第34話.変貌の舞
学校での空き時間、
結局、
莉沙は舞の真意がわからず、自分の気持ちが晴れないので、直接本人に問い質そうと思ったのだ。
(舞はたしか社会福祉学部……)
舞がいそうな場所をあちこち巡る。
ようやく見つけたのは、放課後、演劇部の方へ向かう舞の姿だった。
「舞!」
後ろ姿に呼びかける。
舞はゆっくりと振り向いた。
莉沙は舞の元へと駆け寄る。
「ちょっと、話があるんだけど」
さんざん探し回ったイライラから、莉沙はついきつめの口調で言ってしまった。
だが、舞の表情に変化はなかった。
無表情だ。
「あのSNSのメッセージなんだけど、返事まだ来てないんだけど?」
「ああ、あれですか。もう別に気にしなくていいですよ」
舞は感情の篭っていない声のトーンで答える。
「よくない。もしかしてさ、あのニュース見て、わたしが奇能使ったと思ってる?」
莉沙は訊いた。
「行方不明になった人達が最後に目撃された公園は、いつも莉沙さんがパルクールの練習をしてる公園。そこで他に奇能使える人います?」
「奇能使う人なんてわたし以外にもいるじゃない。まさか公園ってだけでわたしを疑ってる?」
「じゃあ、ほかに誰が粛清したんです?」
「それは知らないけど。いや、もしかしたら粛清されたんじゃなくて、単に行方不明なだけかも知れないよ」
舞は冷めた目で莉沙を見ている。
「……もしかして、信じてない?」
莉沙も睨むように舞を見つめた。
すると一転、舞の顔が凄くにこやかな笑みへと変化した。
「信じてますよ、莉沙さん。約束しましたもんね、もう奇能は使わないって。わたしが既読スルーしたばかりに変に気を使わせてしまって、本当にごめんなさい。莉沙さんとはこれからも愛の溢れる社会にしていく仲間でいてほしいです」
「え、あっ、うん……」
雰囲気が豹変した舞に莉沙は戸惑う。
「わたし、純真さんと小咲芽ちゃんと三人でワォチューバーになる話を進めてるんです」
「えっ……?」
「それで世の中にわたし達の主張を伝えて、共感してくれる人を増やそうと思うんです。そうすればいつか、わたし達の理想の国が創れそうな気がするんです」
「国をつくる……?」
莉沙は怪訝な面持ちで言った。
「でも、現実に国を創るのは無理ですから、ネットの世界で理想の国を創るんですよ。無限の多様性を認め、無限の愛を公平に配り、みんなが相手を否定せず尊重し合って、誰もが自分らしく生きる社会。そこには醜い争いなんて一切起こりません。それこそわたしが望む愛の国。そんな国を創りたいんです」
舞は両手を組み、煌めくような瞳で理想を語る。
「えっ、ちょっと待って。じゃあ贄村さんや真樹ちゃんの新世界への協力は?」
莉沙は訊いた。
「新世界なんて無かったじゃないですか」
「えっ、まあ、そうだけど……」
「いずれ莉沙さんにも、国づくりに協力してもらいますので。それじゃまた」
そう言うと舞は不敵に笑い、莉沙に背を向けて去っていった。
舞は目指すべき自分の目標を見つけたようだ。
以前の気弱な性格から雰囲気が変わってしまった。
だが、彼女は良いことを言っているはずなのに、莉沙の心には何か
その何かは上手く表現できない。
もやもやした感情に戸惑っていると、莉沙のスマホが鳴った。
誰かからSNSのメッセージが届いたようだ。
見てみると、送り主は
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