第27話



自販機で飲み物を買って、渉と一緒にベンチに座った。


この公園に来るの、いつぶりだっけ。


小さい時はよく遊んでいたのに、高校に入ってからはすっかり来なくなったな。



「この公園でよく一緒に遊んだよね」


「そうだなー」


「覚えてる?渉、ブランコ全然乗れなくてさ」


「あー、あったな」


「怖くないからって、私が背中押すと本気で怒って」


「あの時は、まじでやめてくれって思ったんだよ」



今の渉はその時と同じ顔をしている。



「…渉、なんかあった?」



私の問いかけに、渉は気まずそうに顔を下げる。



「私、なんかしちゃったかな?だったらごめん、謝る!ごめん!」


「違う。新奈はなにも悪くないよ」


「じゃあなんで?」



なんで怒ってるの…?


渉はジュースの缶をベンチに置いたと思ったら、ブランコの方へ行って、ブランコに乗った。


どんどん大きく漕ぎ出していく渉。



「だいぶ高くまで漕げるようになったね!」


「まあ、もう高校生だし?」



私も渉の隣のブランコに移動する。


私がブランコをちょっとだけ漕いだタイミングで、渉は砂の音を立てて止まった。



「そのブレスレット、もしかして皆藤ってやつとお揃い?」


「へ…?」



渉の発言にびっくりして、慌てて腕を見てみる。


だけどブレスレットは隠れていた。



「あ、電車に乗ってる時、見えたから」


「あー…」



渉は、私と伊吹くんがお土産コーナーにいた時のことを見たのかな。



「やっぱお揃いなんだ」


「違うよ!?これは、何て言うかたまたまで…」


「誤魔化さなくていいから。なんでお揃いのものとか身に付けてるのかなーって、気になって」



渉が不機嫌だった原因ってこれ…?


だったらなんて言うのが正解なんだろう。


なんか渉には、なにを言っても見透かされる気がするし…。


正直に言った方がいいのかな。


別に内緒にしてなんて言われてないし。


好きにならないでって言われただけで。


渉、男子だし。


渉に話したところで、面倒なことにはなんないよね…?



「…話すと長くなるけどいい?」


「うん。聞くよ」



それから私は、私は今までの伊吹くんとの経緯を、渉に打ち明けた。


めちゃくちゃな話だけど、渉は静かに聞いてくれていた。



「なるほどね」


「…分かってくれた?」


「いや、全然分かんないけど」


「…だよね」



私も今だに分からないことだらけだもん。


男子なら伊吹くんのしてること、少しは分かるのかなーって思ったけど、やっぱ特殊だよね。



「でも、あいつといる時の新奈が楽しそうなことは分かるよ」


「へ?」


「だから焦ったっつーか…?」



焦る?


渉が?



「なんで?」


「え、だって…」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る