:初心者用SPポーション
〈SP〉を回復する秘薬:媒体/ポーション
SPを最大値の50%回復 ※種族レベル20以上使用不可
条件付きでSPの割合回復を達成した秘薬。
※チュートリアル報酬により獲得。(販売不可)
「さっきのSPポーションは、品質値幾つでしょうか?」
「ん?品質値なら6だぞ?一番安い奴だからな」
Σ( ̄ロ ̄lll)ガーン 普通のポーションなら不味くないのか!
「そこまで不味くないの?」
エルダが私の様子を見て、興味を持ったようだ。
「あぁ、効果が高い奴は不味いのが多いが、これはそうでもないぞ?」
「なら飲む」
「ほらよ」
「………」
無言で受け取り、一気に飲み干した。
「うん。不味い。でも、何とか平気だった」
「そうか、そりゃよかったな?」
呆れた様にぼやき、脱力した。
◇◇◇
無言の時が続く。
30分程たっただろうか?
入口の方の扉からざわめきが聞こえてきた。
「やっと、応援が来たみたいだな」
ロキュスが小さく呟いた。
◇
NAME:
RACE :ヒューマン/14〈1〉
AGE:15 /15〈0〉
Job:魔力使い/13〈1〉
Sab:薬士/10〈1〉
残JP〈14〉
HP:45 〈0〉
MP:199〈28〉[+10][+120][+60]合計値:417
SP : 90 〈10〉
STR:(筋力) 5 〈〉
VIT:(頑強) 5 〈〉
AGI :(敏捷) 5 〈〉
DEX:(器用 ) 14〈2〉
INT:(知力) 31〈6〉
MID:(精神) 15〈2〉
LUC:(幸運) 5 〈〉
残ステータスポイント〈9〉
スキル
Job
魔力系
〈魔力操作/12〉〈術/12〉〈魔力術/10〉
〈属性適正/10〉
〈火属性魔法/8〉〈風属性魔法/4〉
生産系
〈調合/2〉〈錬金〉
Status
〈器用強化〉〈知力強化〉〈精神強化〉
Common
〈採取〉〈植物知識/2〉〈鑑定〉〈識別〉
称号
〈術〉の入門者/1〈1〉:MPに〈術〉x10の追加補正
〈魔力〉の入門者/1〈1〉:MPに魔力系スキルx10の追加補正
〈火属性〉の入門者/1〈1〉:火属性使用時、消費MP:〈1〉減
〈風属性〉の入門者/1〈1〉:風属性使用時、消費MP:〈1〉減
〈魔法使い/見習い〉/1〈1〉:魔法スキル使用時、消費MP:〈1〉減
〈アドリアーナの弟子〉/1〈1〉:MPに+10補正
※消費MP:〈1〉以下にはならない
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