第6話 〈異変〉

□始まりの町アデーレ広場噴水前


アディの助言通り南の草原で戦闘を行うことにした。


魔法ギルドから冒険者ギルド前の大通りに出て、

最初にいた広場を経由して南門へ行く道順だ。

(方向音痴だから、違う道行ったらわかんなくなるしね!)


広場ではチュートリアル報酬の初期装備の人が大勢いる。

大声でPT募集を行っているようだ。


新しくログインしてきたと思われる人たちも、

チュートリアルをスキップして報酬だけ受け取る人がほとんどみたい。

みんなゲーム慣れしてるんだな…


私はリアルもゲームもソロですから!(悔しくなんてない!…多分)


広場を越えて南門への大通りを歩いていると、

左右には様々な飲食店、武具修理専門店、ポーションなんかを扱っている道具屋。

店と店の間にある住宅の前では、串焼きなどの屋台が軒を並べている。

馬車が5列並べるくらいの道幅なのに狭く感じるから不思議だ。


商売の掛け声が、周囲を包み込む。

あぁ、現実じゃ味わえない熱気だ。


一時この世界のリアルさに酔いしれる。



広場の喧騒から離れ、南門付近では魔物の貸し出しを行っている店が増えてきた。遠方に行く予定もないから今回は店に入らなかったけど、

見たことのない魔物が色々いて、見てるだけでも楽しめそうだ。


動物の生活臭は感じられずどちらかというと花(?)の香りを強く感じる。

香りの元をさがしてみると、何かのマジックアイテムだろうか?

店先にある鈴が魔力を発しているようだ。鈴は風でも揺れるが音がしない。

音の代わりに匂いを発しているようだ。



南門に付いたものの、結構人がごった返している。

門は完全に開いていて出入りが自由のようだ。


「こんにちわ」

無言で目礼を返してくれた。身長は180くらいだろうか?

フルプレートアーマーと腰に長剣を装備していて、とても強そうだ。

〈魔力感知〉で感じる魔力も私の魔力の優に数倍はありそうだ…

物理系戦闘職だよね・・・?


門をくぐると草原の真ん中に整地されている道が西に逸れながら続いている。

草原の先に微かに森が見える。道は森を避ける為に逸れているようだ。


ふむ?魔物がいそうな場所は東側の草原かな?プレイヤーらしき人影がちらほら見える。見える範囲で見つけたのは、兎(?)と、

チュートリアルでも見たゴブリンが大量にいるようだ。


・・・ゴブリンの群れが南門に向かってきてない?そうでもないのか?

とりあえず、ちまちま端から削っていこうかな?



門から800m程離れてから、一番近いゴブリンの群れに向かう。

一番近い場所にいたのは、棍棒と素手混合のゴブリン5匹だ。


距離は50mくらい〈エナジー・ボルト〉でいけるかな?

当たらなくても釣れるだろうし、狙いを定めて。

〈エナジー・ボルト〉

一匹当ったかな…?うん。当たったみたいだ。

一撃で沈むから楽だね。


私の方を指でさしてギャーギャー叫んでる…

その間に連続して〈エナジー・ボルト〉!


・・・所詮ゴブリンか。緊張感が無駄になった。


《只今の戦闘勝利で経験値を取得しました》


うむ。経験値がうまい!…かな?


・・・やっぱり一部のゴブリンの群れ近づいてきてない?



400m程先にゴブリンの群れ発見!

兎を狩っているようだ。死体残るの?グロイ。

さっきのゴブリンは直に消えたんだけど…?


まぁいい。数は…?

・・・数え間違いじゃなきゃ24?

ゴブリンてこんなに群れるものなのかな…?

まぁ弱いからこれだけ群れる必要があるのかな?


さっき5回撃ったし残弾19だよね。


”簡易ステータス”

HP:45/45

MP:194/244

SP:84/90


うむ。必要なとこだけ出せた。

MP全快するまで敵を観察してようか…


…SP微妙に削れてる?なんでだ?走ったから…?


・・・ゴブリンに注目されて無いよね?

座ってMP回復に努める。



10分後

ん~他のプレイヤーは近くにいないし、兎は近寄ってくるけどすぐ逃げちゃうし、

あれ?なんかこっち見てる?見つかった!石投げてきてる!(全然あたらないけど


逃げながら撃つかな?他の群れがいない場所は…?あっちだね!

後ろを振り返りながら近づいてきた個体を狙う。


うん。例え掠っただけでも、当たればワンパンだね!

〈エナジー・ボルト〉は掠っただけでも消えてしまうのが残念。

威力は十分すぎるくらいなんだけどね。


10回撃ったくらいから〈エナジー・ボルト〉の〈魔力〉の流れが感じられてきた。

ん~…消費MP変えられるかな?後ろを振り返らないで走りながら試す。


行けそうかな…?試しに一発!

〈エナジー・ボルト〉!

うん。消費MP:5でも威力は十分みたいだね。



ん、一回で倒せないのも出てきたけど、2回当てれば倒せる!

こっちのが戦果効率的…?


逃げ撃ちしてたら遂に待望のアナウンスが流れてきた。


《只今の戦闘勝利で経験値を取得しました》


( ´Д`)=3 フゥ終わった~。


つい溜息を吐いてしまう位、精神的に疲れた。


他の群れの位置確認しなきゃ。近づいてきてるのかなぁ?

遠すぎてわからん…



そういえばステータスポイントとか振ってなかった…後で振るか。

経験値も7割方埋まってるし、あと一回くらい群れ討伐してみようかな?


索敵中…


うむ。あれは無理だ。ホブゴブリンがいた…

見つからないようにササッと逃げる。ダイジョブだよね?

他の群れは~出来るだけ此の群れから離れたところで探すか。


◇◇◇


索敵中…


発見!

ホブゴブリンは周囲にいない感じかな…?

敵の数凡そ20!正確な数は不明。

見つからないように800m程離れた位置で休憩。


”簡易ステータス”

HP:45/45

MP:11/244

SP:87/90


MPギリギリだな…回復速度低下付いてるし。

初心者用MPポーション使いますか!


味は・・・エッグイ。ニッガイ。ナニコレ。説明二度見したよ?

味の忠告とか無かったよね?〈鑑定〉ないとこんな罠あるの?


”簡易ステータス”

HP:45/45

MP:133/244

SP:87/90


うむ。

MPは回復したけど、もう飲みたくない…覚悟を決めるか…(`・ω・´)

不味い。なんでこんなにリアルなんだろう…?

リアルでもこんなまずいの飲んだことないよ…?

運営さんちゃんと試飲してるの!?(錯乱)


まぁいいや。

・・・なんか体が光って見える!何故!?


”簡易ステータス”

HP:45/45

MP:254/244

SP:81/90

※魔力過剰


見ている間にも最大値以上のMPが減少してる。1秒に1かな…?最大値を超えてる分が減少してるってことでいいのかな…?わかんないけど、今のうちに攻撃しなきゃ!あんなに不味い思いをするのはもう嫌だからね!


引き撃ちを行いながら敵を討伐。

使用するのは〈エナジー・ボルト〉消費MP:5


連射だ~!ってなんか倒しにくくなってる…?

さっきまでの群れと違って、3回攻撃しなきゃ倒せないのがいる。


明らかに個体レベル上がってるよね…?

距離が20mまで近づいた時には敵の数は5体前後。


!まず…焦って狙い外した!


ゴブリンが奇声を上げながら駆け寄ってくる。

私より走るの早いみたいだけど、足の長さのおかげで逃げきれてる感じ。


もう後ろに撃ちながら走る余裕ないんですけど…?

おぉ…?このままだと他のゴブリンの群れにぶつかりそう…


一気に反転ダッシュ。


ゴブリンが驚いてるけど、さらに敵が増える方が問題だからね

一気に狙いを定めて3発ずつ連射!


よし!残ってるのは1体だけ!


ラスト!

発射と同時にゴブリンが石を投げてきた…(だからどこ狙ってるのさ)


《只今の戦闘勝利で経験値を取得しました》

《レベルアップ:【種族:ヒューマン/7】〈1〉》

《種族レベル上昇によりステータスポイントを〈1〉獲得しました》

《レベルアップ:〈魔力使い/6・薬士/3〉〈1〉》

《Jobレベル上昇によりJPを〈2〉獲得しました》

《レベルアップ:〈魔力操作/6》

《レベルアップ:〈術/6》


ん~倒せたけど、幸運に救われてって感じだね…

3発ずつ撃ったけど、一回で倒せたのも2匹いたし、

余裕がなかったせいでMP無駄にしたね…


”簡易ステータス”

HP:45/45

MP:38/244

SP:37/90

危ない…後7発で打ち止め…他の群れに突っ込んだら死んでたね。うん。



やっぱ雰囲気おかしいんじゃないかな…?

MPもほぼ無いし街に戻って聞いてみるか。



結局その後は、街に戻るまで戦闘を避けていったが、群れが多い。

それに一つの群れ当たりの頭数も多くなっているように感じた。


戦闘終了時に周囲の群れにいたのは20~25匹前後。

街に戻る途中50匹近い群れが街から離れた場所にあった。


見つからないように遠回りをしながら帰ってきたが、そのせいで30分近く時間を使ってしまった。死に戻りした方が良かったかな…?

まぁ、門まで戻れたしいいとしよう。


しかし…門が閉まってる…これどうしたらいいんだろう?

あっ!門の上に兵隊さんが見える!


「すいませーん!どこから入ればいいんでしょうか~?」


「まだ外に人がいたのか!」

なんか驚かれた…


「門の脇にある小さな扉を開けるからそこら辺で待ってろ!」


言われた通り大門の脇にある普通サイズの金属製の扉前で待っていると、

少ししたら扉の向こう側で話し声が聞こえてきた。

“ガチャン”扉が開いた。

「ほら!早く入れ!」

「はぅい!」

怖い顔で急かされたせいで、変な声が出た。(*ノωノ)


急いで中に入ると“ガチャン”

直に扉が閉じられ、頑丈そうな金属製の閂と〈魔力〉を発する白い木材の閂がかけられた。なじぇにこんな厳重なのでしょう…?

先程入れてくれた兵士さん(?)が近づいてきた。


強い緊張感によるものか顔が怖い。めっちゃ怖い。

リアルなら即座に逃げだしてるね!


「失礼!貴殿の名前と所属を証明できるものを提示してくれ」

反射的に聞き返した。

「冒険者ギルドのカードでよろしいでしょうか?」

「勿論だとも!では早速ギルドカードを渡してくれ」


強い目で睨むように言われた。反射的に渡してしまった…


カードを受け取ると兵士(?)は、腰に下げたマジックポーチから水晶玉を出して

カードを翳している。カードの紹介をしているのだろう…あってるよね?


「うむ!本人のカードであることの証明ができた。

身分の照会もできた事だし、こちらの事情もある程度説明しよう

良かったら外にいた理由を教えてくれないだろうか?」

多少緊張がゆるんだようだが、未だに威圧感を強く感じる。


「?外にいた事情といわれても、草原で魔物の討伐を行いに行っただけです」


「いったい何時だ?門は閉鎖されていたはずなのだが・・・?」


「いえ、門は空いてましたよ…?皆さん行き来してましたし?」


「ふむ?では昼前に出たということか…?よく生きてたな」

上から下へとじろじろと観察される…あまり愉快な気分ではないな。


「ところで、よく生きてたとは?」


「ん?あぁ今日の昼頃大量の異邦人が死に戻りにより神殿に溢れたのだ。

なんでもゴブリンの討伐を行っていたそうだが、特徴を聞くに、ホブゴブリンと思われる個体に攻撃して殺されたようなのだ…」


「ホブゴブリン?結構街の近くにいるんですか…?」


「いるわけないだろう?私達のような戦闘職ならまだしも一般人や生産職なんかはひとたまりもないのだから、定期的に私達〈騎士団〉に所属している者達が間引いている。なによりゴブリンの特性として格下からの取得経験値減衰が起きないのだ。確実に処分しているさ。そうでなければ手が付けられなくなるからな」


「なるほど…?」


「異邦人の馬鹿どもがホブゴブリンに突っ込んで死にまくった。確実にレベル50は越えているはずだ。もしリーダー種に進化されでもしたら街に攻め込まれるから、街の大門を閉めてたのだ。昼頃に神殿の緊急事態を知らせる鐘が鳴らされた。

鐘が鳴らされてからすぐさま門を閉じた。門を閉めてから帰って来た奴はいない」


「そんな中、私がのこのこ帰ってきたから不審者かどうか疑ったと?」


「そうだ。今日は身分証明のできない異邦人が多数いてね。余裕が無いから身分証明のできない輩は全員不審者として拘束しているのだ。

ところで、君はどうして無事だったんだい?」


「無事というか、私は見ての通り初心者魔力使いですから〈エナジー・ボルト〉で

最初は6匹の群れとで戦い、次に見つけた24匹の群れと戦いました。レベルが上がりそうだったのでもう一戦しようと群れを探したのですが、ホブゴブリンの群れがありまして、それをから距離を開けて20匹前後の群れと戦いMPが厳しくなったので帰ることにしたんです。途中で20匹以上の群れをよく見掛けました。最後の方は50前後の群れもありましたね。戦闘を避けるため、遠回りしたのですが、そのせいで30分近く彷徨いました。」


「なるほど…」

騎士の人は考え込んでなにかぶつぶつ呟いている。

ハッと顔を上げると、

「事情は理解した。解放するので自由にしてもらって構わない。協力感謝する」

最後に軽く一礼をして足早に去って行った。


あの人最後まで冑取らなかったな…


ん?口ぶりからすると、チュートリアルでギルドカード創ってない人が多かったのかな?危なかった~。


でも町がこんなに警戒態勢って、リーダー種ってそんなに危ないのかな?

魔法ギルドでアディに聞いてみようっと。


・・・全然採取できてないや。




足早に魔法ギルドに向かって歩く。





NAME:伊舎那イザナ

RACE :ヒューマン/7〈1〉

AGE:15 /15〈0〉


Job:魔力使い/6〈1〉

Sab:薬士/3〈1〉

残JP〈6〉


HP:45 〈0〉

MP:177〈17〉[+50]

SP : 85 〈5〉


STR:(筋力) 5 〈〉

VIT:(頑強) 5 〈〉

AGI :(敏捷)   5 〈〉

DEX:(器用 ) 13〈1〉

INT:(知力) 28〈3〉

MID:(精神) 13〈1〉

LUC:(幸運) 5 〈〉

残ステータスポイント〈6〉

スキル

Job

〈魔力操作/6〉New!〈術/6〉New!

〈調合/2〉〈錬金〉

Status

〈器用強化〉〈知力強化〉〈精神強化〉

Common

〈採取〉〈植物知識〉

称号

〈術〉の入門者/1〈1〉:MPに〈術〉x10の追加補正

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る