第6話 エピローグ
「まったくもー。あなたって本当に、往生際の悪いストーカーなんだから!?」
「……ごめん。でもぼくも、この際責任を取ろうと思って」
「ごめんで済むなら警察なんていらないわよっ!?」
猛烈なスピードで上昇するロケットの、広い居住スペースにぼくらは倒れていた。
ぼくらは折り重なりあったまま、罵倒と謝罪を繰り広げていた。
大きさにしては少ないGで加速しながら、ロケットは方向を変え、空高くへと加速していく。
やがて軌道上へ出て、それから再加速し、ラグランジェ5地点の「方舟」へと向かうはずだ。
現在の地球上の技術では方舟の発進、いや、重量物発射機の軌道上の到達でさえ阻止することはできず、地球人たちはぼくらが地球上から去るのを黙って眺めるだけだろう。
残されたジェイムズたちは、ぼくが乗ったことを知って、大騒ぎしているかもしれない。
それとも厄介払いできたと、大喜びしているのだろうか。
「……で、どうするんだよ。ぼくは定員外だろう?」
ぼくが何とか転がると、山田さんはふわっと立ち上がり、そのまま高い天井へと舞い上がる。
まるで竜宮城の乙姫か、天女だな……。
「どうするって……」
山田さんは少し考えるふりをしてから、決めた、と告げた。
「こうなったら、私も責任を取るわ。……柏木くん、あなたも旅に連れて行きます」
「本当に!? ……ぐわっ!」
ぼくは喜びを全面に表そうとして立ち上がろうとしたが、Gのために手足を動かすのも一苦労だった。
「ほうら、人間の体じゃ高重力下では満足に体が動かせないんだから。これじゃ宇宙旅行にも不適合だし、なによりあなたは百年も生きられないから、すぐに私も私達だけになっちゃうわ」
「じ、じゃあどうするんだよ」
「決まってるでしょ」
宙に浮かびながら、山田さんは満面の笑みを浮かべて言った。
「あなたを、私と同じ『山田さん生命体』に進化させてあげるわ。これで、ずっと、一緒よ」
その時、ロケットが地球の重力圏から離れたらしく、ぼくの体がふわっと浮いた。
浮き上がりながら、ぼくは山田さんと手をつなぎ、二人で、微笑みあった。
永遠というものは、こういうものかもしれない。
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