第9話 誓いと口付けと黙秘

 「ぐはぁっ、負けたにゃ~、う~~~、仕方にゃいにゃっ、お仕事するにゃ」


 「じゃぁ~私よね。その前に一服」しゅっぱ。とんとん。しゃきーん。

 ぴょこん!「駄目っすっ、吸い過ぎっすっ、体に悪いっす、たばこもずっぽーも没収すっ」


 「あ~、私のもくぅ~、かぴたん、マールがじめるぅ~」

 なでなで「にゃぁも、たばこは良くないと思うにゃ、かぴ汁みたいに洗浄出来ないにゃ」

 ぴょこ。「仕方ないっすねぇ~、オヴァから貰ったあめちゃんで我慢がまんするっす」



 「マール、『オヴァ』ってなんだ」

 「傍若無人ぼうじゃくぶじん唯我独尊ゆいがどくそん比類ひるい無き戦士と聞いちょるよ」


 ぴょこん!「その通りっすっ、大阪のおばちゃんっすっ」

 「なにっ、都市伝説じゃ、…なかったのかぁ~」



 べり、じゃかじゃか。「マール、べちゃべちゃだよ。うおっ、梅味」

 ぴょこん!「御免なさいっす、ポケットにずっと入ってたっす」


 「にゃぁもにゃぁも」ぴょこ。「もうぅ~、仕方ないっすねぇ~」

 がさがさ。「好きなのを選ぶっす」「やっふぉー!、これにゃっ」

 じゃかじゃか。「にゃっ、みかん味にゃ、マールもすっかりおばちゃんにゃっ」


 ぴょこん!「まだ染まってないっすっ」「あ、あの、…天使様、お父様達を」

 ぴょこん!「ペースに飲まれたっす」「天使様、お言葉が」

 ぴょこん!「気にしないで欲しいっす」



 「マール、今もあめちゃん、持ってるのか」

 「あ~、一つ欲しかぁ~」


 ぴょこ。「仕方ないっすねぇ~」がさがさ。「どれでもいいっすよ」

 「私これぇ~」「あっ、じゃ俺これね」ぴょこ。「私はこれにするっす」

 じゃかじゃかじゃか。「俺ぶどう」「私パイン?」ぴょこ。「桃っす」



 「神エヌオカエヌオカ様も鬼天竺鼠おにてんじくねずみ(カピバラ)様も、この子を救いに来たっすよね」

 「そうなんだけど、ねっ、かぴたん」

 むにゅむにゅむにゅぽん。「マール、三人の命をここへとどめるとなると」



 「獣人が、女の子になった」

 「本当に色んなお姿をお持ちじゃねぇ~」

 ぴょこ。「そもそもお姿があるのか、分からないっす」



 「じゃぁ、私から、うぅん、クララ・アリシア・アンネマリー・アデラ・ダグナ・フランツェスカ・ハルフリーダ・ラインズ・ケイテ・リーゼロッテ・ヨランカ・ピュージンゲン、貴方あなたの願いは、ヴォルフガン、ナイトハルト、エルンスト、この三人の男達の命をこの世にとどめる事で間違いありませんね」


 「はいっ」「そう、…ですか。父、ヴォルフガンだけではないのですね」

 「ナイトハルトもエルンストも、お父様を助ける為に傷を負いました。犠牲になって良い訳ありません」


 「…誰か一人だけなら、私の力で救ってあげましょう」

 「神エヌオカエヌオカ様、三人では駄目なのですか」


 「それは許されません」「では」

 「三人を救いたいと願うのであれば、…その代償に呪いを受けねばなりません」

 「受けますっ」「…まだどんな呪いかも話していませんよ」


 「わたくしに出来る事なら何でもします。どの様な事でも引き受けます。わたくしはそう願いました」

 「はぁ~、かなえてやろう、…お前の望み」


 「有難う御座います。神エヌオカエヌオカ様」

 「クララ、私の前にひざまずきなさい」「はい」



 「おっ、クララの前の小っちゃい子が左足を上げて、前に突き出したぞ」

 「しぃ~っ」ぴょこ。「今から神様に誓うっす」



 「我が呪いをその身に受けるなら、口付けを」「はい」ちゅっ。

 ぷる。「我が呪いをその身に受けるなら、口付けを」「はい」ちゅっ。


 ぷるぷる「我が呪いをその身に受けるなら、口付けを」「あ、あのぉ~」

 「さっ、三人分だから、三人分、く、口付けを」「はっ、はい」ちゅっ。



 「おっ、おいぷるぷるふるえてるぞっ、それに何であんな表情してるんだ」

 「ねぇ~マール、あの口付けって、本当に三回も必要じゃったと、ねぇ~」

 ぴょこんぴょこん!「もっ、黙秘もくひするっすっ」

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