第2章

帰り道。

第26話



水族館の帰り道。


渉と一緒に駅に向かう。



「渉の班はどこ見て回ったの?」


「あー、ペンギンのところとか」


「私たちと一緒じゃん!」


「そうなんだ」



あ、でも私は途中で抜けたんだった。



「桃々がね、ペンギン激写しててさー」


「うん」


「渉は写真とか撮ってないの?」


「撮ってない」


「そっか」



渉、水族館で歩き回って疲れているのかな。


いつもだったらくだらない話で盛り上がるのに、会話が切れてしまう。



「渉、疲れてる?」


「え?」


「だって、いつもより口数少ないから」


「あー」



ほら、いつもよりぼーっとしてるっていうか。


いつもの渉っぽくない。



「てか新奈、ペンギンのところにいなくなかった?」



もしかして墓穴掘った…?



「あー、ね!途中までいたんだけど、はぐれちゃって」


「ふーん。で、あいつと2人でいたってこと?」


「…え?」


「見ちゃったんだよね、俺。新奈とあいつが一緒にいるところ」



…それって多分伊吹くんのこと、言ってるよね。



「そーそー皆藤くんね!そうなの、一緒にはぐれちゃって」


「ふーん」



なんか、渉怒ってる…?


ってか、どこの現場を見たんだろう…。



「新奈ってさ」


「な、なに?」


「やっぱ何でもない」



渉は俯きながらそう言った。



「え、なに?気になるじゃん」


「…新奈って、俺に何か隠してない?」


「へ?別になにも隠してないと思うけど…」



もしかして伊吹くんのこと、なにか勘繰ってる?


でもわざわざ渉に言うことでもない気が…。


カレカノごっごしてまーすって言う?


それこそ変な目で見られそう…。



そのまま私と渉は会話を交わすことなく、駅に着いた。


何なんだろうこの空気。


でも私からなに言っても、会話は続かなさそうだし。


伊吹くんのこと聞かれても気まずいし…。



電車に乗り込むと、座る席は空いてなくて、渉と2人で手すりにつかまる。


その間も会話がなくて、ずっと気まずい。



だから、そのまま家に帰ると思ったのに。


近所の公園の前で、「ちょっと寄ってこ」って誘われた。



え…この空気で…?


って思った。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る