第28話.カフェ内の攻防③

 緑門莉沙りょくもんりさは転んでいる同僚のメイドに危害が及ばないよう庇った。


 莉沙に腕を蹴られた男は、頭に血が上ったようだ。


 怒号を発して、手にした金属バットを二人に向けて振り上げた。


 奇能きのうを使えばこの男を粛清できるであろうが、これだけ人の目のある中で発動すれば、奇能の存在が人々に知られ、余計にパニックを起こしてしまうかもしれない。


 なんとか自分が盾にと莉沙が思った瞬間、


「おりゃ! 延髄斬り!!」


 夢城真樹ゆめしろまきの雄叫びが聞こえ、彼女が男の後頭部に蹴りを叩き込んだ。


 男は金属バットを落とした。


 彼は前方に倒れそうなのを踏ん張り、「痛っ!!」と声を上げ片膝をついてしゃがむと、後頭部に手を当てた。


「からの、シャイニングウィザード!!」


 続け様に真樹がミニスカートをはためかせ、片膝立ちの男の大腿を踏み台にして、顔面に膝蹴りを叩き込んだ。


 男は後方へ大の字に倒れた。


 真樹は手で膝の辺りを払う。


「へへん、こんなものよ」


 真樹は勝ち誇った顔で言った。


「まきちゃん、すごいね。助かったよ、ありがとう」


 莉沙は真樹の強さに驚きながらも、礼を言った。


「さ、逃げて」


 莉沙は転んだメイドを起こす。


 メイドが頷き立ち上がった時、


「お前達も動くな!」


 男の声が店内に響いた。


 莉沙が声の方へ目を向けると、男達が逃げ遅れた三人のメイドを座らせ、肩に金属バットを当てて人質に取っていた。


 ◇ ◇ ◇


「こちら現場から中継です。カフェ『冒険者ギルド』に金属バットを持った男達が立て篭もり、従業員を人質にとっている模様で、お店の周囲は騒然とし、通行人も固唾を飲んで成り行きを見守っている状況です。男達の主張は、コーヒーの販売や飲む行為は差別であるというものであり……」


 サバト人生相談所の贄村囚にえむらしゅうはテレビのニュースを視聴していた。


 アナウンサーが事件現場の状況を説明している。


(あのカフェは、たしか真樹と莉沙が働いているカフェだったな……)


 そのことを確認すると、贄村はテレビの電源を消した。


 徐に椅子から腰を上げると、カフェへ向かう為にドアを開け、相談所を後にした。

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