03 interlude & shift.

「ありがとうございます。その。彼にも、そう伝えていただけませんか」


「彼?」


 テンダー。首をかしげている。


「あ、兄ですか」


「はい。私が直接伝えるのは、差し障りが、あると思うので」


 涙が出そうになるのを、冷静に、こらえた。ひとりだったら、普通に泣いていたかもしれない。目の前には、テンダーがいる。泣けない。そんな自分が、すこし、みじめだった。


「差し障り?」


「結婚すると、聞きました」


 私ではない、相手と。


「結婚」


 テンダー。また、首をかしげている。


「兄が?」


「はい」


「聞いてない、ですけど。お相手は、あなたではないのですか?」


「はい」


 テンダー。分かった、という顔。


「勘違いされていませんか?」

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