第2話 スペックの高い女子
「それでお話とは・・・」
料理教室の後、見事に上本さんを誘い出す事に成功した。喫茶店でお話をと誘い、取材ということでお話を聞くことにしたのだけど、見れば見る度に目の前に座って少し緊張しているであろう女性に好感を抱いていた。それは、料理の手際もだが、所作が美しいところ。女性ならではの奥ゆかしさと言えばいいのだろうか。上本さんは女性が理想とする女性そのもののように思えた。女性がよく言うあざといとかそう言ったものを感じさせない女性にも好かれる様なタイプである。私にとってあまりに興味深く、上本さんをじっくり観察してしまっていた。そのせいで、上本さんを不安にさせてしまった様だ。
「あ、そうですね。コーヒーでも頼んでからにしましょう。今日の料理教室どうでした?理想的な方とかいらっしゃいましたか?」
「そうですね・・・」と考える仕草も洗練されていたりして。何この人?私すっごく興味あるって思っちゃうじゃん。お顔も綺麗な顔立ちだし、それに細くって、でも胸はあるわけ。普通の女性だったら嫉妬しちゃうとこだけど、こちとら女性大好き人間ですから、目の保養になっちゃうわけで。そんで、こんな女性だったらばっちこーい的な感情になってしまうんですよ。わかりますか?
コーヒーをウエイターさんが運んできてくれたので、いよいよ本題を交えつつ色々聞いて行くことにしよう。
「村上さんっていいなって思ったんですが」
先ほどの回答である。村上さん?はて誰だろうと考える。そもそも男性の名前をろくに覚えれない私が悪いのだが、上本さんにとってはその男性に好感が持てたようだ。
「あの、村上さんってどの方ですっけ?」
「松江さんに話しかけて頂く前にお話した男性なのですが。こう、髪が短めなスマートな方でした。」
あ。あの人村上さんって言うのか。とあの名前が浮かばなかった男性を思い出す。なかなかのやり手男性。女性の扱いも慣れているなと考えていた男性と見ていた私は納得していた。
「村上さん!あーなるほど。村上さんは確かに女性をよく見て判断されていましたね。」
「あ、もしかして松江さんも村上さんを?」
「え?いやいや、私はこれの為に取材で参加しただけですから」
不安そうな申し訳なさそうな顔で上本さんが言うからあわてて否定した。「そうですか」と苦笑い交じりにほっとしたような表情をする上本さんに、少し嫉妬を覚えなくはない。男性を求めてあの料理教室に参加したのだから当たり前と言ったらそうなのだけど、いいなと思う女性が他の人に好感を持っているという事は、そういう感情をもつのは当たり前なんじゃないだろうか。話を変えるために、上本さん本人の事を色々とお話が聞きたいという事を話し、本人の話題に変更した。
「それで、今回婚活が売りの料理教室に行こうと思ったきっかけを教えて貰えますか?」
「それは、私実はバツイチでして」
バツイチと言った事で納得したのは料理の腕前である。上本さんの年齢は34歳という事は料理教室の時に聞いていた。何でも、23歳の時に結婚して離婚したのだとか。
「それで、子供がいまして。お父さんが欲しいと言うもので」
「あーなるほど」
まさかの子持ちだったという衝撃事実が発覚した。だが、23歳で結婚したなら不思議ではないことではあるが、子供産んでこのプロポーションを維持できているという事がすごい!こんな美人な母親の元に生まれた子供は幸せだろうと勝手に思っていた。
「子供さん何歳なんですか?」
「今、8歳になります。」
8歳と言うと、小学2年生くらいか。悪く無い。私は意外と子供には好かれる方である。ジャリボーイ何かは得意中の得意である。アクションヒーローの役だって簡単にやってのける自信がある。地元のジャリボーイ達と戯れていた遠い記憶を思い出した。変身ポーズを高らかにキメてた私。子供相手に本気にキメるのは大事な事。その時に恥ずかしがる大人というのは子供というのは解ってしまうものだ。それは幼い時に男子とよく遊んでいた経験を持つから知っていた事。本気でなりきることが大切なのである。キメれば、それで心を掴むことが出来るんだから。
そんな事を思っていた私は明らかにこの上本さんに興味が出てきたという証拠である。仕事以上に女性を品定めしているという感覚があった。だって仕方ないじゃない。こんな理想的な人いる?落ち着いてるし、家庭のこともできそう。そして、美人でプロポーションがいい。控えめに言って最高じゃない?
「あの、掲載内容の報告をしたいのですが、連絡先交換していただけませんか?」
十分に情報収集はした。だけど、いつもだったらありがとうございました。と言って別れる相手なのだが、この上本さんとの繋がりをどうにか維持しておきたかった私は彼女にそうやってずるい手段を使ったのだった。
「何か嬉しい事あったわけ?」
上本さんと別れた後、自宅に旬が来ていた。帰って早々言われたのがそれである。それを不思議に思わないのは旬が私の分かりにくい表情を読む天才だからである。旬には結婚していた頃からそのままカギを渡したままだったから家ではそれが普通だったりする。まぁ、見られて恥ずかしくもなければ、居て当然だった結婚生活があったからだったのだけど。結婚生活と言うより、ルームシェアに極めて近かった私達だから不思議な事ではない。
「マジでスペック高い女子いたの!」
私のテンションはマックスである。だってこの興奮、旬くらいにしか言えない。てか親友なんだからこの喜びを共有したいという感情である。
「どーどー落ち着け」
「だって最高よ?料理も私くらいだし、落ち着いてるし、美人でこれなのよ!」
胸が大きいというジェスチャーをして見せると、旬は苦笑いして「わかったから」
と言いながら私をソファーに移動させ、お茶を入れてくれる。家主としてはどうかと思われるかもしれないが、旬はそれが当然のようにそつなくこなす。旬が女子だったらたぶんこいつを選ぶだろうなと何度も思った事がある。
「で、そんなに好みだったわけね」
お茶を出しながら聞いてくる旬に私もそれが当たり前になってて、「そうなの!」と興奮気味に答えた。
「へー理恵子が言うなら間違いないじゃない」
「でしょー?」
「で、その人に不安は?」
「んー特に見あたらないかなぁ。あえて言うなら、子持ちだって事なんだろうけど、私だったら大丈夫じゃん」
そう自信満々に言う私に、旬は「それならいいんじゃない?」と軽く返事をする。旬は私の選ぶ相手にケチをつけたことが無い。それを不思議に思った事があって聞いた事があったのだけど、旬曰く、「お姉様の娘が女を選ぶ時に妥協するわけがない」である。私というより母親のリスペクトがあまりにも重すぎる件にどうかと思わないでもない。だが、あの母親の娘である事を誇りに思っている私は自信を持って言うのだ。あの女子は間違いないと。
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