第33話.糸を引く者との戦い②

 贄村囚にえむらしゅうは、天帝の護法者ごほうしゃ雲手魅華くもでみかによって6次元空間へと転移させられた。


 贄村を見て高笑いをする魅華。彼女の足元から、白い煙が立ち上る。


 徐々に煙の量が増え、魅華の姿を覆い隠してしまった。


 贄村は身構えた。


 やがて煙が晴れると、そこには妖艶な美女の姿はなく、代わりに現れたのはおぞましい姿をした怪物だった。


 その怪物とは巨大な蜘蛛。


 右半身がタランチュラ、左半身がジョロウグモのような、左右非対称の蜘蛛の怪物。


 そしてその怪物の上に乗っているのは、右側は皮膚に覆われ、左側は筋肉が剥き出しの人体模型のようなもの。


 その人体模型はどうやら女性らしい。白のローブデコルテを着ている。


 そのドレスは、ところどころ血のようなもので赤く染まっていた。


「我は天帝の護法者の一人『天陰ひしく世界を統制する者』。思い上がった悪魔よ、天帝の御意思に背いたことを悔いるがいい」


 人体模型は表情を動かさず、贄村に話す。


「フッ、蜘蛛だけに裏で糸を引いていたわけか。それにしても何度も懲りずに人間同士の対立を仕掛けてくるとは、天帝も学習能力が無いようだな。新世界は……、我々が創る」


 贄村は怪物にそう言うと、雄叫びを上げた。


 贄村の姿も雲手魅華同様、怪物に変化する。


 それは右半身は赤い目をした黒山羊、そして左半身は目がぎらついた鹿に似た、左右非対称の不気味な怪物。


 姿を変えた贄村は、鋭い爪を立て人体模型の怪物へと飛びかかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る