109回目に笑えたら 【企画参加作品】
貴音真
①「男の名は、木島裕太」
台詞は物語を生み、物語は台詞を生む。
「ごめんなさい。あなたのこと恋愛対象として見れません。本当にごめんなさい。」
その言葉で男は頭が真っ白になっていた。
男にとって人生で106回目の失恋を迎えていた。
正確には106回目の恋仲になる前の告白失敗を迎えていた。
男は焦っていた。
何故なら男にはあと2回しかチャンスがないからだ。
この男、名は
年の頃、10代後半。
恋愛経験、ゼロ。
無論、童貞。
それはさておき、何故この木島という男が焦っているかというと、この世界では童貞が女性に告白していいのは人生通して108回までと決まっているからだ。
煩悩の数と云われる108…
この世界では、その煩悩の塊とも云える童貞に与えられたチャンスは人生で108回までしかない。
例えそれが、悪ふざけによる告白であっても仕掛けた童貞はそれを断られた場合、容赦なくカウントされてしまう。
どんなにモテても全くモテなくても童貞の告白は108回まで。
108回目の失敗は絶対に許されない。
何故そんなことが決まっているって?
そんなのはそういうものだからとしか説明が出来ない。
しかし、その決まりの上限まで達するととてつもないことになる。
それは恐ろしすぎてとてもここには記述出来そうにない。
何はともあれ、木島は焦っていた。
年齢的にもそういう年頃だし、何よりも告白回数の限度が迫っている。
しかし、木島には希望があった。
それは隠し球と云えた。
それは反則と云えた。
それは禁じ手と云えた。
木島には幼なじみがいた。
木島はずっと前から幼なじみが好きだった。
そして、その幼なじみと恋仲になりたかった。
しかし、木島は幼なじみへ告白が出来なかった。
木島は本当に好きな女の子には告白が出来ない臆病者だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます