快晴…夏の海端2

 目が覚めた。

「だめか」

 起き上がる。とりあえず着ていた服を脱いだ。冷蔵庫まで歩き、水を取る。飲みながら、窓を開ける。

 海。空。にぎわっている砂浜。

「ふう」

 窓際に腰かけた。

 去年も、同じようにしていた。

 そして、気付いたらどこかへ行っていた。そこで、誰かに会っていたような気がする。

 思い出せなかった。そのとき、自分が何をしていたのか。

「夢か」

 夢。

 ふだん夢を見ることはないし、それは現実でも就寝中でも変わらない。普通の生活、普通の睡眠。ただ夢がないだけ。

 満足していた。こうやって夏休みも貰えている。

 たまたま静養に来たこの旅館で、夢を見た。人生初の、夢を。

「しかしな、内容も思い出せないのなら難しいと思うよ」

 友人。

 今年は道路工事を仕事にしている友人と一緒に来ている。ちなみに、彼の家族は下の砂浜で遊んでいるらしい。

「そうだよね」

「服を着ろ服を。外から見える」

「いいよ別に」

 胸はない。ときどき思い立ったようにホルモンを注射しているが、一向に大きくなる気配は無い。

 太陽の光が、直に当たる。身体。じりっとする。

 夢の中で、自分は女なのだろうか。それとも男か。

「いまおまえ、夢の中で自分が男女どっちだったか考えてたでしょ」

「なんでわかった」

「無い胸を見ながら考え込んでたし」

 この性別不詳の友人は、道路工事を仕事にしているだけあって物怖じがない。一本筋が通って真っ直ぐ。

 そして自分は、男か女か分からない中途半端。

「どっちでもいいじゃねえか。恋人の性別に合わせればいいんだよ、そんなもんは」

 友人は、必ずこう言う。他の友人はそれぞれ好みがあるらしいが、この友人はどちらでもいいらしい。

 いちど、彼にも男女どちらがいいか訊いたことがある。

「追越車線と走行車線みたいなもんだ。どっちでも変わんねえよ」

 という、よくわからない答えが返ってきた。丁字路じゃないのか。

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