快晴

快晴…夏の海端

 晴れている。脚の方からじわじわと熱。

 目の前。海。砂浜。にぎわっていた。

 風。わずかにある。心地よい。揺れるパレオ。抑えるほどではない。地面に目をやった。砂。ちょっと輝いている。

 海。空。どちらも青。

「きれい」

 この先に、別の世界があった。

 去年の夏。同じような晴れの日。私はここで、別の世界に入った。どう入ったかは分からない。気付いたときには立っていた。同じような砂、海、空。人はいない。西日に呼応して空も赤。海も赤。砂は同じ。

 そして、人かどうかあやしいのが一人だけ。見た目は人と同じ。同年代の人間に見えた。しかし、最初は何も言わずこちらを見ているだけ。

 しばらくぼうっと見つめ合って、相手が喋るという方法を知らないことに気付いた。こちらから初めましてと声を掛けたら、にこっとわらってはじめましてと返してくれた。

 それから、ぎこちなく会話が始まった。

 あの瞬間を、忘れることができない。気付いたときは、海辺で寝そべっていた。

 もう一度。もう一度会いたい。

 この一年間のことや、こちらで起こった出来事をまた話したい。

「無理かな」

 去年と同じように立っている。しかし、世界はこのまま。きれいな海と、綺麗な空が見えるだけ。

「ちょっと残念」

 呟いて気付いたが、ちょっとではなかった。

「けっこう残念」

「なにが?」

 後ろにいる友だちに訊かれた。

「ううん、なんでもない」

「それよりもさ、まずパラソル立てようぜ。これだと暑すぎる」

「禍坏あんた赤くなるもんね」

「焼きそば買ってくるぅ」

「たこ焼きもお願い」

「はあい」

 わらわらと動き始めた友だちをちょっと眺め、また、海と空の方へ視線を戻した。

 今年は一人じゃない。みんなで移動できたら楽しいだろうか。

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