②「女の名は、横山由美」
台詞はキャラクターを生み、キャラクターは台詞を生む。
「ゴメンね。わたし、他に好きな人がいるの。本当にゴメンね。」
その言葉で女はまた告白を断った。
女にとって人生で106回目となる告白の返り討ちだった。
正確には106回目の女の子から受けた告白に対する返り討ちだった。
女は今回を含めて106回も女の子から告白され、その全てを断ってきた。
女は焦っていた。
何故なら女にはあと2回しか猶予がないからだ。
この女、名は
年の頃、10代後半。
恋愛経験、皆無。
当然、処女。
それはそうとして、何故この横山という女が焦っているかというと、この世界では処女が告白を断っていいのは人生通して108回までと決まっているからだ。
煩悩の数と云われる108…
この世界では、その煩悩の源とも云える女性、それも処女の女性に与えられた猶予は人生で108回までしかない。
例えそれが、同性による告白であっても仕掛けられた処女はそれを断った場合、容赦なくカウントされてしまう。
どんなにモテても全然モテなくても処女は他人から108回告白されるまでに恋人を作らなくてはならない。
何故こんなことが決まっているって?
こんなのはこういうものだからとしか説明が出来ない。
しかし、その決まりの上限まで達すると大変なことになる。
それは大変過ぎてとても文字には出来そうにない。
何はともあれ、横山は焦っていた。
年齢的にもそういう年頃だし、何よりも女なのに女の子にモテてモテて仕方がないため限界が迫っていた。
しかし、横山には希望があった。
それは運命と云えた。
それは奇跡と云えた。
それは当然と云えた。
横山には幼なじみがいた。
横山は子供の頃から幼なじみが好きだった。
そして、その幼なじみと横山は子供の頃から仲良しだった。
しかし、横山は幼なじみから告白はされなかった。
横山は本当に好きな男の子には素直になれない性格だった。
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