第39話.欠陥がある世界
サバト人生相談所の室内。
「すごい粘着力ねー、これ。シュウ、一体何があったのよ?」
真樹が訊く。
「また天帝の
「えっ? また天帝が仕掛けてきてたの!?」
真樹が目を丸くする。
「そうだ……。お前達が襲われたのも天帝達が仕掛けた罠だった」
「やっぱり! なんかおかしい連中だと思ったのよ!」
事務所のテレビには、真樹が働いていたカフェ襲撃事件の犯人が爆死したニュースが流れている。
『人質に取られた被害者は全員無事だった模様です。なお我々の取材によりますと、襲撃した男達の一人は、寿司職人、
「へぇ、あの犯人、寿司職人だったのね」
ニュースを観て真樹が言う。
「どうやったかは知らないが、おそらく護法者に唆され、お前と
「それにしても、シュウ以外誰も助けに来てくれなかったのよ。店長が警察に連絡したはずなのに。全く社会の治安はどうなってるのかしら?」
真樹が頬を膨らませた。
その刹那、贄村の目がわずかに見開く。
「やはり、この世界は何か欠陥がある……」
「えっ?」
「お前、今まで警察という存在を見たことがあるか……?」
「もちろん。見たことが……、あれ? そう言われればお巡りさん、見た記憶がないわね? 偶然出会ってないだけかしら?」
真樹が首を傾げる。
「いや、私も存在は知っているが見たことがない……。この度のカフェ襲撃事件でも、以前の明導大学の終末騒動でも、あれだけの騒ぎにもかかわらず、警察は現れなかった……」
「そう言われれば……なんで?」
「思い込まされているのだ。我々、全員が何者かによって存在しないものを存在するかのように……」
「えっ!? どういうこと?」
蜘蛛の糸を剥がしていた真樹の手が止まる。
「黙示録、
「……なんだかややこしいけど、みんながみんなそれの存在を信じているなら、それはあることになるってことね。じゃあ、そのみんなに信じ込ませてるのって、やっぱり……」
「おそらく天帝……」
贄村は呟くように言うと、鋭い目つきで自身の左腕に巻き付いた蜘蛛の糸を見つめていた。
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