第4話 貴族の結婚

 ぴょこん!「仲良くすれば良いのに締め出す方が悪いっす」

 「それで商売が上手く行ったのか」

 「うん、大儲け、ピュージンゲン商会を造って、手広くやっとったと」


 「お母さんは」

 「順番に話すけん」

 ぴょこん!「出逢いが有ったすよっ」


 「ママも貴族の二女で、おじいちゃん、おばあちゃんはママの嫁ぎ先を探しとたっとよ」

 ぴょこ。「名家だったんっすけど、お金に困ってったっす」


 「お金の為に結婚させるのかよ」

 ぴょこ。「政略結婚は良くある事っす」


 「で、成功していた、父さんにと一緒になったのか」

 「う~~~、お父さんって、まだ結婚しとらんけん」何で照れてんだよ。


 ぴょこ。「クララ、他に呼びようがないっすよ」

 ぱっち。ぴょこん!「痛いっすっ」「なぁ~んでいけず言うとぉ」

 ぴょこん!「本当の事っす」


 「うぅ~、…ママはその時15歳で、全部断とったとよぉ」

 「15、今の俺の少し上じゃん」ぴょこ。「昔はめずらしくないっす」


 「お父さんは」

 「ふふ~ん、パパはその時29だったて聞いちょる。仕事ばっかりしよらしたと」


 「14も差があるじゃん」

 ぴょこ。「昔はめずらしくないっすよ、それにパパさんお金持ちだったから、貴族の二女以降の嫁ぎ先として、にわかに注目が集まってたっす」


 「うーーーん、どこに出逢いがあるんだよマール」

 「ふぅーーーーーー、何で私に聞かんとっ」


 「どこに出逢いがあるんだよクララ」

 「棒読みたいっ、それがね、ママ、お見合いの度に、抜け出しては逃げ廻っとたと」

 ぴょこん!「そして運命が訪れたっすっ」


 「ほうほう、運命ですか」「あき、リアクション薄かっ」

 ぴょこん!「その日も、お見合いをすっぽかして、従者じゅうしゃに追い掛けられてたっす」


 「お見合いぐらいしてあげれば良いに」「行ったら決まっちゃうとよ」

 「すっぽかされる方は傷つくだろう」ぴょこん!「私も嫌っすっ」


 「そんなにお顔がままならない人だったのか」

 ぴょこ。「うーーー、何方かと言うとイケメンの紳士っす」


 「マール、どうして知っとると」

 「私、天使っす、天界からお友達と一緒に見てたっす」


 「その人も貴族なんだろう、条件は悪くないじゃん」

 「それがね、御歳が60歳で、お嫁さんがいっぱいいとったらしかと」


 「それは確かに、…好きならともかく」

 「でね、町の中をヒラヒラの服を着て走って逃げよった所に、馬車に出くわして引かれそうになって転んだと」


 「ほぉーーー、それで」

 ぴょこんぴょこん!「馬車から慌てて男の人が降りて来てその場にしゃがんだっす」

 「『お嬢さんっ、大丈夫ですかっ』って抱き起したとぉーーー、きゃーーーっ」


 ぴょこん!「抱き起されたママさんの潤んだ瞳と、パパさんの優しい瞳が見つめ合ったっす」

 「ママはその時、一目で好きになったとよぉ~」


 ぴょこん!「パパさんも一目惚れだったっす」

 「私もそう聞いとる。ママの話だとその場で、『お嬢さん、私の妻になって下さいっ』、ママは一言。『はい』って言ったらしかとっ」どさっ。ばさばさばさ。

 ぴょこんぴょこん!「確かに言ってたっす」


  「クララ暴れるなよ。ほこりが舞うだろう」

 「私はまだ、聞いとらんとやけどぉ~」


 「うぅっ、うぅん。それが縁で結婚しのか」

 ぴょこ。「申し分ないっすからね。皆狙ってたっすから、大騒ぎだったっす」


 「私、まだ聞いとらんとやけどぉーーー」

 「そうかぁ~、愛があれば歳の差は関係ないんだな」

  「私、まだ聞いとらんっ」



 ぴょこ。「この結婚が更に商売を大きくしたっすよ」

 「えっ、何の関係があるんだよ」

 「おじいちゃん、おばあちゃんのおうちは、お金には困っていたけど、大貴族だったから、税金や色々な特権を発行出来たと」


 ぴょこ。「そうっす。ママさんのおうちは経済的な援助を受け、パパさんは、商売を広げる為の特権を手に出来たっすよ」

 「絵に描いた様な権力と金の結びつきだな」

 「違うもんっ」


 ぴょこん!「むしろ良かったっす。それまでは特定の商人や商会が独占していたものが解放されて、競争原理が働いてお金が動く様になったっす」

 「それで領地に仕事も増えたし、他の土地の物や人も動く様になったとよ」

 「じゃぁ、全て丸く収まってwin、winじゃん、泣くとこないよな」


 「そうなんじゃけど」

 ぴょこ。「その事を良く思わない人達がいたっす」

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