第44話 ライラの災難、でも自業自得

 「流石の大輔も流石にこれ以上食らったら死ぬかもな。でもな、もう少しでの自分のものにできる。貴様の為に手加減はせん。やれ電王!」

  

 電王とライラは僕との距離を縮めており、僕を甚振いたぶっているのが楽しいのかライラの満面の笑みが目視できる。

 腑が煮え繰り返る。どうしてもあの笑顔を壊してやりたい。


 「このクソ野郎! もう魔力だってないんだぞ!」


 電王は角に電撃を溜め、バチバチと音を轟かせる。


 「魔力が少ない状況で戦う事はよくあることだ。それに残り少ないその魔力で十分膜は張れる。薄く満遍なく張るイメージをしろ!」


 電王の角から電撃が発射される。


 「ぐあああああ! はあ...はあはあ。集中......」


 体がめっちゃ痺れる。先ほどとは違い単発でなく、電撃が持続的に放たれている。

 もう魔力と体力が底を尽きかけ今にも気を失ってしまいそうだし、先程みたいに大きく膜を張る余力は無い。

 再び目を閉じ、大きく深呼吸。

 ——電撃の痛みを感じないように、忘れるようにする。そして、内側の光に集中する。

 残り少ない光を歪に膨張させずに滑らかに薄く膨張させるようにコントロール——。

 体に膜を張るイメージ、いや、身につけるイメージをしよう。長袖を着る。長ズボンを履く。帽子を被る。靴下を履く様にと体に纏わせる。それも薄く。

 体に魔法の膜が薄く張る事に成功したのか電撃の痛みが感じない。本当に魔法が成功したのか確認するため恐る恐る目を開ける。

 確かに全身が電撃に襲われている。が、何も感じない。


 「出来た! 痛くないよ!」


 「やれば、出来るではないか大輔!」


 ライラは片方に口角を上げている。


 「おう、出来たからさそろそろ電撃止めてくれ、もう魔力が尽きそうだ」


 ライラの上がっていた口角が、スゥーと下がる。

 ライラから反応がない。聴こえていなかったのかもう一度言う。だが、電撃を止める気配は無い。


 「大輔は修行中に不慮の事故でお亡くなりになったとお嬢様に伝えておくから安心して消えろ!」


 「てめえええ! 何が安心して消えろだ。意味わからんわ!」


 本当にこのままではまずい。電撃を放つ元を断たなければ...。

 この膜が持つのは数秒だろう。魔力が尽きる前にあの電王を倒す。

 僕と電王の距離は約30メートル。

 人蹴りでいっきに詰めなければ逃げられるだろう。

 この距離をいっきに詰めるなんて流石の僕の身体能力だけでは無理だ。だから強化魔法を駆使するしかない。

 強化魔法はまだ教わっていないが、頼ってばかりではライラの言う通り成長が出来ない。シノを守れる強さを手に出来ない。

 防御に回している魔力を少しでもいいから強化にまわす。そんな細かな魔力コントールの自信がないがやるしかない。

 失敗したら終わりだ。

 強化に魔力を回したら硬化魔法はもって2秒だろう。

 昨日ゾンビの顎をぶん殴ぐり頭を粉砕させた魔法。光が纏われていた拳。あの魔法が強化魔法に違いない。

 手に宿した魔法の感覚を何となくだが覚えている。

 昨日の感覚では体に纏うのではなく、放出するイメージ。右足に魔力を放つイメージする。そして、魔力を少しでも節約するためにさらに体を纏う硬化魔法の膜を薄くする。


 「クレープの生地みたいに薄く薄く伸ばす様に。...足には魔力を溢れさせるように...」


 右足が薄っすらと光に包まれていく。

 光が迸る右足に力を込め、地面がえぐれるほど蹴る。背中にブースターが付いたかってぐらいの勢いで前進する。

 テニスの様に電王を打ち飛ばしてやろうと右手を横に伸ばす。


 「おりゃああああ!」


 電王との距離を縮めるが、あろうことか自身のスピードが早すぎたせいで腕を振るタイミングを逃してしまい、振りそびれたままの右腕は電王の頭を擦るだけだった。


 「くそ! タイミング逃した!」


 そのまま電王の横を通り過ぎ、腕は今になり前に振られる。


 「はあっ!?」


 刹那間抜けなライラの声が進行方向からした。

 このスピードでは足を止めろと脳が足に命令する刹那なの時間さへ無かった。

 前に振られた腕はライラの顔面に食い込んでいく。

 この破壊力に抵抗出来なかったライラは後ろに半回転して、地面に後頭部を強打する。


 「◎△$♪×¥●&%#?!」


 言葉にならない声を発するライラ。ライラへの打撃により促進力が失われ、たたらを踏みながらなんとか止まる。

 全身を纏う硬化魔法と右脚から放出される強化魔法は解除される。

 電王は電撃を止めライラに翼をばさばささせ様子を見にいく。

 僕も早足でライラの元へ行くとライラの顔面は無残なことになっていた。

 鼻は折れ、大量に顔と後頭部から出血している。

 映像化ではきっとモザイクがかかっているだろう。


 「とうとう死んだか?」


 不思議と焦りは無い。生存しているか確認するため耳を顔に近づけ、息をしている事を確かめる。


 「やはり息はある様だな。このままだと死んでしまいそうだけどね。まあ、僕はお前と違って人殺しにはなりたくないから仕方なくここは、大量出血なだけに出血大サービスで治してやるよ」


 「つまらんわ...」


 ほんの少しライラの唇が動く。そして、言い残す言葉はもう内容で死んだ様に気絶する。


 「お前はこの程度で死なないよな。残念なことに」


 落胆はしたものの死なれたらバツが悪いので、最後の魔力を振りしぼり回復魔法をかけ元の憎たらしい顔に再生させる。


 「回復魔法はお手の物だな。完璧に憎たらしい元の顔に戻してしまった」


 体は限界が来ていた様でふらつきながら城へ歩いていく。


 「体が今でもピリピリする気がする..」


 後ろの方でライラを心配する電王の鳴き声がするので上半身を捻り、肩越しに確認する。

 ライラが調子に乗り、気絶して、そのライラの周りを電王が飛び回る。昨日と全く同じ光景だった。

 ため息をしながら前に向き直り歩を進める。


 

 このままライラを放置した事で事件が起きてしまうとはこの時の僕は想像をしていなかった...。

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好きだよ。私に名前を付けてくれないか あたし也 @atasiya

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