第41話.女王の約束③

 鏡原かがみはらみゆりが案内した、廃工場の地下空間。


 そこに広がる明るくてオシャレな部屋とハイテク機器に、高梨涼太たかなしりょうたは目を丸くしていた。


「わぁ、すごい! お姉ちゃんの家!」


 正しくはみゆりの家ではなくケロッキーの家だが、何故かみゆりは自身が凄いと言われたようで、彼女の中に嬉しい感情が湧いて出た。


「じゃ、メタアースの世界に行こっか?」


「うん!」


 みゆりは笑顔の涼太にヘッドギアを手渡した。


「これ被ってみて。アカウントはわたしの使うから」


 彼女に促され、涼太はヘッドギアを頭に装着する。


 その間にみゆりはケロッキーのパソコンを操作し、メタアースにログインした。


「うわ、すごい!」


 目の前に広がるメタアースの世界に涼太は興奮しているようだ。


「自由に歩き回っていいよ」


 みゆりは涼太に伝える。


 涼太は嬉しそうにメタアースの世界をうろつき始めた。


「お姉ちゃん、あれ、なに? 人がいっぱい集まってる」


 涼太が見ているのは白い教会のような建物。


「ああ、あれね、なんかメタアースで唯一の宗教だって。詳しいことは知らないけど」


「あっ、あっちも人がいっぱい集まってる!」


 涼太はそちらへと向かう。


 人集りの前にいたのは、黒いチューリップハットを被った、全身黒づくめの女性のアバター。


「あの人知ってる! たしかちなふきんとかいうんだよ!」


 涼太が得意げに叫んだ。


「あー、ライバーでしょ? わたしも名前聞いたことある」


 その人集りは彼女のトークで何やら盛り上がっている様子だった。


「すごい、お金が飛んでるよ!」


 涼太が言った。


 コインがちなふきんに向けて舞っている。


 文字通りの投げ銭だった。


「あれはケロコインって言うんだよ」


「ケロコイン?」


「そう。この世界で使われてるお金だね」


「あれで買い物とかするの?」


「うん、まあね。あっ、そうだ、このケロコインってさ、ゲームみたいにモンスターと戦って稼げるんだよ。街の外にある森へ行ってみて? マジ楽しいから」


 みゆりは涼太に街の外にある森へ行ってみるように提案した。

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