第63話.駐車場の密会
ほんの僅かに陽の光が差し込む暗い駐車場にアリアが足を踏み入れると、柱の陰から男三人、そして
「あっ、アリア、どうだった?」
菊美が声をかける。
「二人ともうまく乗ってきたわよ。っていうか、これアンタの役目でしょ。なんでわたしの手を煩わせるのよ」
アリアは不機嫌を露わにして答えた。
「ごめんなさい。でもあの二人、あたしのこと探ってる可能性があるから……。グラサンの方は探偵で、あたしのことつけてたし、女の子の方はなんか蛇みたいな奇能であたしを見張ってるっぽかったし……」
菊美が困った表情を見せた。
「アリアさん、その……、俺達の報酬っすけど……」
一緒にいる三人の男達の一人が、アリアに恐る恐る申し出た。
アリアは無言で、バッグから金の入った封筒を取り出して、男達に差し出す。
「あざっす」
男達は嬉しそうに受け取った。
「これで関係は終わり。さっさと行って」
アリアは顎で指図する。
男達は何も言わずに小さく頭を下げると、三人揃って駐車場から出て行った。
「なに、あの演技が下手な連中。グラサンにビビって、あっさりと立ち去っちゃったわよ。これが芝居だって感付かれたらどうすんのよ。もっとまともな奴いなかったの?」
アリアは溜まった不満を菊美にぶつける。
菊美は黙って俯いた。
「まったく。終末を起こすには、神と悪魔の先導者同士がぶつかるときに発生する莫大なエネルギーが必要なわけ。これが失敗したら天帝は新世界を創世できないんだから。あなたも神と悪魔なみに無能だと、一緒に粛清されるわよ」
アリアは腕を組んで菊美を叱咤する。
「……それは、嫌」
「それなら終末までにきちんとあなたの役目を果たすことね」
アリアがそう言うと、菊美は真剣な眼差しで頷いた。
◇
……暗い駐車場の隅。
そこに親指ぐらいの大きさの、神父のような聖職者の姿をした陶器人形が立っていた。
そのことには、流石に鳳谷アリアも皿井菊美も気づいてはいない。
やがて、その人形はまるで意思を持つ虫のように、そっと音を立てず宙に浮くと、二人に気づかれないまま駐車場の外へと出ていった。
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