第7話 混沌

 「神エヌオカエヌオカ様、わたくしの願いをお聞き届け頂けるのですか」

 【…我が意に応えるなら、かなえてやろう、…お前の望み】

 ♪【ちゃか、ちゃんりんちゃんりん、どんどぉーん】



 「何だこれ、出囃子でばやし、えっ、落語らくご

 「きっ、気にせんでぇ」

 ぴょこん。「これから始まる事に、一々いちいち突っ込み入れてたら負けっす」

 「おっ、おぉ~」



 「・・・随分とにぎやかな神様ですのね。…あの本当に助けて頂けるのですか」

 【うぅん、…努々ゆめゆめうたがう事かれ、さすれば、かなえてやろう、…お前の望み】

 ♪【ちゃんちゃんちゃんちゃ、ちゃらんららんらん、らん】



 「又、出囃子でばやし、今度は漫才まんざい

 「あき、突っ込みを入れちゃいけん、術中じゅっちゅうにはまってしまうけん」

 ぴょこん!「あきっ、駄目っすっ、相手の思うつぼっす」

 「わ、わかった」



 【うがぁーーーーーー、せっかく雰囲気作ってたのに】ぼあぼあぽん。

 「あっ、御姿をお示し下さるのですか」


 「あれ、あの音、私じゃないからね」

 「どの様に形容すれば良いのか。…この世の者とは到底とうてい思えません」


 「私、女神だから」

 「然様さようで御座いますか」



 「誰っ、いや、何っ、どう言えばいいのか」

 「あきっ、考えちゃいけん」


 ぴょこ。「あきっ、無心になるっす」

 「うん、名状し難いこの何かの事は考えない事にする」



 「あの、神エヌオカエヌオカ様、わたくしの願いは聞き届けて下さるのですか」

 「ちょっと待ってくれる。こんな事をするのは、一人、否っ、一匹だけだ」


 「聞き届けて頂けないのですか」

 「だからちょっと待って、鼠が一匹忍び込んでる」

 じぃ~~~。「先週駆除くじょしたばかりで御座います。何か」


 「小っちゃいよね」「これから大きく成りますのっ」

 「何処どこか近くにひそんでいるはず


 「かぴかぴかぴ」「そこだぁーーー」ぷち。

 「あぎゃーーー」ぐはぁっ。「しまったっ」ぷしゅーーー。「ぎゃーーー」



 「おーーー、クララ良くけたな」

 「恐ろしくて、咄嗟とっさにシーツば掴んだと」

 ぴょこ。「あれはとても恐ろしい液体っす」



 むにゅむにゅむにゅぽん。「神エヌオカエヌオカ様が、…何の生き物ですの、ねずみ



 「洋溝鼠ようどぶねずみ(ヌートリア)、洋溝鼠ようどぶねずみ(ヌートリア)になったっ」

 「言うたらいけんっ」

 ぴょこん!「違うっすっ、鬼天竺鼠おにてんじくねずみ(カピバラ)っす」


 「何でマールが怒るんだよ」

 ぴょこん!「あの液体を出したのは、私直属の神様っすから」


 「でもつぶされちゃったんじゃないのか。ぷしゅーーーってなってたし、あの液体何なんだ」

 「あれに触れると、カピバラになるとよ」

 ぴょこ。「そうっす、そうやって仲間を増やすっす」


 「いや、死んでるじゃん」

 ぴょこんぴょこん!「大丈夫っす、鬼天竺鼠おにてんじくねずみ(カピバラ)様は残機制で、無限の残機があるっす、見てると良いっす、直ぐに復活するっす」



 むにゅむにゅむにゅぽん。「おっはモーニー!」

 「ねっ、ねずみねずみが増えましたわ、あんなに大きな」



 「あっ、二匹になった」「増えてしもうたぁ~」ぴょこ。「増えるっすよぉ~」



 「かぴかぴかぴ、ふしぃーーー」「かぴかぴかぴ、ふしぃーーー」



 「なぁ~、歯をむき出しにして、かぴかぴ歯を鳴らして、威嚇いかくし合ってるんじゃないのか」

 「大丈夫じゃけん」ぴょこ。「見てれば分かるっす」


 「あぁ~、目を細めてお互いに頬っぺたをすりすりし始めた」

 「大丈夫じゃった」ぴょこ。「でも先に進めないっすよぉ~」



 「ぷぽよ ろれ ふぺ」「ぷぽよ ろれ ふぺ」



 「何か言ってるぞ」

 「ねずみの言葉はわからんけん」

 ぴょこ。「あれはスライム語っす、基本テキストを送り合ってる見たいっす」


 「はぁ~ぁ、あれねずみだよな」

 「スライムには見えんとぉ~」

 ぴょこん!「私達の常識は通用しないっす」


 「何しに来たんだよ」「マール、何のお話しばしよらすと」

 「マール、わかるのか」

 ぴょこ。「わかるっすよ。スライムですから元々複雑な言葉はないっす」



 「ぽよぷぽよ ぽよぷぽよぽよ ぷぷぽよ ぷぷぽよ」

 ぴょこ。「きゅう」

 「ぽよぷぽよ ぷぽよ ぷぽよぽよぷ ぷぷ ぽよ ぷぽよ ぽよぷ」

 ぴょこん。「かぴたん」

 「ぷぷ ぽよぷぽよぽよ ぷぽよ ぽよぷ」

 ぴょこん!「いやん」



 「何なんだよっ、自由過ぎだろうっ、不毛で混沌としていて、訳分かんねっ、クララ、この時良く耐えれたなっ」

 「だ、だって、怖かもん、あげな大きか前歯で噛まれたら痛かよぉ~、血が出るとよぉ~」

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