第9話 返却
二週間ほど経ったある日の昼休み。私の席に花井がやってきた。
「これ。相馬から預かったから。」
小さな紙袋を机の上に置いた。
「あ、ああ。ありがとう。またお見舞い行ってきたんだ。」
そう言いながら中を覗き込んだ。案の定、本が一冊入っている。書店のカバーが妙に新しい感じがして、あれ?と思い表紙をめくると、それは間違いなく四作目だった。
「坂田によろしくって。そんじゃ。」
それだけ言って、早々に花井は教室を出て行った。特に何も言わないのだから、きっと経過は順調なのだろう。相馬の具合はどうなのだろうと気にはなっていたのだが、今この流れでわざわざ花井を呼び止めて聞きだすような勇気もなかった。私は席に座ったまま紙袋を自分の鞄にしまい、学年末試験対策を再開した。
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