log.2
目が覚めると、どうにも変な心地だった。箱の中にいるようで解放感もあるようで。
正方形に近い形に透明な板みたいなものが張られている。無意識にそれを触ろうとした。
触れそうになった瞬間、明らかな感覚はないものの、確かに手は板を通り越していた。そして変な心地の正体も判明した。寝そべっているはずなのに、背面が地についていなかったんだ。
とにかく妙な感を頼りに体を動かしてみる。
慣れていないからなのか、思うようには体は動かなかった。ゲームのバグみたいに地面に埋まったりした。これだけでも感は正しかったとわかった。数分この体質と格闘した後、ようやく自分をきれいな俯瞰視点で見ることができた。
そして俺は確実に幽体になっていた。俺の体は棺の中だった。しかも火葬場だ。自分の体が今から焼かれるとなると気持ち悪い。
コロコロと俺の体がでっかいオーブンに運ばれていく。
現実逃避からか、どうでもいいことばっか考えていた。
このまま成仏されないのか。永遠に死なない、死ねないとはこういうことなのか。俺は生前、無意識に不死を願っていたのか。
正直、意識があるままだから死んだことに実感が湧かなかった。ただ、中学の頃お世話になったおばさんや、荒れていた親父でさえ涙をながしていて「あぁ、死んだのか」と頭で理解するまでには辿りついた。
こんな状態で何をすればいいかわからなかった。考えた結果、とりあえず、家に帰ってみることにした。
虚無 羽海 凪 @nagi-integral
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。虚無の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます